【FP1級実技】面接試験合格に向けた5つの対策【体験談あり】

FP1級を目指す人に立ちはだかる最終試練が、実技試験(面接試験)です。
はじめにお伝えしておくと、FP1級実技試験はとても難易度が高く、しっかりとした対策が欠かせません。しかも、学科試験とは異なる対策が求められます。
一方で、実技試験は受験者数が年間2千人程度と少ないこともあり、ネットを見渡してもあまり具体的な情報が出回っていないのが現状です。
このページでは、これからFP1級実技試験に挑戦する方のために、私自身の体験談も含めて、合格するために必要な5つの対策を解説します。
なお、FP1級試験の実施団体は、金融財政事情研究会(きんざい)と日本FP協会がありますが、ここで解説するのはきんざいの実技試験なのでご注意ください。
FP1級の実技試験とはどんな試験か
申込みから受検まで
FP1級実技試験(面接試験)は、FP1級の学科試験に合格した者だけが受検できる試験です。
この試験に合格して初めて「1級ファイナンシャル・プランニング技能士」を名乗ることができます。せっかく難関の学科試験を突破した人は、何が何でも合格したいですよね!
さて、実技試験ですが、例年2月、6月、9月の3回実施されます。
たとえば、2月の実技試験を受ける場合、次のようなスケジュールになります。
学科試験の合格発表
受検申込み申請
受検票到着
実技試験本番
実技試験の合格発表
詳しくは、きんざいのホームページを参照してください。
なお、受検手数料は28,000円になります。
…高いですね。2回も払うのは嫌なので、なんとか一発合格したいところです。
実技試験当日の流れ
実技試験(面接試験)は次のような流れで進められます。
- 10〜20名程度が1つの部屋に集められる
- 順番に名前が呼ばれ、呼ばれた人は部屋の後方の机に移動
- 設例(ケース)が記載された用紙が渡され、15分読み込む時間が与えられる
- 15分経過すると別の部屋に移動
- 面接開始(約12分間)
- 面接が終わると部屋を出て、最初にいた部屋に戻る
- これらを2回繰り返す
実技試験は、受検者1名:面接官2名の面接形式で行われます。
面接はPartⅠとPartⅡの計2回実施され、どちらもケーススタディ面接です。
面接の15分前に、会社経営者Aさんや資産家Bさんの設例が与えられ、FPとしてどんな提案をするか等が面接で問われます。回答は全て口頭です。
設例が記載された用紙(A3用紙1枚)には、面接で想定される質問のヒントが書かれています。用紙への書き込みはOKで、面接会場に持ち込むことができます。
したがって、与えられた15分の間に素早くケースを理解し、想定される質問への回答をいかに書き出しておけるかが合否を分けるポイントになります。
15分という時間はかなりタイトに感じると思います。少なくとも私は15分で全ての回答を書き出すことはできず、残りは面接中に質問を受けてから考えて回答しました。
どんな問題が出題されるか
百聞は一見に如かずということで、次の設例を見てみましょう。
これは実際に2022年10月の実技試験で出題された設例です。
学科試験とは全く性質の異なる試験であることがお分かりいただけるでしょうか。
学科試験との最大の違いは、唯一無二の答えが存在しないことです。
たとえば、この設例ではFPへの質問事項に「あなたはAさんにⅠ案とⅡ案のどちらを勧めますか。その理由とともに教えてください。」とありますね。
この場合、Ⅰ案とⅡ案のどちらが正解かは一概には言えません。
重要なのは、Ⅰ案またはⅡ案を勧めた理由をしっかり説明できることです。
どちらを選択しても理由がしっかり説明できれば正解になり得ますし、できなければ不正解になるでしょう。
合格率と難易度は
FP1級実技試験は、200点満点中120点で合格になります。面接は2回あるので、面接1回あたりの配点は100点と考えて良いでしょう。
実技試験の合格率は約85%となっています。
85%と言われるといけそうな気がするかもしれませんが、受検者は全てFP1級の学科試験を突破した強者だということを忘れてはいけません。
高い受験料を払って、無勉で来る人など皆無でしょう。
にも関わらず、6〜7人に1人は落とされる…そう考えると難易度の高さがお分りいただけると思います。
その1人にならないためにも、しっかりとした対策が必要です。
FP1級実技試験の5つの対策
ここからはFP1級実技試験に一発合格するために必要な対策を5つ紹介します。
対策1:まずはきんざいの問題集を読み込むべし
FP1級実技試験は受検者数が少ないため、市販のテキスト・問題集は限定されています。
そんな中、ほぼ全受検者が購入していると思われるのが、きんざいの問題集です。
\2022年12月発売の最新版!!/
過去1年分(試験3回分)の実技試験の設問と回答例について、200ページ以上にわたって丁寧に解説されています。
ただし、過去1年分の過去問対策だけでは不十分です。
最低2年分(2冊)、できれば3年分(3冊)は購入して読み込む必要があります。
私の場合は、過去3年分の問題集を購入して4周しました。
(当時は1冊に3年分の過去問が掲載されていました。その分、価格も高かったですが。)
これくらい読み込めば、実技試験の合格ラインには十分到達できるはずです。
反対にこの問題集を使わずに実技試験を突破するのは至難の業といえます。
金額は高めですが、購入しない選択はないでしょう。
ちなみに、私の周りで実技試験に合格した人は、もれなく本書を使っていました。
よほど自分の知識・経験に自信がある方を除き、本書で試験対策するのが無難です。
この他にもう1冊オススメの参考書を紹介します。
FP実務における手引書のような本です。
富裕層や中小企業オーナーからの相談事例と提案事例がQ&A方式でまとめられています。
実技試験対策に特化した本ではありませんが、面接の質問と重なる部分が多いので、問題集と合わせて活用することをオススメします。
対策2:「不動産」と「相続・事業承継」を復習すべし
FP1級の学科試験では、ライフプランニングと資金計画、リスク管理、金融資産運用、タックスプランニング、不動産、相続・事業承継の6分野から、ほぼ均等に出題されました。
一方で、実技試験(面接試験)は「不動産」と「相続・事業承継」からの出題にはっきりと偏っています。
というのも、FP1級実技試験(面接試験)は、「富裕層への提案」がテーマとなっているからです。富裕層といえば、例えばこんな悩みを持っていたりします。
- 中小企業のオーナーで、事業承継対策に悩んでいる
- 多額の資産を保有しており、相続対策に悩んでいる
- 土地や建物を保有しており、有効活用に悩んでいる
実技試験ではこうした富裕層の悩みにどう応えるかが問われるため、必然的に「相続・事業承継」と「不動産」からの出題が多くなるわけです。
具体的には、PartⅠ面接では中小企業オーナーの事業承継や相続対策、PartⅡ面接では不動産の有効活用や相続対策についての設例が出題される傾向にあります。
このため、FP1級の学科試験で使用していたテキストや問題集のうち、「不動産」と「相続・事業承継」の部分はしっかり復習しておくようにしましょう。
逆に、学科試験で多くの人が苦しむ「社会保険」や「公的年金」の問題はまず出題されません。また、学科試験のように、細かい計算問題が出題されることもありません。
こうした傾向を把握したうえで、出題される可能性が高い分野を徹底的に学習するのが合格への近道です。
対策3:FPの職業倫理は丸暗記すべし
実は「不動産」と「相続・事業承継」以外にも絶対におさえておきたい分野があります。
それは「ライフプランニングと資金計画」における「FPの職業倫理」です。実は、PartⅠの面接では最後に必ず次のような質問がされます。
- FPの職業倫理について、どのようなものがありますか。
- また、今回の設例であなたが特に注意すべきと考える倫理項目について、その理由とともに答えてください。
PartⅠの面接における定番中の定番の質問です。
対策として「FPの6つの職業倫理」を暗記し、スラスラ答えられるようにしておいてください。
*FPの職業倫理については、こちらの記事を参考にしてみてください。
「特に注意すべきと考える倫理項目」は、事前に準備しておくと良いでしょう。
ちなみに私は「インフォームド・コンセント」にしようと面接前から決めていました。
インフォームド・コンセントとする理由は、「顧客の立場に立って十分な情報を提供し、しっかりご理解をいただいたうえで提案を実行してもらうことが重要と考えるからです」というように答えました。
今であれば、金融庁が強力に推進する「顧客本意の業務運営」にからめて、「顧客利益の優先」と回答しても良いかもしれません。
どの倫理項目を選択しても正解・不正解はないはずなので、理由が説明しやすい項目にすれば良いと思います。確実に得点源になるので、しっかり準備をしておきましょう。
また、繰り返しになりますが、この質問は面接の最後にされます。ここに至るまでの質問にうまく答えられていないと、少し不安になっている時間帯かもしれません。
そんな時でも、自信を持ってハキハキと答えてください。それが合格につながります。
対策4:專門職業家の独占業務を整理しておくべし
PartⅡ(主に不動産)の面接にも、次のような定番の質問があります。
- 本事案に関与する専門家にはどのような方々がいますか。
かなりの高確率で質問されます。
FPには独占業務はなく、顧客のニーズに応えるためには職業専門家との連携が不可欠です。
そのためには、職業専門家の業務内容を理解しておく必要があり、まさに実務を想定した質問と言えるでしょう。
では、実際にどんな職業専門家が存在し、それぞれの独占業務は何なのか。
以下の表で整理しておきましたので、参考にしてみてください。
専門家 | 独占業務 |
---|---|
税理士 | 個別具体的な税務相談 |
弁護士 | 債権債務関係の法的処理、借地権に関わる法律関係の相談 |
司法書士 | 所有権移転登記・所有権保存登記・共有物の分割の登記 |
不動産鑑定士 | 不動産の鑑定評価、賃料の評価、借地権の評価 |
土地家屋調査士 | 地積の更生・変更の登記、表示登記・分割登記・地目変更の登記 |
宅地建物取引士 | 土地や建物の売買・賃貸の媒介 |
測量士 | 地積の測量、境界確定 |
対策5:直近の法改正をおさえるべし
実技試験では、直近の法改正に関係する質問をされることがあります。
こればかりは過去問では対応できないため、別途対策をする必要があります。
しかし、自力で法改正を調べるのはとてもしんどい作業になりますよね。特に税制は毎年改正されるため、知識のアップデートが大変です。
このため、次の教材を利用して対策することをオススメします。
税制や相続法をはじめ、近年の主要な法改正がまとめられています。毎年7月くらいに発売されるので、最新のものを購入するようにしましょう。
その年の法改正だけでなく、2018年改正民法など近年の大きな法改正もまとめられています。
実技試験終了後も役に立つ1冊なので、買っておいて損はないと思います。
筆者の体験談
最後に私自身の体験談をお話しておきます。
ちなみに私は、2018年6月に実技試験を受験し、スコア140/200点(合格ラインは120点)で一発合格することができました。
勉強方法と勉強時間
「FP技能検定1級実技(資産相談業務)対策問題集」を中心に、独学で勉強しました。
問題集は4周しましたが、1周目は流し読み、2周目で内容を理解、3周目で暗記、4周目で定着できた感じです。1周目で回答できる人はほとんどいないはずなので、最初は無理に解こうとせず、さっさと解説を読んで解き方を覚えてしまう方が効率的だと思います。
「FP提案力の強化書」は2周しました。「FPが知りたかった!改正事項の最短整理」は当時存在を知らなかったのですが、今思えば押さえておくべき参考書でした。
勉強を開始したのは、実技試験の約3か月前からです。
勉強時間は1日平均2〜3時間、トータルで約200時間でした。
学科試験の終了から2か月くらい間を開けてしまったため、忘れてしまったことも多く、苦労したことを覚えています。
モチベーションを保つのは大変ですが、自己採点で学科試験が合格見込みなら、合格発表を待たずに勉強を開始しておくと良いでしょう。
なお、面接試験なので、家族や友人の力を借りて模擬面接をしたり、声に出して回答する練習をするのが効果的なのかもしれませんが、私は特に実践していません。
実技試験の当日
当日は東京品川駅周辺の会場で受検しました。
集合時間よりもかなり早く到着してしまい、会場に入れてもらえなかったため、近くの喫茶店で時間をつぶしてから再度会場に入りました。
服装はもちろんスーツです。他の受検者の方々も漏れなくスーツ姿でした。
面接官は堅めなおじさまであるケースが多いです。悪目立ちする必要は全くないので、よほどの理由がなければスーツ着用をオススメします。
さて、実技試験の内容ですが、1回目の面接はPartⅠで相続・事業承継の設例でした。
過去問でも似たようなパターンの設例があったため、面接の手応えはありました。いくつか即答できない質問もありましたが、面接官が優しい方でヒントをくれたため、うまく乗り切れたことを覚えています。
なお、面接官は2人なのですが、質問をするのはほとんど片方の面接官で、もう1人の面接官は採点を担当しているようでした。
苦しかったのが、PartⅡの面接です。予想通りテーマは不動産だったのですが、設例が過去問にないパターンでした。
50年以上前から都市計画道路予定地に指定されている土地の活用が設例のテーマだったのですが、過去3年の過去問にはないパターンで完全に初見でした。
しかも、PartⅠの優しい面接官とは異なり、面接官も厳しい相手でした。回答に詰まった時に「そんなことも分からないのか?」という雰囲気を出されたため、かなり焦ったのを覚えています。
それでも何とか回答をひねり出そうとしましたが、どうしようもなかった質問には「持ち帰って検討します」と回答しました。
テクニック的な話ですが、どうしても分からない時は「分かりません」ではなく、「持ち帰って検討します」と答えるようにしましょう。
実技試験を終えて
PartⅡの面接は失敗しましたが、PartⅠの面接にはしっかり対応できたため、それなりに手応えはありました。
ただ、学科試験とは異なり自己採点ができないため、合格発表まではヤキモキする日々が続きました。
結果としては、スコア140点で合格でした。ボーダーラインが120点なので、まずまずの点数だったかと思います。
合格して良かったことは、会社の名刺に「1級ファイナンシャル・プランニング技能士」と入れられるようになったことです。ちょっとだけ名刺に伯が付いたと思っています。
これから実技試験を受検する皆様へ
FP1級実技試験は、見た目の合格率以上に難易度の高い試験であり、対策なしで合格できるほど甘い試験ではありません。
一方で、対策さえすれば必ず合格できる試験でもあります。そもそも実技試験の受検者は、あんなに難しい学科試験を突破しているわけですからね。
ここまできたら絶対に合格しましょう!
このページがこれから実技試験を受験する方に少しでも参考になれば幸いです。