【FP2級】団体生命保険〜総合福祉団体定期保険、団体定期保険、住宅ローン団信(生命保険商品❹)
今回は団体生命保険を解説します。出題頻度は3回に1回程度と高くはありませんが、受験生の差がつきやすいテーマです。
- 総合福祉団体定期保険と団体定期保険の違いを理解する
- ヒューマン・ヴァリュー特約を理解する
- 団体信用生命保険の特徴と特約を理解する
従業員向けの保険
一般的に生命保険は個人と保険会社の間で個別に契約を締結します。
これに対して今回学習する従業員向けの生命保険では、企業が保険会社と従業員の間に入って契約します。
このような保険を”団体生命保険”といいます。
保険会社にとっては契約手続の手間が省けるため、通常の保険と比較して保険料を割安に設定することができます。要するに団体割引です。
従業員向けの団体生命保険には、主に以下の2種類があります。
- 総合福祉団体定期保険(Aグループ保険)
- 団体定期保険(Bグループ保険)
順番に見ていきましょう。
総合福祉団体定期保険(Aグループ保険)
総合福祉団体定期保険の特徴
“総合福祉団体定期保険(Aグループ保険)”は、法人が従業員向けに提供する団体保険です。
原則として全ての役員・従業員を被保険者とし、保険料は全額法人が負担します。
1年更新の定期保険で、1年を超える期間を定めることはできません。
従業員の死亡退職金や弔慰金を準備するため、福利厚生の一環として法人が加入します。
あくまで不慮の事故などに備えるものであり、定年退職金の準備としては使えません。
被保険者が死亡・高度障害になった場合は、遺族や本人に保険金が支払われます。
保険金は死亡理由が業務上・業務外を問わずに支払われます。
ヒューマン・ヴァリュー特約がある場合、保険金受取人は法人になります。詳しくは後ほど解説します。
加入の際には全役員・従業員からの同意が必要です。
ただし、一人一人から同意を取るのは大変なので、実務上は全役員・従業員に告知し、不同意の申し出があった者のみを除外するケースが多いです。
このほか、重要ポイントとして以下の点を覚えておきましょう。
損金算入ってなんだ?
経費にできると言うことです。経費が増えれば利益が減って、法人としては税金の支払いが少なく済むわけです。
ヒューマン・ヴァリュー特約と災害総合保障特約
総合福祉団体定期保険の特約として、以下の2つを押さえておきましょう。
- ヒューマン・ヴァリュー特約:保険金受取人を法人にする特約
- 災害総合保障特約:従業員が障害を負った際の治療費や入院費を保障する特約
特に頻出なのは、“ヒューマン・ヴァリュー特約”です。
ヒューマンヴァリュー特約とは、従業員の死亡に伴う経済的損失を準備するために、保険金の受取人を法人に変更する特約です。
ヒューマンヴァリュー特約を付けるには、被保険者の同意が必要です。
従業員が死亡すると、その従業員が稼ぐはずだった収益がなくなることに加え、新しい従業員を採用するためのコストがかかります。これをカバーするのがヒューマン・ヴァリュー特約です。
次に“災害総合保障特約”とは、死亡や高度障害だけでなく、病気やケガの治療費や入院費を保障する特約です。
保険金の受取人は、法人と従業員のいずれにも設定できます。
こちらも余裕があれば覚えておきましょう。
団体定期保険(Bグループ保険)
団体定期保険(Bグループ保険)とは
“団体定期保険(Bグループ保険)”も、法人が従業員向けに提供する団体保険です。
こちらも1年更新の定期保険です。
総合福祉団体定期保険(Aグループ保険)と異なるのは、従業員の加入は任意だということです。
同じ会社の中でも加入者と未加入者がいてOKということです。
また、保険料は全額加入者(従業員・役員)の負担となります。
どちらも”1年更新の定期保険”であることは同じです。
団体定期保険(Bグループ保険)では、保険料を加入者が支払うため、支払った保険料は生命保険料控除の対象となります。
生命保険料控除とは、個人が支払った年間の保険料に応じて所得税・住民税の軽減が受けられる税制上の優遇措置です。
生命保険料控除の詳細は別の講義で解説します。
団体信用生命保険
団体信用生命保険とは
“団体信用生命保険”とは、住宅ローン債務者の死亡リスクに備える保険です。
一般的に住宅ローンの債務者は、家庭の稼ぎ頭(例えば夫)であることが多いです。
しかし、住宅ローンが残っている間に夫が死亡した場合、残された遺族では返済できないかもしれません。家を売れば返済できるかもしれませんが、遺族が路頭に迷ってしまいます。
それはさすがに可哀想だな…
こうしたリスクに備え、夫が死亡した場合に住宅ローン残高と同額の保険金が支払われるのが、団体信用生命保険です。
略して”団信”や”住宅ローン団信”と呼ばれることもあります。
通常、住宅ローン契約者は必ず加入しなければなりません。
団体信用生命保険の特徴
団体信用生命保険では、契約者と被保険者は住宅ローン債務者、保険金受取人は金融機関(住宅ローンの債権者)となります。
このため、契約者が死亡しても遺族に保険金は支払われず、全額が金融機関に支払われます。
保険金額は住宅ローンの残高と同額であり、その全額が住宅ローンの返済に充てられます。
死亡保険金は遺族に支払われません。この点はFP2級試験で頻出です。
また、団体信用生命保険は、生命保険料控除の対象外です。
この点も合わせて覚えておきましょう。
- 総合福祉団体定期保険(Aグループ保険):生命保険料控除の対象外
- 団体定期保険(Bグループ保険):生命保険料控除の対象
- 団体信用生命保険:生命保険料控除の対象外
- 住宅ローンの利用に伴い加入する団体信用生命保険では、被保険者が住宅ローン利用者(債務者)、死亡保険金受取人が住宅ローン利用者の遺族となる。○か×か?
-
正解は”×”です。団体信用生命保険の死亡保険金受取人は、金融機関(住宅ローンの債権者)です。団体信用生命保険は、債務者が死亡したときに遺族に債務が残らないようにするための保険なので、死亡保険金は全額が住宅ローンの返済に充てられます。
団体信用生命保険の特約
団体生命保険には契約者の希望により、次のような特約を付けることができます。
これらの特約を付けておくと、特定の病気と診断された場合にも保険金が支払われ、以後は住宅ローンの返済が不要となります。
特約を付けた場合、通常よりも保険料は高くなります。
過去問チャレンジ
最後にFP2級試験対策として、実際の過去問を見てみましょう。
総合福祉団体定期保険の一般的な商品性に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、 契約者は法人であるものとする。
- 契約の締結には、被保険者になることについての加入予定者の同意が必要である。
- 保険期間は、1年から5年の範囲内で、被保険者ごとに設定することができる。
- 法人が負担した保険料は、その全額を損金の額に算入することができる。
- ヒューマン・ヴァリュー特約を付加した場合、当該特約の死亡保険金受取人は法人となる。
(2023年9月 FP2級学科)
それでは解説していきます。
❶適切。
設問のとおりです。総合福祉団体定期保険(Aグループ保険)は全役員・従業員からの同意が必要です。また、医師の診察は不要ですが、各従業員の告知は必要なので合わせて覚えておきましょう。
❷不適切。
総合福祉団体定期保険(Aグループ保険)は1年更新の定期保険です。保険期間を自由に設定することはできないため、設問の記載は誤りです。なお、この点は団体定期保険(Bグループ保険)も同じです。
❸適切。
設問のとおりです。総合団体定期保険(Aグループ保険)には貯蓄性がないため、法人は掛け金の全額を損金算入することができます(=資産計上しなくて良い)。
❹適切。
設問のとおりです。ヒューマン・ヴァリュー特約は、従業員の死亡に伴う会社の経済的損失をカバーするための特約なので、受取人は法人になります。なお、ヒューマン・ヴァリュー特約がなければ、死亡保険金の受取人は遺族となります。
以上により、正解は❷となります。
今回の学習はここまでです。次回からは個人年金保険を解説します。