【FP2級】不動産の投資判断と証券化〜DCF法・NPV法・IRR法・NOI利回り、J-REIT
今回は不動産分野の最終回!テーマは不動産の投資判断と証券化です。DCF法やNOI利回りなどを分かりやすく解説していきます。
- DCF法などの投資判断指標を理解する
- レバレッジ効果とDSCRを理解する
- 単純利回りとNOI利回りの違いを理解する
- 不動産の証券化とJ-REITを理解する
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ
不動産の投資判断
近年はサラリーマンによるワンルームマンションへの投資など、不動産投資が身近になってきました。
しかし不動産投資には、将来期待した収益が得られるかどうか、事前に採算分析を行うことが欠かせません。
ここからはFP2級試験でおさえておくべき、投資判断の指標を解説していきます。
DCF法
DCF法とは
採算判定の代表的な手法が“DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)”です。
DFC法とは、不動産が保有期間中に生み出す純収益と保有期間終了後の売却価格(復帰価格)を現在価値に割り引いて、投資対象不動産の収益価格を求める手法です。
ぜんぜん意味がわからん!そもそも現在価値ってなんだ?
たとえば、今もらえる100万円と1年後にもらえる100万円では価値が異なります。
100万円を年利3%で運用すれば1年後には103万円になるわけですから、1年後ではなく今すぐ100万円をもらった方が有利ということになります。
逆にいえば、年利3%で運用できるなら、1年後にもらえる103万円は現在の100万円と同じ価値といえますよね。
このように、将来の価値を現在の価値に割り引いたものを現在価値といいます。
上の例では、103万円が将来価値、100万円が現在価値ということになります。
DCF法による収益価格の計算
たとえば毎年500万円の収益を生み出す不動産を3年間保有し、3年経過後に6,500万円で売却する場合を考えてみましょう。
単純に収益と売却価格を足すと8,000万円(500万円×3+6,500万円)となりますが、DCF法による収益価格は現在価値で算出されるため、8,000万円よりも低く評価されます。
では、具体的にどうやってDCF法にもとづく収益価格を算出するのか、過去問を解きながら考えてきましょう。
複雑そうに見えるけど実は簡単だから安心してください!
毎期末に500万円の純収益が得られる投資用不動産がある。この不動産を3年保有し、3年経過後に6,500万円で売却するとした場合、DCF法によるこの不動産の収益価格を求める算式として、正しいものはどれか。なお、保有期間中の純収益は同額とし、売却に要する費用は考慮外とする。また、割引率を年4%とし、下表の複利現価率を参考とすること。
<年4%の複利現価率>
期間(年) | 1年 | 2年 | 3年 |
複利現価率 | 0.962 | 0.925 | 0.889 |
- 500万円×3×0.889+6,500万円×0.889=7,112万円
- 500万円×0.962+500万円×0.925+500万円×0.889+6,500万円×0.889=7,166万5,000円
- 500万円×3×0.962+6,500万円×0.889=7,221万5,000円
- 500万円×0.962+500万円×0.925+500万円×0.889+6,500万円=7,888万円
(2016年1月 FP2級学科)
DCF法による収益率(現在価値)は、将来価値に複利現価率を乗じて求めます。
- 1年後の純収益:500万円×0.962
- 2年後の純収益:500万円×0.925
- 3年後の純収益:500万円×0.889
- 3年後の売却価格(復帰価格):6,500万円×0.889
これらの合計が、DCF法による収益価格となります。
したがって、正解は❷となります。
ほうほう。たしかに難しくはないぞ!
NPV法(正味現在価値法)
次に“NPV法(正味現在価値法)”を解説します。
NPV法とは、DCF法にもとづく収益価格から投資予定額を差し引き、プラスであれば投資価値ありと判断し、マイナスであれば投資価値なしと判断する方法です。
たとえば、DCF法による収益価格5,000万円、投資予定額が4,000万円の不動産であれば、投資価値ありと判断するわけです。
反対に、DCF法による収益価格5,000万円、投資予定額が6,000万円の不動産は、投資価値なしと判断します。
“NPV法”といわれると一見むずかしそうに見えますが意外と単純です。
IRR法(内部収益率法)
続いて“IRR法(内部収益法)”を解説します。
IRR法では、まずDCF法にもとづく収益価格が投資額と同じになる”内部収益率”を求め、“内部収益率”が”期待収益率”を上回っていれば投資価値ありと判断し、下回っていれば投資価値なしと判断します。
期待収益率とは、投資家が「これくらいのリターンは期待できるだろう」と考える平均的な収益率のことです。
イメージがわきづらいかもしれませんが、FP2級試験対策としては、次のポイントだけ押さえておけば大丈夫です。
レバレッジ効果とDSCR
レバレッジ効果
不動産投資では借入金を活用することがあります。
むしろ、全額自己資金で調達できることの方が稀で、自己資金と借入金を組み合わせるケースが一般的といえるでしょう。
このように、自己資金に借入金を組み合わせることで自己資金に対する収益の上昇が見込めることがあります。このような効果のことを“レバレッジ効果”といいます。
レバレッジ効果が期待できるのは、投資に対する収益率が借入金の金利を上回っている場合です。
たとえば「金利3%でも収益率10%で回せるなら、借りた方が良いよね」という話です。
このような場合は積極的に借入金を活用することが考えられます。
DSCR(借入金償還余裕率)
“DSCR(借入金償還余裕率)”とは、年間の元利金返済額に対して、どの程度キャッシュフローに余裕があるかを見る指標です。
具体的には以下の計算式で求めます。
- DSCR(倍) = 年間キャッシュフロー ÷ 年間元利金支払額
キャッシュフローが必要返済額の何倍あるかをみます。
DSCRの値が大きいほど返済に余裕があるということになります。
単純利回りとNOI利回り(純利回り)
不動産投資の収益性を評価する尺度として、利回りという考え方があります。
FP2級では“単純利回り”と“NOI利回り(純利回り)”を理解しておきましょう。特に”NOI利回り”は重要です。
- 単純利回り = 年間の総収入 ÷ 総投資額
- NOI利回り = 年間の純収益(総収入ー諸経費) ÷ 総投資額
要するに、収入ベース(経費を加味しない)が”単純利回り”、収益ベース(経費を加味する)が”NOI利回り”です。
この違いはしっかり押さえておきましょう。
不動産の証券化とJ-REIT
不動産の証券化
不動産の証券化とは、不動産から生み出される収益を裏付けとした証券を発行し、不特定多数の投資家にその証券を購入してもらうことで資金を調達する手法です。
土地所有者は投資家から資金を得る代わりに、不動産の賃料収入などを配当として分配します。
不動産の証券化は、土地保有者・投資家それぞれにメリットがあります。
- 土地所有者にとっては、投資家から広く資金を調達できる
- 投資家にとっては、少額から不動産に投資できる
不動産投資信託(J-REIT)
不動産投資信託(J-REIT)とは、不動産を証券化した商品の1つです。
主にオフィスビルや大型のショッピングセンターなどを投資対象としており、そこから得られる賃料収入や売買益を投資家に配当として分配します。
不動産投資信託(J-REIT)は金融商品取引所に上場されており、証券会社を通じて誰でも売買することができます。このため、不動産投資信託(J-REIT)は流動性が高い商品と言えるでしょう。
不動産投資信託(J-REIT)の分配金や売却益は、配当所得として課税されます。
不動産所得ではなく配当所得です。ひっかけ問題に注意しましょう。
過去問チャレンジ
それではFP2級試験対策として、実際の過去問を見てみましょう。
不動産の投資判断の手法等に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- DCF法は、連続する複数の期間に発生する総収入および復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計して対象不動産の収益価格を求める手法である。
- NPV法(正味現在価値法)による投資判断においては、対象不動産から得られる収益の現在価値の合計額が投資額の現在価値の合計額を上回っている場合、その投資は投資適格であると判定する。
- 借入金併用型の不動産投資において、レバレッジ効果が働いて自己資金に対する収益率の向上が期待できるのは、借入金の金利が総投下資本に対する収益率を上回っている場合である。
- NOI利回り(純利回り)は、対象不動産から得られる年間の総収入を総投資額で除して算出される利回りであり、不動産の収益性を測る指標である。
(2022年5月 FP2級学科)
それでは解説していきます。
❶不適切。
DCF法とは、不動産が保有期間中に生み出す純収益と保有期間終了後の売却価格(復帰価格)を現在価値に割り引いて、投資対象不動産の収益価格を求める手法です。設問では総収入としている点が誤りです。
❷適切。
設問のとおりです。NPV法はDCF法にもとづく収益価格から投資予定額を差し引き、プラスであれば”投資価値アリ”と判断し、マイナスであれば”投資価値ナシ”と判断する方法です。
❸不適切。
レバレッジ効果が期待できるのは、借入金の金利が総投下資本に対する収益率を”下回っている場合”です。設問は”上回っている場合”という記載が誤りです。金利が高いほどレバレッジ効果は期待できなくなります。
❹不適切。
NOI利回りとは、年間の純収益(総収入ー諸経費)を総投資額で除して算出される利回りのことです。設問では総収入としている点が誤りです。設問❶と同様に、総収入と純収益の違いはしっかりおさえておきましょう。
以上により、正解は❷となります。
不動産分野の解説はこれで終了です!全19回にわたり、大変おつかれさまでした。ぜひ何度も復習して試験に臨んでくださいね。
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ