【FP2級】宅地建物取引業法〜宅地建物取引業者への規制
今回は宅地建物取引業法の学習です。手付金や媒介契約など、宅地建物取引業者への規制をおさえておきましょう!
- 宅地建物取引業と宅地建物取引士を理解する
- 手付金・損害賠償・報酬の限度額を理解する
- 3つの媒介契約の違いを理解する
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ
宅地建物取引法とは
宅地建物取引業者
土地・建物の売買や賃貸をする時、多くの人は不動産屋に相談すると思います。
この不動産業ですが、誰でも営めるわけではありません。
土地・建物の売買、賃貸借の媒介(仲介)には専門的な知識が要求されるため、宅地建物取引業の免許を受ける必要があります。
宅地建物取引業の免許を受けた業者のことを「宅地建物取引業者」と言います。
そしてこの宅地建物取引業者の業務を規制する法律が「宅地建物取引業法」です。
でもよ、自分の土地とか建物を貸してる地主とか大家がいるだろ。この人たちも宅地建物取引業者なのか?
いいところに気が付いたね!実は、自らの土地や建物を賃貸するだけであれば、宅建業の免許は不要なんだ!
ここで宅地建物取引業者の定義を整理しておきましょう。
宅地建物取引業とは・・・
- 自ら所有する物件の売買・交換を行うこと
- 他人の所有する物件の売買・交換・賃貸の代理・媒介を行うこと
ことを不特定多数の者に対して、反復継続的に行うこと。
ここで重要なのは、自ら所有する物件を賃貸することは宅地建物取引業には該当しないため免許は不要だということです。
この点はFP2級試験で超頻出なので、必ずおさえて覚えておいてください。
- 【正誤問題】賃貸マンションの所有者が、その所有するマンションの賃貸を自ら業として行う場合は、宅地建物取引業の免許が必要となる。○か×か?
-
答えは「×」です。“自ら賃貸”は宅地建物取引業に当たらないので免許は不要です。
宅地建物取引士
宅地建物取引業者は、事務所ごとに5人に1人以上の割合で専任の「宅地建物取引士」を置かなければなりません。
「宅地建物取引士」とは、国家資格(宅建試験)に合格して都道府県知事の登録を受けた人のことです。要するに不動産の専門知識を持った人を指します。
不動産取引はとても高額である一方、一般の人にはあまり馴染みがありません。
一般の人が不当な契約を強いられないように、宅地建物取引業法では宅地建物取引業者に対して重要事項をしっかり説明することを求めています。
そして、この重要事項説明は宅地建物取引士にしか行うことはできません。
重要事項の説明を含め、宅地建物取引士にしかできない業務が3つあります。
- 重要事項の説明
※契約成立前に、宅地建物取引士証を提示して行う。 - 重要事項説明書への記名
- 契約締結時に交付する書面への記名
❶重要事項の説明は契約成立後ではダメです。必ず契約の前に行います。
また、宅地建物取引士証の提示を省略することはできません。
このへんのルールもFP2級試験で問われます。
手付金・損害賠償・報酬の限度額
民法には「契約自由の原則」というものがあります。当事者間の契約は合意により自由に決定できるというのが民法の大原則です。
不動産取引においても、この原則は当てはまります。
しかし、宅地建物取引業者と一般の人(素人)の取引は完全に自由というわけにはいきません。
専門知識が必要な不動産取引において、宅地建物業者と素人の契約を自由にしてしまうと、素人が騙されて不利な契約を結んでしまうかもしれません。
そんな事態から素人を守るため、宅地建物取引業法は宅地建物取引業者に様々な規制をかけています。
具体的にどんな規制があるのか、順番に見ていきましょう。
手付金の限度額
手付金とは、契約成立を確認するために、契約締結時に買主が売主に預けるお金のことです。
手付金には、解約手付・違約手付・証約手付などの種類がありますが、FP2級では「解約手付」だけ覚えておけばOKです。
不動産取引で売主が宅地建物取引業者の場合は、契約内容にかかわらず手付は必ず「解約手付」の性質を持ちます。
解約手付とは、買主が契約を解除したい時は手付金を放棄、売主が契約を解除したい時は手付金の倍額を支払うことで契約を解除できる性質を持った手付金のことです。
ただし、契約の解除は相手方が契約の履行に着手する前でなければできません。
この点はFP2級試験では超重要なので、もう1度整理しておきます。
“契約の履行に着手”ってどういうことだ?
具体的には、買主による代金の全部や一部の支払い、売主による物件の引渡しなどを指すよ!
“今さらなくね?”ってタイミングじゃあ解除はできないってことだな
さて、この手付金の金額は民法上、買主と売主の間で自由に決めることができます。
ただし、売主が宅地建物取引業者で買主が素人(宅地建物取引業者以外)の場合、手付金は売買代金の2割が上限という決まりがあります。
たとえ契約で合意してもダメです。2割の上限を超えることはできません。
プロである業者が素人から不当に高い手付金を受け取ることを禁止しているわけですね。
損害賠償の予定額の制限
契約では相手方の債務不履行(契約を守らないこと)に対して、損害賠償を定めることがあります。
この損害賠償の予定額も、売主が宅地建物取引業者の場合は売買代金の2割が上限となります。
手付金も損害賠償も上限は2割!セットで覚えておこう!
報酬の限度額
不動産取引が成立すると、買主は不動産の購入代金や賃借料に加えて、宅地建物取引業者に報酬を支払います。いわゆる仲介手数料というやつです。
宅地建物取引業者も商売なので、報酬を受け取るのは当然ですよね。
しかし、宅地建物取引業法では宅地建物取引業者の報酬に一定の限度を定めています。
FP2級試験では、賃貸借の媒介をする場合の上限金額を覚えておく必要があります。
- 【正誤問題】宅地建物取引業者は賃貸借の媒介の報酬として、貸主と借主の双方から賃料の1か月(+消費税)を受け取ることができる。○か×か?
-
答えは「×」です。貸主と借主からの報酬の合計で賃料の1か月分(+消費税)が上限です。
仮に依頼者からの合意があったとしても、報酬の上限を超えることはできません。
これもプロである宅地建物業者から素人を守るための決まりです。
媒介契約
不動産の売買の仲介を宅地建物取引業者にお願いするときは、宅地建物取引業者との間で媒介契約を結びます。
要するに、「私の土地・建物を買ってくれる人を探してくださいね!」とか「私の希望する土地・建物を見つけてきてくださいね!」という契約を宅地建物取引業者と結びます。
この「媒介契約」には次の3種類があります。
それぞれの違いがFP2級試験で問われます。
❶一般媒介契約
1つ目の「一般媒介契約」は、最も縛りが少ない契約形態です。
まず、依頼者は複数の宅地建物取引業者に依頼が可能です。A社だけでなく、B社やC社にも同時に媒介を依頼することができるわけですね。
また、宅地建物取引業者に依頼をしつつ、自分で取引の相手を見つけてくることも可能です。
自力で取引の相手方を見つけて取引を成立させることを「自己発見取引」といいます。
- 複数業者への依頼が可能
- 自己発見取引も可能
❷専任媒介契約
「専任媒介契約」では、複数の宅地建物取引業者との媒介契約を結ぶことはできません。
契約先は1社の宅地建物取引業者に決めなければなりません。
ただし、自己発見取引ならOKです。
要するに、浮気はダメだけど、1人でやるならOKってことだな!
ところで、専任でお願いするわけですから、依頼した宅地建物取引業者にはダラダラせずに、しっかり仕事をしてもらわなければなりません。
ということで、専任媒介契約には次のような決まりがあります。
- 契約は3か月以内
※3か月を超える契約をした場合、契約期間は3か月とみなされる - 宅地建物取引業者は2週間に1回以上の頻度で進捗状況の報告が必要
- 宅地建物取引業者は契約から7日以内に指定流通機構に物件情報の登録が必要
3か月を超える契約をしても契約は無効にはなりません。あくまで上限の3か月で契約したものとみなされます。
この点もFP2級試験で問われることがあるので、おさえておきましょう。
❸専属専任媒介契約
最後に「専属専任媒介契約」です。
専属専任媒介契約では、依頼者は契約を結んだ宅地建物取引業者以外とは媒介契約を結ぶことはできません。
ここまでは専任媒介契約と同じですが、異なるのは自己発見取引もNGということです。
依頼した業者経由の契約でなければ、たとえ自力で契約の相手方を見つけてきても契約はできないということになります。
浮気だけじゃなくて、1人でやるのもダメとは・・・
ここまで依頼者を縛っているわけですから、宅地建物取引業者も責任は重大です。
このため、依頼者への報告頻度や指定流通機構への登録期限は、専任媒介契約よりも厳しくなっています。
- 契約は3か月以内
※3か月を超える契約をした場合、契約期間は3か月とみなされる - 宅地建物取引業者は1週間に1回以上の頻度で進捗状況の報告が必要
- 宅地建物取引業者は契約から5日以内に指定流通機構に物件情報の登録が必要
契約期間が3か月以内という点は専任媒介契約と同じですが、依頼者への報告頻度と指定流通機構への登録期限が短くなっていることが分かると思います。
3つの媒介契約の違いまとめ
ここで3つの媒介契約の違いを整理しておきましょう。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
---|---|---|---|
複数業社への依頼 | ○ | × | × |
自己発見取引 | ○ | ○ | × |
契約期間 | 自由 | 3か月以内 | 3か月以内 |
依頼者への報告 | 不要 | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
指定流通機関への登録 | 不要 | 7日以内 | 5日以内 |
覚えることは多いですが、この表だけで1点取れることもあります。
過去問チャレンジ
FP2級試験対策として実際の過去問を見てみましょう。
宅地建物取引業法に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、買主は宅地建物取引業者ではないものとする。
- 宅地建物取引業者は、専任媒介契約を締結したときは、契約の相手方を探索するため、一定の期間内に当該専任媒介契約の目的物である宅地または建物に関する一定の事項を指定流通機構に登録しなければならない。
- 専任媒介契約の有効期間は、3ヵ月を超えることができず、これより長い期間を定めたときは、その契約は無効とされる。
- 宅地建物取引業者は、自ら売主となる宅地の売買契約の締結に際して、代金の額の10分の1を超える額の手付を受領することができない。
- 宅地建物取引業者が建物の貸借の媒介を行う場合、貸主と借主の双方から受け取ることができる報酬の合計額は、当該建物の借賃(消費税等相当額を除く)の2ヵ月分に相当する額に消費税等相当額を加算した額が上限となる。
(2021年5月 FP2級学科)
それでは解答を見ていきましょう。
❶適切。
設問のとおりです。宅地建物取引業者は専任媒介契約を結んでから7日以内に指定流通機構に物件情報を登録しなければなりません。なお、専属専任媒介契約の場合は5日以内に登録が必要となります。
❷不適切。
専任媒介契約・専属専任媒介契約ともに契約期間は3か月以内で定める必要があります。仮に3か月以上の契約を定めた場合、契約期間は3か月とみなされます。契約が無効になるわけではありません。
❸不適切。
売主が宅地建物取引業者で買主が宅地建物取引業者以外の場合、手付金は売買代金の2割が上限となります。同様に損害賠償の予定額も2割が上限です。
❹不適切。
宅地建物取引業者が賃貸借の媒介をする場合の報酬の上限は、貸主と借主から受け取る報酬の合計で賃料の1か月分(+消費税)です。貸主と借主の双方から1か月分ずつもらえるわけではありません。
以上により、正解は❶となります。
今回の講義はここまでです。次回は「不動産取引の留意事項」を学習していきます。
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ