【FP2級】借地借家法〜借地権と借家権
今回のテーマは借地借家法です。長丁場になるけどFP2級試験では毎回出題されます。借地権と借家権のポイントを正確におさえよう!
- 普通借地権と3つの定期借地権を理解する
- 普通借家権と定期借家権を理解する
※借地借家法からは2問出題されることもあり、今回の講義は極めて重要です。ぜひ何回も復習していただくことをおすすめします。
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借地借家法とは
あなたが土地や家を借りているとします。
そんなとき、いきなり地主や大家さんに「出て行け!」と言われたら大変です。路頭に迷ってしまいますよね。
このようにどうしても弱い立場になってしまう借地人(土地を借りている人)や賃借人(家を借りている人)を保護するための法律が「借地借家法」です。
借地借家法では、地主と借地人、大家と賃借人の契約に関するルールを定めています。
読み方は「しゃくちしゃっかほう」または「しゃくちしゃくやほう」。どちらでもOKです!
借地権
借地権とは
土地の権利には所有権と借地権があります。
土地の借地権とは、地主から土地を借りて建物を建てるなど、一定期間その土地を使える権利のことです。土地の所有権はあくまで地主にあり、借主は土地を借りる見返りとして地代を支払うことになります。
住宅のチラシをよく見ると、土地の権利が所有権なのか借地権なのかが記載されています。
借地権は所有権の2/3程度の金額で購入することができるため、初期投資が少なくて済むのがメリットです。
借地権を第三者に譲渡することもできます。
ただし、借地権を譲渡するときは原則として地主の承諾が必要であることに注意が必要です。
また、借地権は登記をすることもできます。
仮に借地権を登記していなくても、借地上の建物さえ登記していれば第三者に対抗できます。
第三者に対抗できるとは、要するに「この土地の借地権は自分のものだ!」と第三者に主張できることでしたね。忘れてしまった方は以下の講義で復習しておきましょう。
さて、この借地権には「普通借地権」と「定期借地権」の2つがあります。
順番に見ていきましょう。
普通借地権
まずは普通借地権です。
借地借家法では、普通借地権の契約期間のルールを定めています。
- 初回の存続期間は30年以上
※30年未満の期間を定めた場合/期間を定めなかった場合 ➡︎ 存続期間30年となる - 1回目の更新は20年以上
- 2回目以降の更新は10年以上
借地人の権利を守るために、普通借地権は30年より短い契約は許されません。
それより短い期間を定めたり、存続期間を定めなかった場合は30年の契約とみなされます。
- 普通借地権の存続期間について、30年より短い期間を定めた場合はその契約は無効となる。○か×か?
-
答えは「×」です。30年より短い期間を定めたり、存続期間を定めなかった場合は、30年の契約とみなされ、契約が無効になるわけではありません。
借地人の権利を守るため、地主は正当事由がない限り、契約の更新を拒むことができません。
存続期間が満了したときに建物があれば、原則としてこれまでと同条件で契約が更新されることになります(建物がない場合は更新されません)。
なお、建物があるにも関わらず契約を更新しない場合、借地人は地主に対して、建物を時価で買い取るように請求することができます。このような権利を「建物買取請求権」といいます。
- 契約終了時に建物あり ➡︎ 原則更新 ➡︎ 更新されないときは建物買取請求権
- 契約更新時に建物なし ➡︎ 更新されない
普通借地権は居住用の土地だけでなく、事業用の土地にも使えます。
また、契約方法は書面でも口頭でもOKです。
このあたりは、これから学習する定期借地権と異なるので注意しよう!
定期借地権
定期借地権とは契約の更新がない借地権のことです。
定期借地権には大きく次の3種類があります。
❶一般定期借地権
一般定期借地権は、建物の用途に特に制限はなく、居住用の土地にも事業用の土地にも設定することができます。
存続期間は50年以上、契約は書面行う必要があります(公正証書でなくてもOK)。
❷事業用定期借地権
事業用定期借地権は、建物用途が事業用に限定されます。
建物の一部でも居住用に利用する場合、事業用定期借地権を設定することはできません。
契約期間は10年以上50年以内、契約は必ず公正証書で行います。
- 居住の用に供する賃貸マンションの事業運営を目的とする場合、当該賃貸マンションに事業用定期借地権を設定することができる。○か×か?
-
答えは「×」です。事業として賃貸事業を営んでいても、対象物件が居住用の場合は事業用定期借地権を設定することはできません。同様に、法人が従業員向けの社宅として利用する建物にも事業用定期借地権は設定できません。頻出するひっかけ問題なので注意しましょう。
❸建物譲渡特約付定期借地権
建物譲渡特約付定期借地権は、借地権の存続期間が満了して土地を返還する際に、残っている建物を地主に譲渡(売却)することを定めた借地権です。
用途に制限はなく、居住用でも事業用でもOKです。
存続期間は30年以上、契約方法に制限はなく口頭でも契約は成立します。
普通借地権と定期借地権まとめ
FP2級試験で頻出なのは、各借地権の存続期間と契約方式です。
下の表の内容は必ず覚えておきましょう。
存続期間 | 契約方式 | |
---|---|---|
普通借地権 | 30年以上 | 制限なし |
一般定期借地権 | 50年以上 | 書面(公正証書以外も可)または電磁的記録 |
事業用定期借地権 | 10年以上50年未満 | 公正証書 |
建物譲渡特約付定期借地権 | 30年以上 | 制限なし |
この表だけで1点取れることもあります!
面倒だが覚えるしかないようだな…
過去問チャレンジ
FP2級試験対策として、借地権に関する過去問を見てみましょう。
借地借家法に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、本問においては、同法第22条から第24条の定期借地権等以外の借地権を普通借地権という。
- 普通借地権の設定契約において、居住以外の用に供する建物の所有を目的とする場合、期間の定めがないときは、存続期間は30年となるが、契約で期間を50年と定めたときは、存続期間は50年となる。
- 普通借地権の存続期間が満了した時点で借地上に建物が存在しない場合、借地権者が借地権設定者に契約の更新を請求したときは、従前の契約と同一の条件で契約は更新されたものとみなす。
- 借地権者の債務不履行により普通借地権の設定契約が解除された場合、借地権者は借地権設定者に対し、借地上の建物を時価で買い取るべきことを請求することができる。
- 借地権者は、普通借地権について登記がされていない場合において、当該土地上に借地権者の名義で登記がされている建物が滅失したときは、滅失後3年以内にその旨を当該土地上の見やすい場所に掲示すれば、当該借地権を第三者に対抗することができる。
(2022年5月 FP2級学科)
それでは解説していきます。
❶適切。
設問のとおりです。普通借地権の初回の存続期間は30年以上で定めなければなりません。30年以上なので、設問のとおり50年と定めれば50年となります。もし30年未満の期間を定めた場合は、期間の定めのない契約となります。
なお、普通借地権の初回の存続期間は30年以上ですが、1回目の更新は20年以上、2回目以降の更新は10年以上の期間を定めなければなりません。
❷不適切。
普通借地権の存続期間が満了したときに建物があれば、これまでと同条件で契約が更新されます。設問は建物がない場合なので契約は更新されません。
なお、建物があるにも関わらず契約を更新しない場合、借地人は地主に対して、借地上の建物を時価で買い取るように請求することができます。このような権利を”建物買取請求権”といいます。
❸不適切。
建物買取請求権は、借地権の契約が更新されないときに借地権者を保護するための権利です。借地権者自身の債務不履行により契約解除となった場合は、建物買取請求権を行使することはできません。
❹不適切。
借地権の登記または借地上の建物の登記がない場合、借地権者は第三者に対抗することはできません。しかしそれでは、建物が何らかの理由で滅失してしまった場合に借地権を失ってしまうかもしれません。このため、建物滅失後2年以内にその旨を土地上の見やすい場所に掲示すれば、借地権を第三者に対抗することができるという例外措置があります。設問は滅失後3年以内という記載が誤りです。
以上により、正解は❶となります。
選択肢❹が難問でした!余裕があれば覚えておきましょう。
借家権
次に借家権を解説していきます。
借家権とは、家賃を支払って建物を使用する権利のことを指します。
いわゆる賃貸というもので、毎月●万円をいった家賃を支払うかわりに、建物に住むことができるわけです。
借地借家法上の借家権には、「普通借家権」と「定期借家権」があります。
順番に見ていきましょう。
普通借家権
普通借家権の存続期間や契約更新のルールは以下のとおりです。
- 契約方法は書面でも口頭でもOK
- 契約の存続期間は1年以上
※1年未満の期間を定めた場合/期間を定めなかった場合 ➡︎ 期間の定めのない契約となる - 契約は原則として同一条件で更新される
➡︎貸主が更新を拒絶するには正当事由が必要。
普通借家権の契約は書面でも口頭でも成立します。
契約の期間は1年以上で定めなければなりません。1年未満の契約期間を定めると「期間の契約の定めのない契約」として扱われます。
この点は普通借地権とは異なるため注意が必要です。
続いて契約の更新ですが、賃貸人(貸主)は正当事由がなければ契約の更新を拒むことはできません。
また、契約期間満了の1年前から6か月前までに賃借人(借主)に通知する必要があります。
賃借人としては、急に出て行けと言われても困ってしまいますからね。賃借人の生活を守るために早めの通知を義務付けているわけです。
一方、賃借人の方から契約を解除したいというケースもあるでしょう。
その場合、賃貸人(貸主)に事前通知する必要はありますが、正当事由は求められません。
この違いはしっかり整理しておきましょう。
- 賃貸人(貸主)が更新を拒むとき ➡︎ 正当事由が必要
- 賃借人(借主)が更新を拒むとき ➡︎ 正当事由は不要
定期借家権
続いて定期借家権を解説します。
定期借家権とは、契約更新がない借家権です。
定期借地権には3種類がありましたが、定期借家権に種類はありません。
- 契約は必ず書面で行う(公正証書ではなくてもOK)
- 用途は居住用でも事業用でもOK
- 契約期間に制限はなく、1年未満の契約でもOK
普通借家権とは異なり、1年未満の契約も認められています。
マンスリーマンションやウィークリーマンションを想像するとイメージが湧くと思います。
もともと更新がないわけですから、期間満了時の契約終了について正当事由は求められません。
ただし、賃貸人は賃借人に対して、以下のとおり説明や通知をしなければなりません。
- 契約前の説明
契約の更新がなく、期間満了により契約が終了することを書面を交付して説明しなければならない
➡︎ 説明を怠ると普通借家契約になる - 契約期限前の通知
契約期限終了の1年前〜6か月前に通知しなければならない
➡︎ 通知を怠ると、賃借人は現在の条件で建物を使用し続けられる
※もともとの契約期間が1年未満の場合は通知不要
更新はありませんが、契約終了後に賃貸人と賃借人が合意して、改めて定期借家契約を結ぶのはOKです。
定期借家契約では、特約がない限り賃貸人からの中途解約はできません。
しかし、賃借人からの中途解約は以下の条件を満たせば認められます。
- 居住用の建物で床面積が200㎡未満であること(事業用や広すぎる建物はダメ)
- 転勤、療養、親族の介護など、やむを得ない事情があること
- 中途解約日の1か月前までに申し出ること
なお、定期借家契約は契約の更新がないため、契約の満了により建物の賃貸借が終了します。
ただし、契約の当事者間で合意があれば、定期借家契約を再契約することができます。
普通借家権から定期借家権への切り替え
賃貸人からすると、普通借家契約は解約が難しく、なかなか自由に建物を使えないことから、定期借家契約に変更したいというケースがあるかもしれません。
一方で、賃借人からすると普通借家権から定期借家権への切替えは、不利益な契約変更になってしまいます。
このため、普通借家権から定期借家権への切替えは、建物が居住用の場合は認められていません。仮に賃貸人と賃借人で合意してもダメです。
ただし、建物が事業用の場合は両者の合意により、普通借家契約から定期借家契約への切替えが認められています。
原状回復義務
原状回復義務とは、契約終了時に、賃借人が部屋を入居時の状態に戻して返還する義務のことです。
壊した部屋はしっかり修繕してから大家さんに返しなさい、ということです。
ただし、通常の使用による住居の損耗や経年変化は、原則として原状回復義務を負いません。
こうした通常の損耗は家賃に織り込み済だとみなされるからです。
- 賃借人は賃貸借契約終了時に原状回復義務を負う
- ただし、通常の使用による損耗や経年劣化は原状回復義務を負わない
造作買取請求権(ぞうさくかいとりせいきゅうけん)
造作買取請求権とは、賃貸人の同意を得て建物に取り付けた造作物(畳や建具、空調設備など)については、期間満了時に賃貸人に時価で買い取るよう請求できる借主の権利です。
賃借人が取り付けたエアコンを退去時に時価で買い取ってもらえるわけです。
普通借家権でも定期借家権でも認められます。
造作買取請求権は、特約で排除することも可能です。
つまり、あらかじめ造作買取請求権を排除する特約を結んでいた場合は、賃借人は造作買取請求権を行使することはできません。
借地借家法は原則として借主に不利になる特約は無効になるけど、造作買取請求権は例外です。
賃料増減請求権
賃料相場は市場環境などに応じて変わるものです。
このため借家契約の締結後であっても、賃貸人・賃借人ともに、市場環境などに応じて賃料の増額や減額を請求することができます。このような権利を“賃料増減請求権”といいます。
ただし、賃貸人・賃借人の合意のもと、賃料を増額しない特約を結ぶことは認められています。一方、一定期間賃料を減額しない特約を結ぶことは原則として認められていません。
借地借家法は立場の弱い賃借人(借主)を守るための法律であり、賃借人に不利な特約は基本的に認めていないからです。
ただし、定期借家契約は例外です。
定期借家権では例外的に一定期間賃料を減額しない旨の特約を結ぶことも認められています。
この点はFP2級試験で問われることがあるので、しっかり整理しておきましょう。
普通借家権と定期借家権まとめ
最後に普通借家権と定期借家権の違いを整理しておきましょう。
契約期間 | 更新 | 契約方法 | |
---|---|---|---|
普通借家権 | 1年以上 | あり | 制限なし |
定期借家権 | 自由 | なし | 書面または電磁的記録 |
過去問チャレンジ
FP2級試験対策として、借家権に関する過去問を見てみましょう。
借地借家法に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。なお、本問においては、同法第38条による定期建物賃貸借契約を定期借家契約といい、それ以外の建物賃貸借契約を普通借家契約という。また、記載された特約以外のものについては考慮しないものとする。
- 普通借家契約において存続期間を1年未満に定めた場合、その存続期間は1年とみなされる。
- 期間の定めがある普通借家契約において、賃借人は、正当の事由がなければ、賃貸人に対し、更新しない旨の通知をすることができない。
- 定期借家契約は、もっぱら居住の用に供する建物に限られ、事業の用に供する建物については締結することができない。
- 定期借家契約において、その賃料が、近傍同種の建物の賃料に比較して不相当となっても、賃貸借期間中は増減額させないこととする特約をした場合、その特約は有効である。
(2022年9月 FP2級学科)
それでは解説していきます。
❶不適切。
普通借家権の契約の期間は1年以上で定めなければなりません。1年未満の契約期間を定めると「期間の契約の定めのない契約」として扱われます。なお、定期借家権では1年未満の契約を定めることもできます(マンスリーマンションの契約など)。
❷不適切。
賃借人が契約更新を拒む際に正当事由は求められません。一方、賃貸人(貸主)が契約更新を拒む場合は正当事由が求められます。借地借家法は賃借人を守るための法律であり、賃借人には優しく、賃貸人(貸主)には厳しいルールが多くなっています。
❸不適切。
定期借家契約は事業用の建物も対象になります。居住用に限定されるものではありません。
❹適切。
設問のとおりです。賃料を減額しない旨の特約は賃借人に不利な特約となるため、普通借地権・定期借地権・普通借家契約では認められません。ただし、例外的に定期借家契約では同特約を結ぶことが認められています。
以上により、正解は❹となります。
借地借家法、けっこう長かったな…
おつかれさまでした!普通借地権と定期借地権、普通借家契約と定期借家契約の違いは理解できたでしょうか?1回で覚えるのは大変なので、何度も復習しましょう。次回は”区分所有法”を解説します。
試験対策には“直前対策note(2025年1月試験対応)”がおすすめだぞ