【FP2級】接道義務と防火規制(建築基準法❷)
建築基準法の第2回目です。接道義務と防火規制を学習していきます。どちらも火事の延焼を防ぐための規制です。
- 接道義務とセットバックを理解する
- 防火地域/準防火地域の防火規制を理解する
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接道義務
道路とは
建築基準法では原則として“幅員4m以上”の道路を道路と定めています。
幅員(ふくいん)とは、道路の幅のことです。
裏を返せば、幅員4m未満の道路は、建築基準法では道路とは言わないわけです。
あの細い道は道路ではなかったのか・・・
ただし、次のような例外があります。
幅員4m未満でも、建築基準法の施行時に現に建物が建ち並んでいた道路で、特定行政庁の指定を受ければ、建築基準法上の道路とみなされる(2項道路)
このような道路を“2項道路”といいます。
建築基準法42条2項に定められているため、このように呼ばれています。
ちなみに、特定行政庁とは都道府県知事だと思っておけばOKです。
接道義務
接道義務とは“建物は道路に2m以上接していなければならない”という決まりです。
ここでいう道路とは、建築基準法上の道路です。
つまり、敷地が”幅員4m以上の道路(または2項道路)”に”2m以上”接していなければ、建物を建てることはできないということになります。
なんでこんな決まりがあるんだ?
火災に対応するためだよ。道路が狭くて消防車が入れないと小さな火災が甚大な被害になるかもしれない。それを防ぐための決まりです。
セットバック
ところで2項道路は幅員4m未満の狭い道路です。ここで火事が起こった場合、道路が狭くて消防車が入れなかったら大変ですよね。
建築基準法以前の建物は仕方ありませんが、再建築される際には規制をかけたいところです。
このため、2項道路に面した敷地で建物を再建築する場合、建築基準法には次のようなルールが定められています。
道路から後退させてできたスペースを“セットバック”といいます。
例えば敷地前の道路の幅員が3mの場合、道路の両側の敷地はそれぞれ0.5m後退させる必要があります。これにより道路の幅員は4m(3m+0.5m+0.5m)になるわけです。
では、幅員3mの道路で反対側が河川や崖の場合はどうなるのでしょうか。
その場合は、住居側の敷地を1m後退させる必要があります。これにより道路の幅員は4m(3m+1m)になりますね。
後退させた部分(セットバック部分)に建物は建てられません。2項道路沿いの建物は、建替えすると利用可能な敷地が少なくなってしまうのです。
また、セットバック部分は、建ぺい率(建蔽率)や容積率を算定する際の敷地面積に算入することもできません。建ぺい率や容積率は次回以降の講義で詳しく解説します。
防火規制
防火地域とは
接道義務は火災に対応するための規制だと学習しました。
これから学習する防火規制も、同じく火災に関係する規制です。
建物の密集地では、ひとたび火災が起こると延焼して甚大な被害につながる恐れがあります。
都市計画ではそのような地域を“防火地域”または“準防火地域”と定め、建物を燃えにくい材料等で建築するよう制限しています。
防火地域や準防火地域の指定は任意です。全ての地域に定める必要はありません。
耐火建築物と準耐火建築物
ところで、燃えにくい建物とはどんな建物でしょうか。
具体的には、次のような建物を指します。
- 耐火建築物・・・鉄筋コンクリート造
- 準耐火建築物・・・鉄骨造
防火地域や準防火地域で一定規模以上の建物をつくる際は、耐火建築物か準耐火建築物でつくる必要があります。
具体的な規制内容は以下の通りです。
耐火と準耐火がまぎらわしいので注意しましょう。
- 準防火地域で3階以下かつ延べ床面積1,500㎡未満の建物をつくる際は、耐火建築物または準耐火建築物にしなければならない。○か×か?
-
答えは「×」です。準防火地域で小さな建物をつくるときは木造などの建物でもOKです。一方、4階以上または延べ床面積1,500㎡超の建物は必ず耐火建築物にしなければなりません(この場合、準耐火建築物でもダメです)。
2つの地域にまたがる場合の扱い
1つの敷地が防火地域と準防火地域、あるいは無指定の地域にまたがっている場合の扱いはどのようになるのでしょうか。
答えは“厳しい方の規制が建物全体に適用される”です
無指定地域→準防火地域→防火地域の順に規制は厳しくなるため、
- 防火地域と準防火地域にまたがる敷地は、”防火地域の規制”が適用される
- 準防火地域と無指定地域にまたがる敷地は、”準防火地域の規制”が適用される
ということになります。
100㎡のうち1㎡だけでも防火地域に入っていれば、敷地全体に防火地域の規制が適用されるということです。
厳しい規制ですが、火事の延焼を防ぐためなのでやむを得ないといえるでしょう。
過去問チャレンジ
最後にFP2級試験対策として、実際の過去問を見てみましょう。
都市計画区域および準都市計画区域内における建築基準法の規定に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 建築基準法第42条第2項により道路境界線とみなされる線と道路との間の敷地の部分(セットバック部分)は、建築物を建築することができないが、建蔽率および容積率を算定する際の敷地面積に算入することができる。
- 建築物の敷地は、原則として、建築基準法に規定する道路に2m以上接していなければならない。
- 北側斜線制限(北側高さ制限)は、商業地域内の建築物について適用される。
- 日影規制(日影による中高層の建築物の高さの制限)は、原則として、工業専用地域、工業地域、準工業地域および商業地域を除く用途地域における建築物に適用される。
(2021年9月 FP2級学科)
それでは解説していきます。
❶不適切。
セットバック部分は建ぺい率(建蔽率)や容積率を算定する際の敷地面積に参入することはできません。建ぺい率と容積率の詳細は次回以降の講義で解説します。
❷適切。
設問のとおりです。接道義務により、敷地が幅員4m以上の道路(または2項道路)に2m以上接していなければ、建物を建てることはできません。
❸不適切。
北側斜線規制は住居”専用”地域に適用されます。設問に記載の商業地域には適用されません。忘れてしまった方は前回の講義(建築基準法❶)を復習しておきましょう。
❹不適切。
日影規制は商業地域・工業地域・工業専用地域以外の用途地域に適用されます。準工業地域は日影規制の適用対象なので、設問の記載は誤りです。こちらも忘れてしまった方は前回の講義(建築基準法❶)を復習しておきましょう。
以上により、正解は❷となります。
今回の学習は以上です。接道義務と防火規制は理解できたでしょうか。次回は建築基準法の「建ぺい率」を解説します。
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ