不動産登記とは
登記記録は誰でも閲覧できる!
不動産登記とは、土地や建物がどこにあって、どれくらいの広さがあって、誰が持っているのかといった情報を記録することです。
登記記録は登記所(法務局)で行い、誰でも閲覧することができます。
誰でも閲覧できるようにすることを「公示」といいます。
例えば「あの豪邸の所有者を知りたい!」と思えば、登記所(法務局)で数百円の印紙税を支払うだけで簡単に調べることができます。
また、住宅ローンを借りていれば登記記録に抵当権の情報も表示されるので、「隣のお宅、いくらの住宅ローンを組んだのかしら?」といった野次馬的な疑問もすぐに解決できてしまうわけです。
個人情報保護とは少し別世界の話ですね。
登記情報の閲覧は、オンライン(インターネット)でも可能です。
このように「登記記録は、不動産の所有者や権利関係者ではなくても、誰でも閲覧できる」というのはFP2級では超頻出ポイントなので必ずおさえておきましょう。
不動産登記簿には表題部と権利部がある
不動産登記簿(登記記録)は、所在地や広さなど不動産の物理的な概要を表示する「表題部」と、不動産に対する権利を表示する「権利部」に分かれています。
さらに「権利部」は、不動産の所有権を表示する「甲区」と、抵当権などの所有権以外の権利を表示する「乙区」に分かれます。
「百聞は一見にしかず」ということで、不動産登記簿のサンプルを見てみましょう。
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出展:法務省HP
上のサンプルは建物の登記記録です。
「表題部」には、土地の登記記録では所在・地番・地目・地積(面積)、建物の登記記録では構造・床面積などが表示されます。
ここで注意しなければならないのは、登記上の地番と住所は必ずしも一致しないということです。
登記記録は一筆の土地や建物ごとに作成されますが、見た目は一つの土地でも、実際は複数の地番の土地で構成されているといことはよくある話です。
ただ、これだと郵便物を送る時にどの地番へ送れば良いか困ってしまいますよね。そこで使われるのが住居表示法上の住所です。住所は地番ごとではなく建物単位で定められるので、郵送物を送る時はこちらが使われるわけです。
建物の床面積で出題されるのは、区分所有建物(分譲マンションなど)の床面積の表示の仕方です。次の点を整理しておきましょう。余談ですが、宅建の試験でも頻出です。
- 区分建物以外は、壁などの中心線で囲まれた面積(壁芯面積)で表示
- 区分建物は、壁などの内側線で囲まれた面積(内法面積)で表示
※ただし、マンションのパンフレットは壁芯面積で表示されています。
つまり、パンフレット上の面積>登記上の面積となるわけです。
次に、「表題部」と「表題部」で異なる点が登記義務の有無です。
「表題部」には登記義務があり、住宅を新築した場合は1か月以内に登記申請をしなければなりませんが、「権利部」にはそのような義務はありません。
ただし、実務的には第三者対抗要件(後ほど解説します)を備えたり、住宅ローンを借りる時に必要となるので、「権利部」にも登記するのが一般的です。
「権利部」の甲区と乙区の違いは少し紛らわしいので、次の表で整理しておきましょう。
甲区 | 所有権 | 所有権、仮登記、差押え など |
乙区 | 所有権以外 | 抵当権、地上権、借地権 など |
登記の効力
登記のメリットは第三者への対抗力
先ほど「表示登記は義務だけど、権利登記は義務ではない」という話をしました。
ではなぜ登録免許税を払ってまで「権利登記」をするのでしょうか。
大きな理由が、対抗力(第三者対抗要件)という法的な効力を発生させるためです。
対抗力とは、「この土地は俺のもんだ!」とか「この土地にはうちの銀行が抵当権を設定していますよ!」といったことを第三者に主張できる権利のことです。
対抗力について、よく例に出されるのが二重譲渡のケースです。
不動産の売主Aさん(悪い人)が、BさんとCさんそれぞれと売買契約をしたとします。この場合、BさんとCさんのどちらが優先されるかが問題になりますが、答えは先に登記をした方が「これは俺の土地だ!」と主張することができるわけです。
不動産登記に公信力はない!
一方で、不動産登記には「公信力」がありません。
公信力がないというのは、「登記上の表示を信頼して不動産の取引をした者は、たとえ登記の内容が異なっていても保護されない」ということです。
言い換えれば、「登記を信用しすぎず、自己責任で取引してください」ということですね。
例えば、Aさんが登記記録を信頼して登記上の所有者であるBさん(悪い人)から土地を購入した後に、真の所有者Cさんが現れ「真の所有者は私だから、土地を返してくれ!」と言われた場合、AさんはCさんに土地を返さなければならないということです。
先ほど、登記には第三者への対抗力はあると解説しましたが、Cさんは第三者ではなく当事者なので、AさんはCさんに対抗することはできないわけです。
重要ポイントなのでもう一度おさらいしておきましょう。
- 不動産登記をすることで第三者への対抗力を備えることはできるが、不動産登記自体に公信力はない(登記を信じるかは自己責任)
仮登記とは
仮登記とは登記を予約しておくこと
これまで説明してきた通常の登記(本登記)に対して、「仮登記」という制度があります。
仮登記とは、本登記を行うための手続上の条件が不備である場合や将来の権利変動のために登記上の順位を保全しておくための仮の登記で、言わば「登記の予約」です。
仮登記は必要な条件が整い次第、本登記に移行することができ、移行後の順位は仮登記の順位によります。
誰かの仮登記がある状態で別の人が本登記を行うこともできますが、仮登記をした日の方が先であれば仮登記が本登記に優先します。
登記所(法務局)で閲覧できる資料
登記所には、登記記録の他にも様々な土地・建物関係の資料が備え付けられています(インターネットでも閲覧可)。
公図、地図(14地図)、地積測量図、建物図面の4つをおさえておきましょう。
公図は精度が低いが、地図は正確
公図とは、土地の区画や地番を示した図面のことで、登記記録と同じように誰でも閲覧することができます。
公図の問題は精度が低いことです。
実は公図の多くは明治時代に作成されたもので、当時の測量技術が未熟だったこともあり、現況とは大きく異なるケースがあるのが実態です。
このため、国が事業として作成を進めているのが地図です。
不動産登記法14条に基づくものであるため、14条地図とも呼ばれます。
地図は現在の測量技術に基づき作成されるので、地図の精度は公図よりもずっと高いです。
「じゃあ公図はいらないのでは?」と思うかもしれませんが、残念ながら地図はまだ作成途上であり、地図が未作成の地域の方が多いのが実態です。
このため地図が備え付けられていない地域では当面の間は、地図の代わりに公図が使われることになります。
地積測量図と建物図面
地積測量図とは、土地の面積(地積)や土地の形状を測量した結果を示した図面です。
土地の表示登記や文筆(例えば一筆の土地を二筆に分けること)の表題登記をする際に必要となります。
次に建物図面とは、建物の位置や形状を示した図面のことです。
新しく建物を建てた時の表題登記をする際に必要になります。
どちらも現状では、全ての土地や建物について備えられているわけではありません。
この点は14条地図と同じですね。
まとめ
最後にFP2級試験の頻出項目を中心にまとめです。
- 登記記録は、不動産の所有者や権利関係者ではなくても、誰でも閲覧できる
- 不動産登記簿には表題部と権利部があり、権利部はさらに甲区と乙区に分かれる。
- 表題部において、マンションの面積は内法面積で表示
- 不動産登記をすることで第三者への対抗力を備えることはできるが、不動産登記自体に公信力はない
- 公図の精度は低く、地図(14条地図)の精度は高い