【FP2級】損害保険の基礎

今回から損害保険の解説に入ります。まずは損害保険の基本をおさえておきましょう!
- 損害保険の基本原則を理解する
- 全部保険/一部保険/超過保険の違いを理解する
損害保険とは
損害保険とは、偶然の事故によって生じた財産上の損害を補償する保険です。
後ほど詳しく説明しますが、自動車事故による損害を保証する自動車保険や、自宅の火災による損害を保証する火災保険などが損害保険に当たります。
損害保険が社会的な制度として健全に機能するために、保険の契約や支払いにあたっては、次の2つの原則が適用されます。
- 利得禁止の原則(実損填補の原則)
- 給付・反対給付均衡の原則(公平の原則)
順番に見ていきましょう。
利得禁止の原則(実損填補の原則)
損害保険には「利得禁止の原則」という考え方があります。
- 保険会社が支払う保険金は、契約者が実際に被った損害額を限度とする(実損填補)という考え方
- 例えば、保険金額が3,000万円の契約であっても、実際の被害金額が1,000万円であれば、保険金は1,000万円までしか支払われない
これは、損害保険が“損害を穴埋めして元の状態に戻すこと”を目的としていためです。要するに、保険契約者が保険金で儲けることはできない仕組みになっています。
この点、契約時の保険金額が定額を支払われる生命保険とは異なるので注意しましょう。

利得禁止の原則は、実損填補の原則とも言われます。
給付・反対給付均等の原則(公平の原則)
次に「給付・反対給付均等の原則」を解説します。
- 契約者が支払う保険料(反対給付)の総額と、保険会社が支払う保険金(給付)の総額が均衡するように設計されなければならないという考え方
- 例えば、リスクの大きい契約者からは、リスクの小さい契約者よりも高い保険料をもらうことで、保険料(反対給付)と保険金(給付)の均衡を図る

分かったような、分からないような…
例えば、事務職員と建設作業員では、建設作業員の方がケガをする確率は高くなります。
そのため、建設作業員の方の保険料を高く設定し、保険料と保険金の均衡を保とうとしているわけです。
木造住宅とコンクリート造で火災保険料が異なったり、事故の発生回数によって自動車保険料が異なるのも同じ考え方です。

給付・反対給付均等の原則は、公平の原則とも言われます。
全部保険・超過保険・一部保険
損害保険では、保険契約を結ぶ際に設定する「保険金額」と保険の対象となるものの「保険価額」の関係によって、事故が起きた際の保険金の支払い方が変わってきます。
これは、損害保険の仕組みを理解する上で、最も重要な概念の一つです。
詳しい解説に入る前に、まずは以下の用語を理解しておきましょう。
全部保険
全部保険とは、保険価額と保険金額が等しい状態をいいます。
例えば、保険価額300万円の車に対して、保険金額300万円の自動車保険に加入しているイメージです。
全部保険の状態で事故が発生した場合は、保険金額を上限として損害額の全額が支払われます。
超過保険
超過保険とは、保険金額が保険価額よりも高い状態をいいます。
例えば、保険価額300万円の車に対して、保険金額500万円の自動車保険に加入しているイメージです。
損害保険は「利得禁止の原則」が適用されるため、設定した保険金額が高くても、保険金は保険価額(真の価値)を上限として支払われます。
つまり、上記のケースでは事故により自動車が全損したとしても、支払われる保険金は300万円が限度ということです。

超過保険では保険料をムダに払っていることになるので、適正な保険金額に見直す必要があるでしょう。
一部保険
少しだけ分かりづらいのが一部保険です。
一部保険とは、保険金額が保険価額よりも低い状態をいいます。
例えば、保険価額300万円の車に対して、保険金額150万円の自動車保険に加入しているイメージです。
この時、仮に自動車事故で車が破損して修理代に150万円がかかる場合、保険金はいくらもらえるでしょう?

150万円の保険に入ってるんだから、全額もらえるんじゃないか?

残念!この場合は75万円までしかもらえないんです。
一部保険では、比例てん補(ひれいてんぽ)という考え方により、保険価額に対する保険金額の割合に応じて保険金の支払額が計算されます。
上記のケースでは、保険価額300万円の50%に当たる150万円しか保険をかけていなかったので、実際の損額額の50%(150万円×50%=75万円)までしか、保険金は受け取れないことになります。

このように、一部保険では十分な備えにはならず、適切な保険金額に見直すことも重要です。
3パターンのまとめ
最後に全部保険/超過保険/一部保険の違いを整理しておきましょう。
- 全部保険:保険価額=保険金額
- 超過保険:保険価額<保険金額
〜保険金額がどんなに大きくても、保険価額を超える保険金は支払われない。 - 一部保険:保険価額>保険金額
〜保険価額に対する保険金額の割合に応じて保険金が支払われる。

今回の学習はここまでです。次回は火災保険を開設します。

