【FP2級】不動産の評価〜公的価格と鑑定評価
今回は土地や建物の価格がどのように決まるかを学習します。4つの公的価格と3つの鑑定評価方法はしっかり理解しよう!
- 4つの公的価格を理解する
- 3つの鑑定評価方法を理解する
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4つの公的価格
実勢価格と公的価格
不動産取引における実際の取引価格を実勢価格(時価)と呼びます。
しかし、実勢価格は個別の商取引であり、通常公表されることはありません。
そこで、不動産取引の指標として使われるのが、国や地方自治体が発表する公的価格です。
次のを4つ覚えておきましょう。
これだけじゃわからん!何がどう違うんだ?
まあまあ、落ち着いて!順番に解説していきます。
公示価格と基準値標準価格
公示価格とは、国土交通省が発表する土地1㎡当たりの価格です。
毎年1月1日を基準日として3月下旬に公表されます。
全国約26,000の地点を調査対象としており、更地であった場合の価格を表示します。
毎年3月頃の新聞で「東京の地価が◯年連続上昇」とか「人口減少で地方の地価が下落」といった記事を目にすると思いますが、これは公示価格の話をしているわけです。
おお!銀座で5,000万円とか言ってるやつか!
そうそう!銀座4丁目の土地が毎年トップになっているよ。1㎡で5,000万円なんてちょっと想像がつかないね。
もちろんテキトーな価格を付けているわけではなく、専門家である不動産鑑定士の評価に基づき価格を決定しています。
公示価格は土地の取引に最も影響を与える指標と言っても良いでしょう。
基準地標準価格
公示価格に近いものとして基準地標準価格があります。
基準地標準価格は毎年7月1日を基準日として、9月下旬に都道府県が発表します。
調査方法などは公示価格とほぼ同じあり、公示価格の補完として使われるのが特徴です。
相続税評価額(路線価)
続いては相続税評価額(路線価)です。
土地を相続するとその価値に応じて相続税が課せられます。
その時に参照されるのが相続税評価額(路線価)です。
相続税評価額(路線価)は毎年1月1日を基準日として、国税庁が7月上旬に発表します。
ポイントは、相続税評価額(路線価)は公示価格の80%程度に設定されるということです。
相続した土地の評価が高いと相続税の納税額も増えるため、低く評価されるに越したことはないですね。
相続税評価額(路線価)を基準に相続財産を評価する方法を「路線価方式」といいます。詳細は以下の講義で解説しています。
固定資産税評価額
最後に固定資産税評価額です。
土地や建物などの不動産を保有していると毎年、固定資産税という税金がかかります。
この固定資産税算出の元となるのが、固定資産税評価額です。
固定資産税は3年ごとの1月1日を基準日として、市区町村長が4月上旬頃に発表します。
固定資産税評価額は公示価格の70%程度に設定されます。
固定資産税評価額は、他の公示価格とは以下の点が異なります。
- 固定資産税評価額は3年ごとに見直す(毎年ではない)
- 固定資産税評価額は一般公開されない
特に❶はFP2級試験で頻出なのでしっかり覚えておきましょう。
固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書や固定資産課税台帳に記載されます。固定資産課税台帳は市町村役場に備え付けられており、土地の所有者だけでなく、借地人や相続人などの関係者も閲覧することができます。
過去問チャレンジ
FP2級試験対策として実際の過去問を見てみましょう。
土地の価格に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 地価公示法による公示価格は、毎年1月1日を標準地の価格判定の基準日としている。
- 都道府県地価調査の標準価格は、毎年7月1日を基準地の価格判定の基準日としている。
- 相続税路線価は、地価公示法による公示価格の70%を価格水準の目安としている。
- 固定資産税評価額は、原則として、3年ごとの基準年度において評価替えが行われる。
(2022年5月 FP2級学科)
それでは解説していきます。
❶適切。
設問のとおりです。公示価格は毎年1月1日を基準に国土交通省が発表します。
❷適切。
設問のとおりです。各都道府県が発表する基準地標準価格は、公示価格の補完的な役割を果たします。
❸不適切。
相続税評価額は公示価格の80%です。公示価格の70%なのは固定資産税評価額です。
❹適切。
設問のとおりです。固定資産税評価額は、市町村が3年ごとに見直しをします。
以上により、正解は❸となります。
4つの公的価格まとめ
ここまでで学習した4つの公的価格の違いを整理しておきましょう。
公示価格 | 基準地標準価格 | 相続税評価額(路線価) | 固定資産税評価額 | |
---|---|---|---|---|
発表機関 | 国土交通省 | 都道府県 | 国税庁 | 市町村 |
基準日 | 毎年1月1日 | 毎年7月1日 | 毎年1月1日 | 3年ごとの1月1日 |
発表時期 | 3月下旬 | 9月下旬 | 7月上旬 | 4月上旬 |
評価水準 | − | 公示価格と同じ | 公示価格の80% | 公示価格の70% |
3つの鑑定評価方法
不動産の鑑定評価とは
不動産の鑑定評価とは、土地や建物の価値を金銭に見積もることです。
鑑定評価による価格は、その不動産の効用が最高度に発揮された場合を前提として決められます(これを「最有効使用の原則」といいます)。
不動産の鑑定評価は不動産鑑定士でなければ行うことができません。
宅建士には鑑定評価をする権限はないので注意しましょう。
不動産鑑定評価の方法は次の3つです。
実際の不動産鑑定評価では、どれか1つの方法に限定するのではなく、複数の方法を組み合わせて評価額を決定するのが一般的です。
それぞれの評価方法を順番に見ていきましょう。
原価法とは
原価法とは、評価対象の不動産の再調達価格を計算し、そこから減価修正を行って評価額を決定する方法です。
再調達価格?減価修正?
再調達価格は、例えば同じ建物を今から建てる場合に必要な費用の合計額を指します。減価修正は、建物の経年劣化を考慮して評価額を割り引くことです。当然、築5年の建物よりも築30年の建物の方が減価修正は大きくなります。
一般的に建物の評価に利用される評価方法ですが、造成地や埋立地など特殊な土地を評価するときにも利用されます。
取引事例比較法とは
次に取引事例比較法です。
取引事例比較法とは、類似した条件の取引事例を参考とし、必要な補正を行ったうえで対象不動産を評価する方法です。
「類似した条件」というのは、例えば物件の場所が距離的に近かったり、需給状況が近い地域同士であることを指します。都心と山奥の取引事例を比較しても意味がないですからね。
「必要な補正」というのは、例えば売り急いだ不動産や投機目的の不動産など、参照する取引が通常と異なる条件であった場合には、その事情を考慮して評価額を補正するということです。
収益還元法とは
ちょっと分かりづらいのが収益還元法です。
収益還元法とは、評価対象の不動産から将来得られる価値(収益)を現在価値に割引して評価する方法です。
何を言っているのかさっぱり分からん。もう帰っていいか?
ごめんごめん。簡単に言うと「この賃貸ビルは今後1億円くらいの賃料を稼ぎそうだから、今時点では7千万円くらいで買う価値があるぞ!」みたいな考え方だよ。なんとなくイメージできるかな?
いきなりですが、ここでクイズです。
今もらえる100万円と1年後にもらえる100万円ではどちらの価値が大きいでしょう?
いかがでしょう。
答えは「今もらえる100万円」ですね。
今100万円もらって年利2%で運用すれば1年後には102万円になるからです。
「現在価値に割引く」とはこれの逆で、例えば”1年後の100万円は現在の価値でいうと98万円だ”という考え方です。
収益還元法はこのような「現在価値に割引く」という考え方の基づき、将来の見込み収益から現在の価値を算出する方法です。
主に賃貸用不動産や事業用不動産を評価する場合に有効な方法です。
さらに、収益還元法には直接還元法とDCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)があります。
このうちDCF法は、将来の見込み収益だけでなく、保有期間終了後の売却予測価格を現在価値に割引きした金額も加えて評価額を決定する方法です。
不動産から得られる見込み収益(賃料収入等)だけでなく、将来いくらで売れるか(売却予想価格)まで加味する点がポイントです。
一方で、直接還元法では売却予想価格は加味しません。
FP2級では計算方法まで覚える必要はありませんが、この違いだけはおさえておきましょう。
- 直接還元法・・・見込み収益の現在価値
- DCF法・・・見込み収益+売却予想価格の現在価値
収益還元法は自用地の評価にも使えます。
要するに、自用地を賃貸したと仮定して評価するわけです。
一方で、収益還元法は市場性のない不動産には使えません。
例えば、文化財の指定を受けた建築物を収益還元法で評価することはできないということです。
過去問チャレンジ
それでは実際の過去問を解いてみましょう。
不動産鑑定評価基準における不動産の鑑定評価に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 不動産の価格を求める鑑定評価の基本的な手法は、原価法、取引事例比較法および収益還元法に大別され、鑑定評価に当たっては、対象不動産に係る市場の特性等を考慮し、これらのうち最も適した1つの手法に限定して適用することとされている。
- 最有効使用の原則は、不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用を前提として把握される価格を標準として不動産の価格が形成されるとする原則である。
- 原価法は、価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正を行って対象不動産の価格を求める手法である。
- 収益還元法は、対象不動産が賃貸用不動産である場合だけでなく、自用の不動産であっても、賃貸を想定することにより適用されるものであるとされている。
(2022年9月 FP2級学科)
早速解説していきます。
❶不適切。
不動産の鑑定評価は、複数の手法を組み合わせて評価額を決定するのが一般的です。設問では”1つの手法に限定して”とあるので誤りです。
❷適切。
設問のとおりです。
❸適切。
設問のとおりです。減価修正を行うという点がポイントです。
❹適切。
設問のとおりです。収益還元法は賃貸用不動産の評価に有効な手法ですが、賃貸した場合を想定することで自用不動産の評価にも活用することができます。
以上により、正解は❶となります。
不動産の鑑定評価のまとめ
最後にFP2級試験対策として、不動産鑑定評価のまとめです。
- 原価法・・・不動産の再調達価格から減価修正を行って評価する方法
- 取引事例比較法・・条件が類似した不動産の取引事例を参考にして評価する方法
- 収益還元法・・・不動産から将来得られる収益を現在価値に割引きして評価する方法
※ DCF法では不動産の売却予想価格も加味する
4つの公的価格と3つの不動産鑑定評価方法は、特徴をしっかりおさえておきましょう。次回は宅地建物取引業法です。
試験対策には“直前対策note(2025年1月試験対応)”がおすすめだぞ