【FP2級】住宅資金〜フラット35と住宅ローンの借り換え
今回は住宅資金がテーマです。特に”フラット35″と住宅ローンの借換えのポイントを整理してきましょう。
- 住宅ローンの仕組みと借換えを理解する
- フラット35の概要を理解する
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ
住宅ローンの仕組み
住宅ローンとは
人生の三大資金の1つが住宅資金です。
しかし住宅をキャッシュで買える人はごく少数で、多くの人は住宅ローンを借りて長い期間で返済していくことになります。
そもそも住宅ローンってなんなんだ?
自宅を建てたりやマンションを購入する場合、ハウスメーカーや不動産会社に代金を支払わなければなりません。でも普通の人はすぐには払えないから、銀行からお金を借りて20年〜30年かけて銀行に返済します。この住宅を購入するための借入金を住宅ローンといいます。
銀行などの貸し手も商売ですから、住宅ローンでは借りたお金(元金)だけでなく、1%や2%などの金利を上乗せして返済する必要があります。貸し手にとっては、この金利分が収益になるわけです。
固定金利と変動金利
住宅ローンの金利には次の3種類があります。
- 固定金利型:最初から最後まで金利が変わらない
- 変動金利型:市場金利に応じて半年毎に金利が見直しされる
- 固定金利選択型:最初の数年間は金利が固定され、固定金利期間の終了時に改めて固定か変動かを選択する
一般的には、同じ時期に借入した場合、固定金利の方が変動金利よりも金利は高くなります。一方で、将来的に市場金利が上がった時には、固定金利の方が有利になるケースがあります。
従って、将来の市場金利が横ばいか下がると思えば変動金利を、反対に将来の市場金利が上がると思えば固定金利を選択するのが基本です。
とはいえ、将来の金利はそんな簡単に予測できるものではないけどね。
元利均等返済と元金均等返済
住宅ローンの返済方法には以下の2種類があります。
- 元利均等返済:毎回の返済額(元金+利息)が一定
- 元金均等返済:毎回の返済額の元金部分が一定
2つの違いはFP2級の試験で問われることがあるので、詳しく解説していきます。
住宅ローンに限らず、借入金の返済金は元金部分と利息部分に分けられます。
❶元利均等返済は、毎回の返済額(元金+利息)を一定にする返済方法です。元金が多い借入当初は返済額に占める利息部分の割合が多くなりますが、返済が進むにつれて元金部分の返済割合が多くなっていきます。
家計が安定するので、住宅ローンでは一般的にこちらが選択されることが多いです。一方で元金部分の返済がなかなか進まないため、借入期間中の支払利息の合計は❷元金均等返済より多くなるデメリットがあります。
❷元金均等返済は、毎回の返済額のうち、元金部分の返済を一定にする返済方法です。利息部分は元金に応じて変動します。つまり、元金が多い借入当初は毎回の返済額が多く、元金の返済が進むに連れて毎回の返済額は少なくなっていきます。
最初の方は返済に苦労しますが、元金部分の返済がどんどん進んでいく返済方法です。企業の借入はこちらがほとんどですが、住宅ローンではあまり利用されません。
これから学習するフラット35では、”元利均等返済”と”元金均等返済”のどちらを選択することもできます。
住宅ローンの繰上げ返済
元利均等返済や元金均等返済により、契約条件どおり返済することを約定返済といいます。
一方で、資金に余裕があるときは、借入の一部を繰上げ返済することもできます。
一部繰上げ返済には2つの方法があります。
- 返済期間短縮型:毎回の返済額は変更せず、返済期間を短縮
- 返済額軽減型:返済期間は変更せず、毎回の返済額を減額
返済期間短縮型の方が利息軽減効果は大きくなります。
住宅ローンの借換え
借換えのポイント
住宅ローンの借換えとは、返済中の住宅ローンから別の金融機関の住宅ローンに乗り換えることです。
例えばA銀行の高金利の住宅ローンからB銀行の低金利の住宅ローンに借換えることで、利息負担を減らせる可能性があります。
ただし、以下の点に注意しなければなりません。
これらを考慮して借換えを判断します。
多少金利が下がったとしても、諸費用や登録免許税をカバーできないのであれば、借換えをするメリットはありません。
過去問チャレンジ
最近は住宅ローンの借換えに関する問題が出題される傾向にあります。実際の過去問を見てみましょう。
Aさんが、下記<資料>に基づき、住宅ローンの借換えを行った場合、借換え後10年間の返済軽減額の計算式として、最も適切なものはどれか。なお、返済は年1回であるものとし、計算に当たっては下記<係数>を使用すること。また、記載のない条件については考慮しないものとする。
資料
[Aさんが現在返済中の住宅ローン]
・ 借入残高:1,000万円
・ 利 率:年3%の固定金利
・ 残存期間:10年
・ 返済方法:元利均等返済(ボーナス返済なし)
[Aさんが借換えを予定している住宅ローン]
・ 借入金額:1,000万円
・ 利 率:年2%の固定金利
・ 返済期間:10年
・ 返済方法:元利均等返済(ボーナス返済なし)
<係数>期間10年の各種係数
現価係数 | 減債基金係数 | 資本回収係数 | |
---|---|---|---|
2% | 0.8204 | 0.0913 | 0.1113 |
3% | 0.7441 | 0.0872 | 0.1172 |
- (1,000万円×0.8203×10年)-(1,000万円×0.7441×10年)
- (1,000万円×0.0913×10年)-(1,000万円×0.0872×10年)
- (1,000万円×0.1113×10年)-1,000万円
- (1,000万円×0.1172×10年)-(1,000万円×0.1113×10年)
(2022年5月 FP2級学科)
それでは解説していきます。
借入金の総額から年間の返済金額を求めるには、資本回収係数を使います。
まず、現在返済中の住宅ローンの年間返済額は「1,000万円×0.1172×10年」で計算します。次に借換えを予定している住宅ローンの年間返済額は「1,000万円×0.1113×10年」により計算します。
つまり、借換え後10年間の返済軽減額は、(1,000万円×0.1172×10年)-(1,000万円×0.1113×10年)で求めることができます。
従って、正解は❹となります。
6つの係数の使い方は覚えていますか?忘れてしまったという方は前回の講義で復習しておきましょう。
フラット35
民間住宅ローンとフラット35
住宅ローンには、メガバンクや地方銀行などの独自の住宅ローン(民間住宅ローン)、住宅金融支援機構の住宅ローン“フラット35”があります。
民間住宅ローンは金融機関によって商品性は様々です。
FP2級試験で出題されるのは”フラット35″の方です。
フラット35は住宅金融支援機構と民間金融機関が連携して提供する住宅ローンです。住宅金融支援機構が商品提供元で、民間金融機関が販売会社の役割を果たします。
フラット35のポイントとして、以下の点をおさえておきましょう。
フラット35(買取型)
フラット35(買取型)とは
フラット35にはいくつか種類がありますが、最もメジャーなのは“フラット35(買取型)”です。
“フラット35(買取型)”では、まず民間金融機関が顧客に住宅ローンを貸出し、そのローン債権(返済を受ける権利)を住宅金融支援機構が買い取ります。
住宅金融支援機構は買い取ったローン債権を担保に資産担保証券(MBS)を発行することで資金を調達します。
ローン債権などを裏付け資産として証券を発行することを”証券化”といいます。フラット35には「買取型」のほか、民間金融機関がローン債権を発行して住宅金融支援機構がその保証を行う「保証型」もあります。
それでは「フラット35(買取型)」の特徴や借入条件など、FP2級で出題される重要ポイントを見ていきましょう。
融資対象
新築住宅、中古住宅どちらも対象になります。
床面積は戸建ては70㎡以上、マンションは30㎡以上であることが条件です。
住宅の購入価格に制限はありません。
注意しなければならないのは、店舗併用住宅は住宅の床面積が全体の1/2以上でなければならないということです。
店舗併用住宅というのは、1つの建物に居住用と事業用(店舗や事務所)のが併用されている建物のことです。1階が八百屋、2階が自宅のような建物のことです。
- フラット35(買取型)では、床面積50㎡のマンションは融資対象になる。○か×か?
-
正解は○です。マンションは30㎡以上であれば対象になります。戸建ての場合は70㎡以上が条件となるので注意しましょう。
- フラット35(買取型)では、住宅の購入価格が1億円を超える場合でも対象となる。○か×か?
-
正解は○です。フラット35(買取型)では、住宅の購入価格に上限はありません。以前は1億円以下が条件でしたが、この条件は撤廃されました。
融資限度額と金利
借入限度額は8,000万円です。
金利は固定金利で、融資実行時点の金利が適用されます。先ほど解説したとおり、金利水準は金融機関によって異なります。
購入金額の100%まで借入することが可能です。
ただし、融資率(借入額÷購入金額)が90%を超えると適用金利が高くなります。制度上は全額借入可能ですが、少しくらいは自己資金でまかなうように促しているわけですね。
また、年間の返済負担割合(年収に占める返済額の割合)は、年収400万円未満の人は30%以下、年収400万円以上の人は35%以下であることが借入条件となります。
この点は余裕があれば覚えておきましょう。
- フラット35(買取型)では、融資申込時点の金利が適用される。○か×か?
-
正解は×です。融資申込時点ではなく、融資実行時点の金利が適用されます。
借入期間と返済方法
借入期間は15年以上で最長35年です。
ただし、完済時の年齢は80歳を超えることはできません。
返済方法は元利均等返済と元金均等返済の好きな方を選べます。
資金に余裕ができれば繰上げ返済も可能です。以下のポイントをおさえておきましょう。
- 繰上げ返済手数料は無料
- 窓口では100万円から、インターネットでは10万円から繰上げ返済が可能
担保と保証
住宅金融支援機構は、融資を実行する金融機関から住宅ローン債権を買い取ります。
このため、対象となる住宅には住宅金融支援機構が第1順位の抵当権を設定します。
保証人や保証料は不要です。
ところで抵当権ってなんだ?
住宅ローンの担保として土地や建物に銀行が設定する権利のことだよ。住宅ローンが返せなくなった時、銀行は抵当権を実行して土地や建物を差押えします。
フラット35S
フラット35には“フラット35S”という制度があります。
“フラット35S”とは、省エネ性・耐震性・バリアフリー性などを備えた住宅を取得する場合に、通常のフラット35よりも低い金利で借りられる制度です。
金利引下げ期間は最大10年間です。
0.25〜0.5%くらい金利が下がるので、該当すればぜひ利用したい制度ですね。
他にも、子供の人数に応じて金利が低くなる“フラット35子育てプラス”などの制度があります。
余裕があれば覚えておきましょう。
過去問チャレンジ
それではフラット35に関する過去問を見ていきましょう。
住宅金融支援機構と金融機関が提携した住宅ローンであるフラット35(買取型)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- フラット35の融資額は、住宅の建設費または購入価額以内で、最高1億円である。
- フラット35の返済方法は、元利均等返済に指定されている。
- 店舗付き住宅などの併用住宅を建築する場合、住宅部分・非住宅部分の床面積の割合に関係なく、フラット35を利用することができる。
- 住宅金融支援機構は、融資を実行する金融機関から住宅ローン債権を買い取り、対象となる住宅の第1順位の抵当権者となる。
(2022年9月 FP2級学科)
フラット35の各種要件を問う問題です。早速、解説していきます。
❶不適切。
フラット35の融資額は最高8,000万円です。設問は1億円としているので誤りです。
❷不適切。
フラット35では”元利均等返済”だけでなく、”元金均等返済”を選択することもできます。
❸不適切。
店舗併用住宅は、住宅の床面積が全体の1/2以上であることが条件です。
❹適切。
設問のとおりです。融資の対象となる住宅には、住宅金融支援機構が第1順位の抵当権を設定します。
以上により、正解は❹となります。
財形住宅融資
“財形住宅融資”にも触れておきます。出題頻度は低いので余裕があれば押さえておきましょう。
勤務先によっては福利厚生の一環として、財形貯蓄制度があります。
財形貯蓄制度とは、企業が毎月の給与から一定金額(従業員が希望する金額)を天引きして貯蓄してくれる制度で、次の3つの種類があります。
- 一般財形
- 財形年金貯蓄(年金財形)
- 財形住宅貯蓄(住宅財形)
このうち❸住宅財形貯蓄(住宅財形)は、将来の住宅取得資金を準備するための預金です。
最大の特徴は、住宅財形の10倍(上限4,000万円)を限度に、住宅金融支援機構から融資が受けられるという点です。この融資を”財形住宅融資”と言います。
“財形住宅融資”の利用条件は次の通りです。
- 住宅財形を1年以上継続していること
- 住宅財形の貯蓄残高が50万円以上であること
ちなみに住宅財形は、年金財形と合計で550万円までの金額には利子が非課税になるという、税制上のメリットもあります。
住宅財形は住宅取得以外の目的でも払出しすることはできますが、その場合、非課税のメリットは受けられないので注意が必要です。
リバースモーゲージ
最後に“リバースモーゲージ”を解説します。
リバースモーゲージとは、自宅を担保に資金を借り入れ、死亡後に自宅の売却資金で借金を返済する仕組みです。
生きている間は金利だけを支払って、自宅に住み続けることができます。
自分の死後に自宅を相続する人がいない場合に有効な制度と言えるでしょう。
ただし、自宅に担保価値がないと金融機関も貸してはくれないので、主に都心に自宅を持つ人が主な対象となります。
リバースモーゲージには次の2種類があります。
- リコース型:相続人が住宅売却後に残った債務の返済義務を負う
- ノンリコース型:相続人が住宅売却後に残った債務の返済義務を負わない
例えば、リバースモーゲージで3,000万円を借入れたものの、死後に自宅の不動産価値が下がっていて2,000万円でしか売れなかったとします。
このとき、リコース型では相続人が差引1,000万円の債務を負うことになりますが、ノンリコース型では相続人が債務を負うことはありません。
それならノンリコース型の方がいいじゃないか
ただし、ノンリコース型は借入金利が高めになります。どちらが優位かは条件次第と言えるでしょう。
リバースモーゲージは比較的新しい商品ですが、高齢化や核家族化に伴い需要が増えています。
今後のFP2級試験で出題が増える可能性があるので、特徴は押さえておきましょう。
今回の学習は以上となります。特に「フラット35(買取型)」はしっかり復習しておきましょう!次回は「教育資金」を解説します。
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ