【FP2級】成年後見制度〜法定後見制度と任意後見制度
今回は成年後見制度の解説をします。超高齢化が進む中で注目されている制度です。概要を把握しておきましょう!
- 法定後見制度の3類型(後見・補佐・補助)を理解する
- 任意後見制度の仕組みを理解する
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成年後見制度
日本では、個人資産の多くを高齢者が保有している一方、認知症などにより判断能力が低下した高齢者の増加が社会問題となっています。
個人の資産運用に携わるFPにとっても関係が深い問題です。
判断能力が低下すると、自分の判断で契約行為をすることが難しくなります。
自分に不利益な契約を結んでしまうかもしれませんからね。
成年後見制度とは、こうした判断能力が低下した人のために契約行為などを代理してくれる人を選定することで、本人を保護・支援するための制度です。
成年後見制度には次の2つの種類があります。
順番に学習していきましょう。
法定後見制度
法定後見制度とは
法定後見制度とは、既に判断能力が不十分な者の契約行為を代理する人を選定し、生活を支援するための制度です。
本人の判断能力に応じて次の3つの類型があります。
支援の対象者 | |
---|---|
後見 | 事理を弁識する能力を欠く者 |
保佐 | 事理を弁識する能力が著しく不十分な者 |
補助 | 事理を弁識する能力が不十分な者 |
「事理を弁識する能力」は「判断能力」と読替えてOKです!
後見・保佐・補助の違いは分かりづらいですが、後見が最も重く、保佐→補助の順に軽くなっていくイメージです。
本人を後見する人を成年後見人、保佐する人を保佐人、補助する人を保佐人と呼びます。
成年後見人・保佐人・補助人には、本人を不利な契約等から守るために、同意権や代理権、取消権などの権利が付与されます。
本人に代理して契約をしたり、本人にとって不利な契約を後から取消しすることができるということです。
法定後見制度は、本人や配偶者、4親等以内の親族などが家庭裁判所に申立を行うことで開始されます。
開始するとき、補助は本人の同意が必要ですが、補佐と後見は本人の同意は不要です。
補助レベルなら多少の判断能力があるため、本人の意思を尊重しようという趣旨ですね。
成年後見人・保佐人・補助人は複数選定することも、法人を選定することもできます。
成年後見人・保佐人・補助人の権限
法定後見人・保佐人・補助人は、本人の法律行為について、同意や取消、代理する権限を持ちます。
これらの権限は、成年後見人・保佐人・補助人によって若干異なりますが、FP2級試験対策では次の点を押さえておきましょう。
成年後見人は全ての法律行為の代理・取消しができる。
ただし、日用品の購入など日常生活に関する行為を除く。
成年後見人は大きな権限を持っていますが、日用品の購入だけは取消しできない点を押さえておきましょう!
任意後見制度
任意後見制度とは
任意後見制度とは、将来的に判断能力が低下した場合に備え、本人の意思であらかじめ後見人を選定しておく制度です。
任意後見人には、配偶者や親族だけでなく、弁護士やFPなど誰でもなることができます。
つまり、任意後見人になるために資格は不要だということです。
任意後見契約は、必ず法務省が定める様式の公正証書により行わなくてはなりません。
任意後見は、本人の事理を弁識する能力が低下し、任意後見人からの請求により家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときに開始されます。
複数の任意後見人や法人の任意後見人を選定することも可能です。この点は法定後見制度と同じですね。
後見制度支援預金・後見制度支援信託(参考)
成年後見制度では以前より、成年後見人による不正が問題となっていました。
要するに、成年後見人が本人(被後見人)の預金などを不正使用するような事案が多く見られたわけです。
こうした問題に対応するため、現在多くの金融機関において、後見制度支援預金や後見制度支援信託といった商品の取扱いが開始されています。
商品性は金融機関によって異なりますが、概ね次のような特徴があります。
後見制度支援預金 | 成年後見人が裁判所の指示書や報告書がないと、引出しできない預金。日常生活に使う預金と別管理にすることで本人の資産を守る。 |
後見制度支援信託 | 成年後見人が裁判所の指示書や報告書がないと、引出しできない信託商品。本人の預金のうち、普段使わない銀行預金を信託銀行に預けることで本人の資産を守る。 |
基本的には同じような仕組みですが、後見制度支援預金は銀行の預金、後見制度支援信託は信託銀行の信託商品という点に違いがあります。
近年注目されている制度なので参考までに押さえておきましょう。
まとめ
それではFP2級試験対策として、成年後見制度のまとめです。
■ 法定後見制度
- 本人の判断能力に応じて、後見・補佐・補助の3つの類型がある
- 本人や配偶者、4親等以内の親族が家庭裁判所に申立を行うことで開始される
- 複数の後見人や法人の後見人を選定することも可能
- 成年後見人は、日用品の購入など日常生活に関する行為を除いて、全ての法律行為を代理したり、取消すことができる
■ 任意後見制度
- 本人の意思であらかじめ後見人を選任しておく制度
- 任意後見契約は公正証書により行わなければならない
- 複数の後見人や法人の後見人を選定することも可能
今回の講義はここまでです。法定後見制度と任意後見制度の特徴はしっかり理解しておこう!次回からは相続税の学習に入っていきます!
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