【FP2級】FPの職業倫理と関連法規〜税理士法・弁護士法・金融商品取引法

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ヤギハシ先生
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「ライフプランニングと資金計画」の第1回目です。FPの業務と関連法規との関係を押さえておきましょう。

今回の目標
  • FPの職業倫理を理解する
  • FPができることとできないことを理解する
カピバラくん
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FPの職業倫理

6つの職業倫理

FPが顧客の信頼を得ながら業務を行うには、高い職業倫理が求められます。

FPに求められるの職業倫理として、次の6つをおさえておきましょう。

FPの職業倫理
  1. 顧客利益の優先
  2. 守秘義務の遵守
  3. 顧客に対する説明義務(アカウンタビリティ)
  4. 法令遵守(コンプライアンスの徹底)
  5. インフォームド・コンセント
  6. 能力の啓発

「インフォームド・コンセント」だけ聞きなれないかもしれませんが、それ以外はなんとなく意味が分かると思います。順番に見ていきましょう。

顧客利益の優先

FPは自らや勤務先の利益ではななく、顧客の利益を優先する姿勢が求められます。

これはFPだけに限った話ではなく、全ての仕事に言えることですね。

ライフプランニングの主役は顧客であり、プランを実行するのはあくまでも顧客です。提案内容を無理に押し通すのではなく、十分に顧客と話し合い、顧客の意に沿わない場合は潔く撤回することも大切です。

参考

2017年以降、金融庁が「顧客本位の業務運営の原則」を公表しています。
これは、監督官庁である金融庁が金融機関に対して「手数料稼ぎばかりしないで、ちゃんと顧客のことを考えなさい!」というメッセージを6つの原則という形で示したものです。

守秘義務の遵守

FPは顧客の収入や資産、負債など様々な個人情報を預かったうえで、ライフプランニングの提案を行います。

FPの業務は顧客との信頼関係の上に成り立ちますから、顧客の同意なく顧客の情報を第三者に漏洩するのはNGです。個人情報保護法に抵触し、刑事罰に問われることにもなります。

なによりも顧客の信用失墜につながるので、守秘義務は必ず守らなくてはなりません。

顧客に対する説明義務(アカウンタビリティ)

FPが顧客に提案を行う際は、顧客の知識レベルや経験に合わせて説明する必要があります。

特に投資信託や外貨預金などの金融商品を販売する場合は、金融商品取引法に基づく説明義務が課されます。

説明すべき重要事項が漏れないよう、留意する必要があります。

法令の遵守(コンプライアンスの徹底)

FPは関係する様々な法令を遵守して業務を行わなければなりません。

FP業務に関連する法令には、金融商品取引法や消費者契約法などがあります。

加えて、税理士法や弁護士法などにも抵触しないよう留意しなければなりません。

カピバラくん
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インフォームド・コンセント

初めて聞くかもしれませんが、難しいことはありません。

インフォームド・コンセントとは、「十分な情報を得た上での合意」という意味で、元々は医療現場などで使われる言葉です。

FPにおけるインフォームド・コンセントは、顧客に十分納得してもらったうえでFPの提案を実行してもらうことです。

FPは顧客の立場に立ってしっかり説明し、理解されているかどうかを確認しながら提案を進めていく必要があります。

能力の啓発

FPの業務は幅広く、必要とされる専門知識も広範囲にわたるため、絶えず能力の啓発に努めなければなりません。

特に法改正に関しては知識のアップデートが欠かせません。

これもFPに限らず、職業全般に共通して必要なことですね。

ヤギハシ先生
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FP2級で難しいことは問われないけど、FP1級の実技試験では6つの職業倫理をスラスラ言えることが求められます!

関連法規

FPの業務は範囲が広いため、税理士法や弁護士法、保険業法など様々な関連法規に抵触する可能性があります。

FP2級対策として、どこまでがOKで、どこからがNGなのかを理解しておく必要があります。

税理士法

税理士の登録を受けていないFPは、税理士業務を行なってはいけません。

具体的には、個別具体的な税務相談や税務書類の作成を行うと税理士法に抵触します。

これは有償の場合はもちろん、無償でもNGです。

“個別具体的な”という点がポイントです。
裏を返せば、仮の事例に基づく税金の計算や一般的な税制の説明くらいならOKだということです。

Q
税理士の資格を有しないFPのAさんは、顧客から不動産の贈与契約書に貼付する印紙について相談を受け、印紙税法の課税物件表を示し、印紙税額について説明した。この行為は適切か不適切か?

適切。一般的な税法や税制の説明なので、税理士資格を持たないFPが説明しても問題ありません。

弁護士法

弁護士資格を持たないFPは、法律相談や法律事務を行ってはいけません。

税理士法と同様に無償でもNGです。

たとえば、遺言書の作成などをFPが行なってはなりません。ただし、一般的な遺言書の書き方の説明や、公正証書遺言の証人になることはできます。

また、弁護士資格がなくても、成年後見制度における任意後見人になることはできます。

任意後見制度とは

認知症などで判断能力が不十分になってしまう場合に備えて、自分の財産管理を託せる支援者をあらかじめ決めておく制度(任意後見制度)です。その時に指定する支援者を「任意後見人」といいます。任意後見人には、弁護士などの専門家がなるケースが多いですが、一般の人でもなることができます。

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Q
弁護士の登録を受けていないFPのBさんは、顧客からの要請に応じ、当該顧客を委任者とする任意後見契約の受任者となった。この行為は適切か不適切か?

適切。任意後見人になるために資格は不要なので、FPでも任意後見人になることはできます。

社会保険労務士法

社会保険労務士の資格を持たないFPは、社会保険の申請書類の作成や提出の代行をすることはできません。

ただし、年金の仕組みを説明したり、受給見込み額の計算するだけであれば、社会保険労務士の資格がなくてもOKです。

Q
社会保険労務士の資格を有しないFPのCさんは、顧客から老齢厚生年金の繰下げ支給について相談を受け、有償で老齢厚生年金の支給繰下げ請求書を作成し、請求手続きを代行した。この行為は適切か不適切か?

不適切。年金の申請書類の作成や請求手続きの代行は、社会保険労務士の独占業務です。したがって、社会保険労務士の資格を有しないCさんの行為は社会保険労務士法に抵触します。

保険業法

保険の募集を行うには、生命保険募集人として内閣総理大臣の登録を受けなければなりません。

ただし、一般的な保険の説明や必要保証額の試算であれば、生命保険募集人の登録がなくても可能です。

Q
生命保険募集人の登録を受けていないFPのDさんは、ライフプランの相談に来た顧客に対して、生命保険の商品内容を説明した。この行為は適切か不適切か?

適切。生命保険募集人の登録がなければ、保険の募集(≒保険の販売)はできませんが、生命保険商品の一般的な説明はできます。

金融商品取引法

内閣総理大臣の登録を受けていない者が具体的な有価証券投資の助言を行うことや、投資一任契約を受けて投資運用を行うことは金融商品取引法で禁止されています。

ただし、経済動向や個別企業の業績など、一般に入手可能な新聞や雑誌などの情報をもとに説明することはOKで、金融商品取引法には抵触しません。

Q
金融商品取引業の登録を受けていないFPのEさんは、顧客と資産運用に関する投資顧問契約を締結したうえで、値上がりが期待できる株式の個別銘柄を示し、その購入を勧めた。この行為は適切か不適切か?

不適切。投資顧問契約を締結して具体的な有価証券投資の助言を行うには、金融商品取引業の登録が必要です。設問に”投資顧問契約”や”個別銘柄”とあった場合、原則として金融商品取引業の登録が必要になるので覚えておきましょう。

しばいぬくん
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各種法令に共通するのは”一般的な概要の説明”であれば、資格は不要だということです。

個人情報保護法

個人情報を本人の承諾なしに第三者に提供することは、個人情報保護法で禁止されています。

個人情報には、個人の住所や氏名、免許証の番号などのほか、指紋認証データや顔認証データといった個人の身体の一部の特徴をデータに変換した符号も含まれます。

また、個人情報を取扱う”個人情報取扱事業者”は、個人情報を取得する前に、その利用目的を明示する必要があります。

ただし、これら個人情報保護法の制約は、人の生命や財産を保護するためにやむを得ない場合は例外です。本人が意識不明で緊急手術が必要なときに、家族から血液型や傷病歴を聞くことはOKだということです。

このあたりは常識的に考えれば分かると思います。

過去問チャレンジ

最後にFP2級試験対策として、実際の過去問を見てみましょう。

ファイナンシャル・プランナー(以下「FP」という)の顧客に対する行為に関する次の記述のうち、関連法規に照らし、最も不適切なものはどれか。

  1. 社会保険労務士の登録を受けていないFPのAさんは、ライフプランの相談に来た顧客に対して、老齢基礎年金や老齢厚生年金の受給要件や請求方法の概要を有償で説明した。
  2. 弁護士の登録を受けていないFPのBさんは、資産管理の相談に来た顧客の求めに応じ、有償で、当該顧客を委任者とする任意後見契約の受任者となった。
  3. 金融商品取引業の登録を受けていないFPのCさんは、金融資産運用に関心のある不特定多数の者に対して、有価証券の価値の分析に基づき、インターネットを利用して個別・相対性の高い投資情報を有償で提供した。
  4. 生命保険募集人の登録を受けていないFPのDさんは、ライフプランの相談に来た顧客に対して、生命保険の一般的な商品性や活用方法を有償で説明した。

(2022年9月 FP2級学科)

それでは解説していきます。

❶適切。
年金の受給要件や請求方法の概要を説明することは、有償であっても問題ありません。ただし、年金の申請書類の作成や提出の代行はできません。

❷適切。
任意後見契約の受任者となるのに資格は不要です。有償であっても問題ありません。

❸不適切。
設問のように、”個別・相対性の高い投資情報を有償で提供”することは投資助言業に該当し、金融商品取引業の登録が必要となります。よって、金融商品取引業の登録を受けていないFPのCさんの行為は不適切といえます。

❹適切。
生命保険の一般的な商品性や活用方法を説明するだけであれば、生命保険募集人の登録は不要です。有償であっても問題ありません。

以上により、正解は❸となります。

ヤギハシ先生
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今回の学習範囲は学科試験の1問目に出題されるので、確実に得点源にしていきましょう。次回は「ライフプランニングと6つの係数」を解説します。

カピバラくん
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1級FP技能士/金融機関/ブロガー
金融機関15年勤務の1級FP技能士。
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