【FP2級】相続税の計算〜遺産に係る基礎控除額と税額控除
今回は相続税の計算方法を学習していきます。全体の流れをざっくり理解して、頻出ポイントを押さえるようにしましょう!
- 相続税算出までの流れを理解する
- 遺産に係る基礎控除額が計算できるようになる
- 相続税の2割加算と各種税額控除を理解する
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ
相続税算出までの流れ
はじめに言っておくと、相続税の算出方法はひじょーに複雑です。
簡単に理解できるものではありません。
そんなこと言われたら、やる気がなくなるんだが・・・
でも安心してください。
FP2級試験では詳細な知識を問われることはないため、試験のポイントだけ押さえて全体の流れはざっくり理解しておけば大丈夫です。
早速全体の流れを見ていきましょう。
まずは被相続人の財産から、課税価格の合計額を算出します。
課税価格の合計額は次のようにして求めます。
- 加算するもの
本来の相続財産、みなし相続財産、相続開始前3年以内の贈与財産、相続時精算課税制度による贈与財産 - 減算するもの
非課税財産、債務、葬式費用
課税遺産総額から遺産に係る基礎控除額を差引き、「課税遺産総額」を算出します。
課税価格の合計額ー遺産に係る基礎控除額(※)=課税遺産総額
(※)遺産に係る基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
課税遺産総額を法定相続分に沿って按分した場合の、各相続人の税額を算出します。
たとえば、課税遺産総額が1億円、法定相続人が妻と長男、次男の場合、妻が5,000万円、長男・次男が2,500万円ずつ相続したものとして、各人の相続税額を算出するということです。
その後、各人の相続税額を合計して「相続税の総額」を求めます。
❶妻の相続税額:妻の法定相続分×税率ー控除額
❷長男の相続税額:長男の法定相続分×税率ー控除額
❸次男の相続税額:次男の法定相続分×税率ー控除額
➡︎❶+❷+❸=相続税の総額
※FP試験では税率や控除額を覚える必要はありません(税率表は問題用紙に載っています)。
相続税の総額を実際に取得した課税価格の割合に応じて各相続人に振り分けます。
たとえば、相続税の総額が5,000万円だったとして、相続人Aさんが全体の40%の財産を取得していた場合、5,000万円×40%=2,000万円がAさんの負担になります。
最後に相続人ごとに相続税の加算や控除を行って、各人の納付税額が決定します。
- 各人の相続税に加算するもの
相続税額の2割加算 - 各人の相続税から控除するもの
贈与税額控除、配偶者に対する相続税額の軽減、未成年者控除、障害者控除
相続税の加算と控除は、後ほど詳しく解説します!
以上が相続税算出までのざっくりとした流れです。
繰り返しになりますが、現時点ではなんとなく流れを理解して入れば十分です。
FP2級試験の頻出ポイントは、この後分かりやすく解説していきます。
遺産に係る基礎控除額
遺産に係る基礎控除額の計算式
ここからはStep2で触れた「遺産に係る基礎控除額」を詳しく解説します。
まずは以下の計算式をしっかり覚えておきましょう。
たとえば、被相続人に妻と3人の実子がいた場合、法定相続人は4人になりますね。
この場合、遺産に係る基礎控除額は3,000万円+600万円×4人=5,800万円となります。
つまり、仮に課税価格の合計額が8,000万円であれば、8,000万円ー5,800万円=3,200万円が課税遺産総額となるということです。
では、課税価格の合計額が4,000万円であった場合はどうでしょう。
この場合、課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額未満であるため、課税遺産総額はゼロとなります。
要するに相続税は発生しないということです。
よく「相続税は金持ちの税金だ!」なんて言われるとおり、課税価格の合計額が少なければ相続税は無縁ということですね。
「法定相続人の数」の考え方
遺産に係る基礎控除額の計算式はシンプルですが、分かりにくいのが「法定相続人の数」の考え方です。
次のポイントを押さえておきましょう。
- 相続を放棄した者も法定相続人の数にカウントする
- 普通養子は2人までカウントできる
- 実子がいる場合、普通養子は1人までしかカウントできない
- 特別養子・連れ子養子は何人でもカウントできる(実子として扱う)
あれ?どこかで見たことがあるぞ?
よく気がついたね!実は生命保険金の非課税限度額と考え方は同じなんだ!忘れてしまった人は復習しておこう。
相続税の2割加算と税額控除
ここからはSTEP4で解説した、各人の相続税に加算するもの、控除するものを学習します。
相続税の2割加算
加算するもので唯一押さえておくべきなのが“相続税の2割加算”です。
「相続税の2割加算」とは、相続や遺贈により財産を取得した人が被相続人の1親等の血族または配偶者以外であった場合、その人の相続税額を2割増しにする制度です。
1親等以外の血族には、兄弟姉妹や孫などが該当します。
このうち孫に関しては、次の点がFP2級で問われるため、正しく理解しておきましょう。
- 被相続人の養子となった孫(孫養子)・・・2割加算の対象
- 代襲相続人の孫・・・2割加算の対象外
配偶者に対する相続税額の軽減
ここからは相続税から控除できるものを学習していきます。
まず“配偶者に対する相続税額の軽減”ですが、これが最も重要です。
「配偶者に対する相続税額の軽減」とは、その名のとおり、配偶者に限定して特別に相続税を軽減してあげようという制度です。
具体的には、次のような軽減措置を受けることができます。
配偶者は法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額まで、相続や遺贈により財産を取得しても相続税がかからない
要するに、配偶者が取得した財産が1億6,000万円以内であれば無条件に相続税はゼロ、それを超えても法定相続分までの金額であれば相続税はゼロになるということです。
被相続人の財産は、ある意味で配偶者と共同で築き上げた財産と言えるわけですから、配偶者に対する相続税は軽減してあげようという趣旨の制度になります。
重要なのは、婚姻期間の条件は無いということです。
つまり、結婚してすぐに相続が発生したとしても、適用を受けることができます。
ただし、内縁の妻は対象外なので注意しましょう。
「贈与税の配偶者控除」と混同しないようにしよう!
贈与税額控除
次に“贈与税額控除”を解説します。
相続開始前3年以内の贈与財産と、相続時精算課税制度を利用した贈与財産は、相続税の課税価格の合計額を算出する時(STEP2の時)に加算されます。
しかし、これらの財産は既に贈与税を支払い済みであり、相続税まで課せられると税金が二重でかかってしまいますよね。
このため、既に支払った贈与税の金額分は相続税の金額から差し引くことができます。
これが「贈与税額控除」です。
未成年者控除
「未成年者控除」とは、相続人が20歳未満の法定相続人である場合、その者の相続税額から一定金額を控除できる制度です。
相続人が15歳の法定相続人であれば、(18歳ー15歳)×10万円=30万円が相続税額から控除できるということです。
ちなみに「相続時の年齢」は、1年未満の期間があるときは切り捨てして計算します。例えば、未成年者の年齢が15歳9か月の場合、9か月を切り捨て15歳で計算するということです。
障害者控除
“障害者控除”とは、相続人が障害者の法定相続人である場合、その者の相続税額から一定金額を控除できる制度です。
相続人が30歳の障害者で法定相続人の場合、(85歳ー30歳)×10万円=550万円が相続税額から控除できるということです。
1年未満の期間の考え方は「未成年者控除」と同じです。
相次相続控除
“相次相続控除(そうじそうぞくこうじょ)”とは、10年以内に2回以上相続が発生した場合に、1回目の相続税の一定金額を2回目の相続税から控除できる制度です。
外国税額控除
“外国税額控除”とは、外国の財産を相続した人が、既に外国で相続税に相当する税金を課せられている場合に、その分を日本の相続税から控除できる制度です。
二重課税を防ぐための制度になります。
相次相続控除と外国税額控除の計算方法を覚える必要はありません。概要だけ理解しておけばOKです!
まとめ
最後にFP2級対策として今回のポイントを整理しておきましょう。
- 遺産に係る基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
※法定相続人のカウント方法は生命保険の非課税金額と同じ - 孫養子は「相続税の2割加算」の対象
- 代襲相続人である孫は「相続税の2割加算」の対象外
- 配偶者は、法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額までは相続税がかからない
- 贈与税額控除の対象は、相続開始前3年以内の贈与財産と、相続時精算課税制度を利用した贈与財産
- 未成年者控除額=(20歳ー相続時の年齢)×10万円
- 障害者控除額=(85歳ー相続時の年齢)×10万円
今回の学習はここまでです!少しボリュームがあったけど、理解できたかな?次回は「相続税の申告と納付」を解説します。
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ