【FP2級】贈与の基本〜書面/口頭の違いと3つの贈与形態〜
普通の生活では贈与ってあまり身近ではないですよね。今回は「贈与ってそもそも何?」というところから、贈与の基本事項を解説します。
- 書面と口頭の贈与契約の違いを理解する
- 定期贈与、負担付き贈与、死因贈与を理解する
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ
贈与の基本
そもそも贈与とは?
ひとことで言うと「誰かに無償で財産を与えること」です。
そして、贈与を受けた人(受贈者)が納めなければならない税金が「贈与税」です。
贈与は贈与契約に基いて行われますが、一方的な意思表示だけでは贈与契約は成立しません。
財産を与える意思表示をして、相手がこれを受諾することで初めて贈与契約は成立します。
こういった契約を「諾成契約」といいます。
不要な財産を無理やり押し付けるのはダメだということですね。
書面と口頭の違い
贈与契約は、書面での契約はもちろん、口頭でもOKです。
ただし、書面の契約と口頭の契約では次のような違いがあります。
- 口頭の贈与契約は、一方的に取り消しができる
- 書面の贈与契約を取り消すには、お互いの合意が必要
口頭の贈与契約の取り消しは、契約の履行前であることが条件です。既に財産の授受をした後では取り消しできません。
また、書面の贈与契約であっても、夫婦間の契約であれば一方的に取り消しが可能です。
こういった例外まで押さえられたら完璧です!
贈与の種類
贈与には一般的な贈与(単純贈与)だけでなく、少し変わった種類のものがあります。
FP2級の試験対策として、次の3種類をおさえておきましょう。
定期贈与
“定期贈与”とは、定期的に行う贈与のことです。
例えば「毎年100万円ずつ10年間贈与する」といったものです。
定期贈与契約は、贈与者と受贈者のいずれか一方が死亡した時点で終了します。
したがって、毎年100万円を受け取る権利は相続人には継承されません。
ここは大変重要なポイントなので必ずおさえておきましょう!
死んだアイツだから贈与してやったが、奥さんや子供にまで贈与する義理はないってことだな
負担付贈与
“負担付贈与”とは、贈与者が受贈者に対して一定の債務を負担させることを条件とする贈与のことです。
例えば「3,000万円の土地をあげるけど、代わりに土地の借入金2,000万円も負担してね」というのが負担付き贈与です。
受贈者(贈与を受ける人)にも一定の負担をしてもらうよ、というものですね。
このケースでは、土地の価値3,000万円から借入金2,000万円を控除した、差し引き1,000万円に対して贈与税がかかることになります。
「贈与税」の話が出ましたが、詳しくは、次回「贈与税の基本〜贈与税額の計算と申告〜」で解説するので安心してください。
1万円あげるから、オレの代わりにFP試験受けてくれない?
その負担は受けられません!
死因贈与
例えば「私が死んだらこの株式をあげよう!」というように、贈与者の死亡により効力が発生する贈与のことです。
ややこしいのは贈与と言いつつ、贈与税ではなく相続税の課税対象になるということです。
生前の財産の移転には贈与税、死亡後の財産の移転には相続税が課されます。
死因贈与は死亡後の財産移転なので、贈与税が課せられるという理屈です。
また、似たようなものに「遺贈(いぞう)」があります。
遺贈とは、遺言によって財産を相続人以外の者に贈ることです。
「死因贈与」と「遺贈」は混合しがちなので、違いをしっかりとおさえておきましょう。
- 「死因贈与」は、贈与者と受贈者の間で合意が必要
- 「遺贈」は、贈与者の一方的な意思表示でOK(受贈者の合意不要)
- どちらも相続税の対象 ←ココは共通
ちなみに、“使用貸借”は贈与にはなりません。
“使用貸借”というのは、例えば親の土地を子が無償で使用する場合などを指します。
この点も念のため押さえておきましょう。
過去問チャレンジ
最後に、実際の過去問を解いてみましょう!
贈与に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 民法上、贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることにより効力が生じる。
- 民法上、書面によらない贈与は、いまだその履行がなされていない場合であっても、各当事者がこれを解除することはできない。
- 相続税法上、書面によらない贈与における財産の取得時期は、原則として、その履行の有無にかかわらず、受贈者が当該贈与を受ける意思表示をした時とされている。
- 相続税法上、個人の債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難になり、その債務の免除を受けた場合、債務免除益のうち債務を弁済することが困難である部分についても、贈与により取得したものとみなされ、贈与税の課税対象となる。
(2022年9月 FP2級学科)
それでは解説していきます。
❶適切。
こういった契約を「諾成契約」と言いましたね。一方的に財産を押し付けることはできず、受贈者の承諾が必要だということをおさえておきましょう。
❷不適切。
口頭による贈与契約は、いつでも一方的に取り消しが可能です。ただし、書面による贈与契約を取り消すには相手方の承諾が必要となります。
❸不適切。
書面によらない贈与(つまり、口頭による贈与)の場合、実際に財産を取得した時が取得時期になります。一方で、書面による贈与の場合は、贈与契約書に記載された日付が財産の取得時期になります。
❹不適切。
債務の免除を受けたことによる経済的利益は贈与税の課税対象になりますが、相手が返済困難だとみなされた場合は課税されません。この点は次回の講義で詳しく解説します。
以上により、正解は❶です。
贈与の基礎知識を問う問題は、かなりの頻度で1問出ます。
難しい知識や計算は要求されないので、ここで確実に1点取っておきましょう。
おつかれさまでした。贈与の基本事項は理解できたでしょうか。次回は「贈与税の基本」を解説していきます!
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