【FP2級】不動産の有効活用〜等価交換方式や建設協力金方式など6つの活用手法
今回のテーマは不動産の有効活用です。6つの手法の概要と特徴を押さえておきましょう!
- 不動産の有効活用の6つの方式を理解する
- 特に”等価交換方式”と”建設協力金方式”の仕組みを理解する
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ
なぜ土地の有効活用が必要なのか
土地の有効活用法を学習する前に、そもそもなぜ有効活用が必要なのか考えてみましょう。
土地は所有しているだけでは何の収益も生んでくれません。むしろ固定資産税などの税金がかかるため、所有しているだけでは損をしてしまいます。
このため、多くの地主と呼ばれる人たちは、様々な手段で土地を有効活用しています。
たとえば、定期借地契約を結んで土地の賃貸収入を得たり、マンションやオフィスビルを建築することで家賃収入を得たりしているわけです。
また、土地を有効活用する目的は利益を得るためとは限りません。
たとえば、土地に建物を建築すれば、建物の減価償却費を計上することができます。減価償却費を計上すれば、利益を圧縮して所得税を節税できます。
また、土地は更地よりも建付地の方が評価額が低くなります。このため、建物を建築して土地の相続税評価額を下げることができれば、相続税の節税につながるかもしれません。
これらを踏まえて、具体的な土地の有効活用の手法を学習していきましょう。
6つの有効活用手法
土地の有効活用手法として押さえておきたいのは、次の6つの手法です。
自己建設方式 | 自ら企画して賃貸用建物をつくる |
事業受託方式 | ディベロッパーに委託して賃貸用建物をつくる |
定期借地権方式 | 定期借地権契約を結んで土地を賃貸する |
土地信託方式 | 信託銀行に土地を信託し、運用実績に応じた配当を受け取る |
等価交換方式 | 土地の一部をディベロッパーに譲渡する代わりに、ディベロッパーがつくった建物の一部を取得する |
建設協力金方式 | 入居予定のテナントから建設協力金を募って建物をつくる |
多すぎるぞ。また明日でいいか?
ちょっと待った(笑)
1つずつ分かりやすく解説するから諦めないで!
自己建設方式
まずは“自己建設方式”から解説していきます。
自己建設方式とは、土地所有者自らが事業を企画し、建物の建築や資金調達、建築後の管理・運営までを担う手法です。
簡単にいうと「全部自分でやる」のが自己建設方式です。
利益は全て土地所有者のものになりますが、業務負担が大きくノウハウも必要です。
資金調達(銀行借入)も自ら行う必要があり、比較的リスクの高い手法といえます。
なお、建築した建物は減価償却費が計上できるため、所得税の節税効果が期待できます。
事業受託方式
“事業受託方式”とは、事業の企画や建物の建築、建築後の管理・運営などをディベロッパー(不動産開発業者)に委託する方法です。
利益の一部はディベロッパーに持っていかれますが、ディベロッパーのノウハウが活用できることや、業務負担が軽減されることがメリットです。
ただし、資金調達は土地所有者が行う必要があるため、資金リスクを負うことは自己建設方式と変わりません。
自己建設方式よりもリスクが低い手法だといわれています。どちらも土地を手放さなくて良いという点は共通です。
定期借地権方式
“定期借地権方式”とは、ディベロッパーなどと定期借地契約を締結し、土地を一定期間賃貸する方式です。
土地の名義は地主のままで、建物は借地権者であるディベロッパーの名義となります。
定期借地権とは、更新がない期間限定の借地権のことでしたね。忘れてしまった人は復習しておきましょう。
定期借地権は更新がないため、将来は土地が更地で手元に戻ってきます。
また、地主は土地を貸すだけなので資金調達は不要です。建物はディベロッパーが自らの資金で建築するからです。
このため、自己建設方式や事業受託方式よりもリスクが少ない方式といえます。
ただし、自ら建物を建てるわけではないため、減価償却費による節税効果は見込めません。
土地信託方式
“土地信託方式”とは、土地所有者が土地を信託銀行に信託し、運用実績に応じて信託会社から配当を受け取る方式です。
信託銀行は土地所有者に代わって、事業計画を策定し、建物の建築や運営・管理までを一括して行います。
土地の所有権は一旦は信託銀行に移りますが、信託期間が終了すると戻ってきます。
他の方式と比べると利益は少ないですが、土地の運用ノウハウも資金調達も不要なのでリスクが小さい方式といえるでしょう。
等価交換方式
FP2級試験対策として最も押さえておきたいのが“等価交換方式”です。
等価交換方式とは、土地所有者が土地の一部をディベロッパーに譲渡する代わりに、ディベロッパーが建築した建物の一部を取得する方式です。
具体例を見てみましょう。
要するに、土地と建物を等価で交換するから「等価交換方式」というわけです。
なお、所有権を有する土地だけでなく、借地権や底地でも等価交換の対象となります。
等価交換方式には次の2つのパターンがあります。
- 部分譲渡方式・・・土地所有者が土地の一部をディベロッパーに譲渡し、完成した建物の一部を取得する方式
- 全部譲渡方式・・・土地所有者が土地の全部を一旦ディベロッパーに譲渡し、完成した建物の一部と土地の一部を取得する方式
等価交換方式の最大のメリットは、建築資金の負担がないことです。
一方で、土地の一部を失うこと、自己建設方式などに比べると減価償却費があまり計上できないことがデメリットといえるでしょう。
“土地の一部を失う”というのが最大の特徴です。FP2級試験対策として、必ず押さえておきましょう。
建設協力金方式
最後に“建設協力金方式”です。これも重要です。
建設協力金方式とは、入居予定のテナントから建設協力金という名目で資金を募り、自ら建物をつくる方式です。建物は土地所有者の名義のままでテナントに賃貸します。
飲食店やスーパー、ショッピング施設など、商業目的の建物を対象に使われる手法です。商業目的なので、ロードサイドの土地を活用したいときに有効な手法といえるでしょう。
建築協力金は一種の借入金なので、建物建築後はテナントに返済しなければなりません。一般的には、テナントからもらう賃料と相殺するケースが多いです。
建設協力金方式は、土地も建物も所有権を失わないこと、金融機関からの資金調達は不要であることなどがメリットです。
一方で、テナントの希望に沿った建物をつくるため、空室になった際に次の入居者を見つけるのが大変です。この点は建設協力金方式のデメリットといえるでしょう。
なお、土地所有者に相続が発生した場合、その土地は貸家建付地として評価されます。貸家建付地というのは、土地・建物ともに自己所有で建物を賃貸しているときの土地のことです。
ふぅ・・・6つは多かったぞ。でも仕組みはなんとなく分かった
過去問チャレンジ
それではFP2級試験対策として実際の過去問を解いてみましょう。
不動産の有効活用の手法の一般的な特徴に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 建設協力金方式は、土地所有者が、建設する建物を貸し付ける予定のテナント等から建設資金の全部または一部を借り受け、ビルや店舗等を建設する方式である。
- 定期借地権方式では、土地所有者が自己の土地上に建設される建物の所有名義人となり、当該土地と建物を一定期間貸し付けることにより地代・賃料収入を得ることができる。
- 事業受託方式は、土地の有効活用の企画、建設会社の選定や当該土地上に建設された建物の管理・運営等をデベロッパーに任せ、建設資金の調達や返済は土地所有者が行う方式である。
- 等価交換方式における全部譲渡方式は、土地所有者がいったん土地の全部をデベロッパーに譲渡し、その対価としてその土地上にデベロッパーが建設した建物およびその土地の一部を譲り受ける方式である。
(2022年9月 FP2級学科)
それぞれの土地活用方式の説明について正誤を問う問題です。
それでは解説していきます。
❶適切。
設問のとおりです。建設協力金は一種の借入金なので、後々テナントに返済しなければなりません(通常はテナントから受け取る賃料と相殺)。建設協力金方式ではテナントの意向に沿った建物をつくるため、建物の汎用性が低くなってしまうことに留意が必要です。
❷不適切。
定期借地権方式では、建物の名義は借地人(ディベロッパー)となります。設問では土地所有者が建物の名義人になるとしているので誤りです。
❸適切。
設問のとおりです。事業受託方式はディベロッパーのノウハウが活用できるため、自己建設方式よりもリスクは低いといわれています。ただし、資金調達は土地所有者が自ら行わなくてはなりません。
❹適切。
設問のとおりです。”全部譲渡方式”とは、土地所有者が土地の全部を一旦ディベロッパーに譲渡し、完成した建物の一部と土地の一部を取得する方式のことです。これに対して”部分譲渡方式”とは、土地所有者が土地の一部をディベロッパーに譲渡し、完成した建物の一部を取得する方式のことです。
以上により、正解は❷となります。
おつかれさまでした!FP2級では仕組みが分かれば十分です。次回はいよいよ不動産分野の最終回!不動産の投資判断を解説します。
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ