【FP2級】用途制限と高さ制限&斜線制限(建築基準法❶)
今回から建築基準法の学習です。不動産カテゴリーではやや難易度が高いため丁寧に解説します。まずは用途制限と高さ制限・斜線制限の学習です。
- 用途地域ごとに建築できる建物を理解する
- 高さ制限と斜線制限の対象区域を理解する
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ
建築基準法とは
建築基準法とは、建物を建てる時のルールを定めた法律です。
具体的には次のようなルールがあります。
- 用途制限
- 高さ制限と斜線制限
- 接道義務
- 防火規制
- 建ぺい率(建蔽率)
- 容積率
これぜんぶ覚えるのか?
そうです!今回は❶用途制限と❷高さ制限と斜線規制を学習していきます。
用途地域と用途制限
用途地域の種類
用途地域とは、建物の用途が制限される地域のことです。
前回の「都市計画法」では、次のことを学習しました。
では、用途地域にはどんな種類があるのでしょうか。
用途地域は全部で13種類あります。
まずはこんな種類があるということで、ざっくり眺めておけばOKです。
住居系が8種類、商業系が2種類、工業系が3種類の合計13種類です。数はしっかり把握しておこう。
用途制限
用途制限とは、用途地域ごとに建設できる建物を制限することです。
たとえば、第1種低層住居専用地域は「低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域」と定義されています。
このため、高さが低い住宅は建築できても、高層マンションや工場は建てられません。
一方で工業専用地域では、工場は建てられますが住宅や学校は建てられません。
工場が立ちならんで煙がガンガン出るような地域に住居や小学校は適さないですよね。
このあたりは感覚的にわかると思います。
次の表でもう少し詳しくみていきましょう。
宅建の試験やFP1級では、これより細かい表を覚える必要があります。
しかし、FP2級ではそこまで詳細は求められませんので、最低限として次のポイントを押さえておきましょう。
用途地域がまたがる場合
ところで、用途地域が2つ以上にまたがる土地の場合、どちら用途地域の規制が適用されるのでしょうか。
答えは“面積が過半を占める用途地域の制限が土地全体に適用される”です。
敷地面積が広い方のルールを採用します。
たとえば敷地100㎡の内訳が近隣商業地域に70㎡、第一種中高層住居専用地域に30㎡の場合は、敷地全体に近隣商業地域の制限が適用されるということです。
この点はFP2級試験で頻出なので、しっかりおさえておきましょう。
高さ制限と斜線規制
絶対高さ制限
第一種(第二種)低層住居専用地域と田園住居地域は、低層住宅の住環境を保護するための用途地域です。
一戸建てが立ちならぶ地域をイメージしてください。こんな地域に高層ビルが建ってしまったら、日当たりが悪くてとても住みづらいですよね。
このため第一種(第二種)低層住居専用地域と田園住居地域は、建物の高さが制限されています。
第一種(第二種)低層住居専用地域・田園住居地域の建物は、10mまたは12mのうち都市計画で定めた高さを超えることはできない!!
このような制限のことを絶対高さ制限といいます。
第一種(第二種)低層住居専用地域と田園住居地域に適用されるルールです。
10mは3階建て、12mは4階建てのイメージです。
日影規制(にちえいきせい)
建物の周辺に高層ビルが建つと日影ができて日照が悪くなります。風通しも悪くなって洗濯物が乾かないかもしれません。
こうした問題に対応するための規制が、“日影規制(にちえいきせい)”です。
日影規制の対象地域では、冬至の日に周辺の建物に一定時間以上の日影を生じさせないよう、建物の高さが制限されます。
- 商業地域・工業地域・工業専用地域 以外の用途地域
商業地域とか工業地域は日影でもいいのか?
日影規制は住宅の日照確保が目的です。これらの地域は人が住むことをあまり想定していないので、日影規制の対象にはならないんです。
斜線制限
斜線規制とは、地面から一定の斜線を引き、その斜線におさまるように建物を建てなければならないという決まりです。
日影規制と同じく、周辺建物の日照や風通しを確保するのが目的です。
よく上層階部分に斜めの切り込みが入っている建物を見かけませんか?あれは隣地斜線規制に従っているんです。
斜線制限には3つの種類があります。
- 道路斜線制限・・・道路の日照を確保する
- 北側斜線制限・・・北側の建物(主に住居)の日照を確保する
- 隣地斜線制限・・・隣地の日照を確保する
❶道路斜線制限は、全ての用途地域に適用されます。
どんな場所の道路でも一定の日照は確保しようという趣旨です。
❷北側斜線規制は、第一種(第二種)住居専用地域、田園住居地域、第一種(第二種)中高層住居専用地域に適用されます。
北側斜線規制は住居の日照を確保するのが目的なので、住居”専用”地域に適用されるわけです。
❸隣地斜線制限は、第一種(第二種)住居専用地域、田園住居地域以外に適用されます。
建物の高さが20mまたは31mを超える部分が規制対象となります。
どうして第一種低層住居専用地域とかは隣地斜線規制の対象外なんだ?
これらの住居用途地域には”絶対高さ制限”が適用され、そもそも10mか12mまでしか建てられません。隣地斜線制限をかけるまでもないということです。
高さ制限と斜線規制まとめ
高さ制限と斜線規制が適用される地域を整理しておきます。
FP2級試験ではこれで1点取れることがあるので、できれば覚えておきたい表です。
暗記が難しければ、規制の趣旨だけでも復習しておきましょう。
趣旨さえ分かれば規制の対象区域はなんとなく分かるはずです。
過去問チャレンジ
それではFP2級試験対策として、実際の過去問を見てみましょう。
都市計画区域および準都市計画区域内における建築基準法の規定に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 準工業地域、工業地域および工業専用地域においては、地方公共団体の条例で日影規制(日影による中高層の建築物の高さの制限)の対象区域として指定することができない。
- 商業地域内の建築物には、北側斜線制限(北側高さ制限)は適用されない。
- 建築物の敷地が2つの異なる用途地域にわたる場合、その敷地の全部について、敷地の過半の属する用途地域の建築物の用途に関する規定が適用される。
- 建築物の敷地が接する前面道路の幅員が12m未満である場合、当該建築物の容積率は、「都市計画で定められた容積率」と「前面道路の幅員に一定の数値を乗じて得たもの」のいずれか低い方の数値以下でなければならない。
(2022年9月 FP2級学科)
早速、解説をしていきます。
❶不適切。
日影規制は商業地域・工業地域・工業専用地域以外の用途地域に適用されます。設問に記載の準工業地域は日影規制の対象地域です。
❷適切。
北側斜線規制は住居の日照を確保するのが目的なので、住居”専用”地域に適用されます。このため設問のとおり、商業地域に日影規制は適用されません。
❸適切。
設問のとおりです。2つの用途地域にまたがる場合、面積が過半を占める用途地域の制限が土地全体に適用されます。
❹適切。
設問のとおりです。容積率は建築基準法❹(容積率)の講義で解説するので、今は流していただいてかまいません。
以上により、正解は❶となります。
斜線規制や日影規制は対象地域を覚えるのが大変ですが、ぜひ何度も復習しておきましょう。
今回の学習はここまでです。次回は建築基準法の2回目として、接道義務と防火規制を解説します。
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ