【FP2級】不動産取引の留意事項〜契約不適合責任/債務不履行/危険負担/不動産広告
今回は不動産取引における留意事項の学習です。契約不適合責任や危険負担、債務不履行などのルールをしっかり身に付けておこう!
- 契約不適合責任を理解する
- 債務不履行や危険負担のルールを理解する
- 不動産広告の表示ルールを理解する
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契約不適合責任
契約不適合責任とは
契約不適合責任とは、売買契約の目的物に契約内容に適合しない事実があった時に売主が負う責任のことです。
例えば購入した物件に雨漏りやシロアリによる木部の侵食があった場合、契約不適合として買主は売主に対して責任を負わなければなりません。
契約不適合があった時に売主が買主に請求できる権利は次のとおりです。
りこうのついかんせいきゅう?
履行の追完請求というのは、物件の修復や代替物の納品を請求することです。相当期間の期間を定めて履行の追完を催促しても対応してくれない時は、代金の減額請求を求めることができます。
契約不適合責任は無過失責任
契約不適合責任の厳しいところは、売主は過失の有無に関係なく責任を負うということです(これを「無過失責任」と言います)。
売主が「自分も知らなかったんだよ!」と主張してもダメです。責任を負う必要があります。
契約不適合がある事実を買主が知っていたとしても、それを免責する特約を結んでいない限り、売主は契約不適合責任を負います。
この点は民法改正により、厳しくなった点なのでおさえておきましょう。
契約不適合責任の期間
民法の原則
では、売主は一体いつまで契約不適合責任を負わなければならないのでしょうか。
民法では、買主は契約不適合の事実を知った日から1年以内(※)に通知すれば、契約の解除が可能となっています。
(※)ただし、売主が不適合の事実を知りながら告げていなかった場合は、1年を超えても責任を追求できます。
契約の解除が難しい場合は、損害賠償の請求もできることになっています。
この「1年以内」という期間ですが、民法上は特約により期間を短くしたり、そもそも契約不適合責任を免除することもできてしまいます。
しかし、それでは契約不適合があった場合に買主が保護されません。
このため、宅地建物取引業法と住宅品質確保促進法では、一定の不動産取引における特約を制限しています。順番に見ていきましょう。
宅地建物取引業法
売主が宅地建物取引業者で買主が素人の場合、売主が有利な立場にあることを考慮し、自由に特約を結ぶことを制限しています。
つまり、売主が宅地建物取引業者で買主が素人の場合は、「買主は契約不適合の事実を知った日から1年以内に通知」の期間を特約により短くすることはできません。
唯一許されているのが、通知期間を引渡し日より2年以上とする旨の特約です。
2年以上なので、契約不適合責任を「引渡日から3年」という特約はOKですが、「引渡日から1年」とする特約はNGということです。
少し混乱してきたと思うので、ここまでの内容を整理しておきます。
- 買主は契約不適合の事実を知った日から1年以内に通知すれば、売主に契約不適合責任を求めることができる
- 1年以内を特約で短縮することは不可
- ただし、1年以内を「引渡しより2年以上」とする特約だけはOK
住宅品質確保促進法
最後に住宅品質確保促進法の規制です。
住宅品質確保促進法では、新築住宅の構造耐力上主要な部分や雨水の侵入を防止する部分について、売主や施工業者に10年間の責任を義務付ける法律です。
10年という期間を短くする特約は認められていません。
民法の原則は「知った日から1年以内」でしたが、新築住宅の主要部分の欠陥に関しては、より厳しい規制があるということです。
新築から10年間は逃がさないというわけだな
債務不履行
不動産取引において相手の債務不履行があった場合、契約の解除を求めることができます。
債務不履行には「履行遅滞」と「履行不能」があります。
いずれの状態かによって債権者が取れる行動が変わってきます。
- 履行遅滞・・・相当の期間を定めて契約の催告し、その期間内に履行されないときは契約を解除できる
- 履行不能・・・事前の催告なく、直ちに契約を解除できる
履行遅滞の場合は、いきなり契約解除はできず、まずは催告が必要だということです。
危険負担
危険負担とは、物件の引渡しを受けるまでの間に、売主にも買主にも非がなく目的物が滅失したり毀損してしまった場合の負担のことです。
例えば、引渡し前に天災で家屋が滅失した場合に、買主は代金を支払わなければならないか?というのが危険負担の問題です。
このような場合、買主は売主に対する代金支払いを拒むことができます。
つまり、危険負担は売主が負うということです。
不動産広告
徒歩1分は80m
普段何気なく見かける不動産広告ですが、実は色々なルールがあります。
例えば「駅徒歩●●分」といった記載を見かけると思いますが、道路距離80mを徒歩1分に換算して表示する(1分未満の端数は切り上げ)という決まりがあります。
つまり「駅徒歩5分」とあれば、駅から320m〜400mの道路距離にあるわけです。
駅近物件に見せるために誤魔化すのはNGってことだな
FP2級試験対策として「80m=1分」は覚えておこう!
壁芯面積と内法面積
床面積の測り方として、壁芯面積(へきしんめんせき)と内法面積(うちのりめんせき)という考え方があります。
壁芯面積 | 壁や柱の厚みの中心線で測られた建物の面積 |
内法面積 | 壁の内側の寸法で測られた面積 |
基本的に内法面積よりも壁芯面積の方が広くなります。
このうち、不動産広告(パンフレット)で使用されるのは「壁芯面積」です。
一方、マンションなどの区分所有建物は、登記上は「内法面積」で表示されます。
このため、不動産広告の表示面積よりも、登記面積は少し狭くなります。
その他不動産取引の留意事項
クーリング・オフ
クーリング・オフとは、一定の期間内であれば契約の撤回や解除ができる制度です。
執拗な勧誘を受けて断りきれずに契約をしてしまった消費者などを守るための制度となります。
不動産取引では、宅地建物取引業者が売主で一般の個人が買主の場合、買主はクーリング・オフに関する書面を受け取ってから8日以内であれば契約を解除できます。
解除は必ず書面で行う必要があります。
ただし、以下のようなケースではクーリング・オフを利用できないので注意が必要です。
❶は自ら業者の事務所まで出向いたなら購入する意思があったんですよね?ということです。裏を返せば、訪問勧誘で契約した場合はクーリング・オフの対象となります。
❷は説明不要だと思いますが、ここまできて今更解除はないよね?ということです。
ちなみに、あくまで宅地建物業者が売主である場合に限られるので、個人間売買はクーリング・オフの対象外です。
同じく、宅地建物取引業者同士の取引でも利用できません。クーリング・オフは弱者である消費者を守るための制度なので、プロ同士であれば自己責任ということですね。
未成年との取引
最後に未成年との取引についてです。
未成年が法定代理人の同意を得ずに不動産の売買契約を締結した場合、法定代理人または未成年者本人は契約を取り消すことができます。
法定代理人(親など)だけでなく、未成年本人も取り消すことができます。
ただし、未成年者が自らが成年者だと騙して契約を行った場合は契約を解除できません。
いくら未成年でも詐欺は許さんということだな
共有持分の譲渡
共有持分とは、1つの不動産を複数人で共有している場合の各人の所有権のことです。
よくあるのは、相続により自宅を相続した兄弟が50%ずつ共有持分を持っているケースです。
この共有持分ですが、自らの持分だけであれば単独で譲渡ができます。
共有者の同意は不要なので覚えておきましょう。
過去問チャレンジ
FP2級試験対策として実際の過去問を見てみましょう。
不動産の売買契約に係る民法の規定に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。なお、特約については考慮しないものとする。
- 売買契約締結後、買主の責めに帰すことのできない事由により、当該契約の目的物の引渡債務の全部が履行不能となった場合、買主は、履行の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。
- 売主が種類または品質に関して契約の内容に適合しないことを過失なく知らないまま、売買契約の目的物を買主に引き渡した場合、買主は、不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、その不適合を理由として契約の解除をすることができない。
- 買主が売主に解約手付を交付した後、売買代金の一部を支払った場合、売主は、受領した代金を返還し、かつ、手付金の倍額を現実に提供しても、契約を解除することができない。
- 売買の目的物である建物が、その売買契約の締結から当該建物の引渡しまでの間に、台風によって全壊した場合、売主の責めに帰すことのできない事由であることから、買主は、売主に対して建物代金の支払いを拒むことはできない。
(2022年9月 FP2級学科)
それでは解説していきます。
❶適切。
設問のとおりです。債務不履行には”履行遅滞”と”履行不能”があり、”履行不能”の場合は事前の催告なく直ちに契約を解除できます。これに対して、”履行遅滞”の場合は、相当の期間を定めて契約の催告し、その期間内に履行されないときに契約を解除できます。違いを理解しておきましょう。
❷適切。
設問のとおりです。ただし、売主が不適合の事実を知りながら告げていなかった場合は、買主は1年という期間にしばられず売主に責任を追求することができます。
❸適切。
設問のとおりです。相手方が契約の履行に着手する前であれば、売主は解約手付の倍額を買主に支払うことで契約を解除できます。設問は買主が既に売買代金の一部を支払っており、履行に着手した状態であることから、手付金を倍額支払っても契約を解除することはできません。本設問の内容は宅地建物取引業法の講義で詳しく解説しています。
❹不適切。
物件の引渡しを受けるまでの間に、売主にも買主にも非がなく目的物が滅失したり毀損してしまった場合、買主は売主に対する代金支払いを拒むことができます。民法改正によりルールが変わった点なので、しっかりおさえておきましょう。
以上により、正解は❹となります。
不動産取引における留意事項まとめ
最後にFP2級の頻出ポイントをチェックしておきましょう。
- 契約不適合責任は、買主が知った日から1年以内に通知が必要
➡︎引渡しから2年以内に限定する特約が可能(宅地建物取引業法)
➡︎新築住宅の構造上主要な部分への欠陥は10年間(住宅品質確保促進法) - 履行遅滞はいきなり契約解除できず、まずは催告が必要
- 引渡し前の危険負担は売主が負担する
- 不動産広告の徒歩1分は80m
- 区分所有建物は登記上は内法面積、不動産広告は壁芯面積
- クーリング・オフは8日以内に書面で行う
今回は学習範囲は広かったけれど、FP2級試験で問われることは限定されています。各項目のポイントをしっかりおさえておこう!次回は「借地借家法」を解説します。
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ