借地権と借家権
借地権とは
土地の権利には所有権と借地権があります。
土地の所有権とはその名の通り、土地を所有する権利のことです。地主から土地を購入すれば、その土地を自由に使ったり、処分(売却)したりすることができます。
一方、土地の借地権とは、地主から土地を借りて建物を建てるなど、一定期間その土地を使える権利のことを指します。土地の所有権はあくまで地主にあり、借主は土地を借りる見返りとして地代を支払うことになります。
住宅のチラシなどをよく見ると、土地の権利が所有権なのか借地権なのかが記載されています。
借地権の場合は、土地は自分の物にはならず、地代を支払うことにはなりますが、一般的には所有権の2/3程度の金額で購入することができるため、初期投資が少なくて済むといったメリットがあります。
借地権は購入できるわけですから、裏を返せば、借地権を第三者に譲渡するすることもできるわけです。
ただし、借地権を譲渡するときは原則として地主の承諾が必要であることに注意が必要です。
また、借地権は登記をすることもできますが、仮に借地権の登記をしていなくても、借地上の建物の登記さえしていれば、第三者に対抗することができるという特徴があります。
第三者に対抗できるとは、要するに「この土地の借地権は自分のものだ!」と第三者に主張できることです。
登記について詳しくは「不動産登記」で解説していますので、必要に応じて復習しておきましょう。
借家権とは
借家権は建物に関する権利です。
建物の権利には所有権と借家権があります。
建物の所有権はその名の通りなので、もはや説明は不要ですね。
借家権は、家賃を支払って建物を使用する権利のことを指します。いわゆる賃貸というもので、毎月●万円をいった家賃を支払うかわりに、一定期間その建物に住むことができるわけです。
こちらは借地権よりもイメージがしやすいと思います。
借地借家法とは
借地人や借家人は土地や家を借りている立場ですが、地主や大家さんにいきなり「出て行け!」と言われたら大変です。路頭に迷ってしまいますよね。
このようにどうしても弱い立場になってしまう借地人や借家人を保護するための法律が「借地借家法」です。
借地借家法では、地主と借地人の借地契約や、大家さんと借家人の借家契約のルールについて定めています。
借地借家法❶借地権
普通借地権と定期借地権
ここからは、借地借家法の借地権について学習していきます。
まず、借地借家法上の借地権には、「普通借地権」と「定期借地権」の2つがあります。
2つの大きな違いは、契約期限が到来した時の契約更新の有無です。
普通借地権は、地主に正当な事由がない限り、借地人が望めば同一条件で契約が更新されます。
一方で、定期借地権は、定められた契約期間で借地契約が終了し、その後は契約の更新はありません。「定期」とは、「期限を定める」という意味ですね。
定期借地権は、更に3種類に分類することができますが、詳細については後ほど学習していきます。
普通借地権
まずは普通借地権から学習していきます。
借地借家法では、普通借地権の存続期間や更新後の期間のルールを定めています。
存続期間 | 30年以上 ※30年未満の期間を定めたり、期間を定めなかった場合、存続期間は30年とみなされる。 |
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更新後の期間 | 1回目の更新は20年以上、2回目以降の更新は10年以上 |
繰り返しになりますが、借地借家法は借地人や借家人を守るための法律です。
このため、地主は正当事由がない限り、契約の更新を拒むことができません。
存続期間が満了したときに建物があれば、原則としてこれまでと同条件で契約が更新されることになります(建物がない場合は更新されません)。
なお、建物があるにも関わらず契約を更新しない場合、借地人は地主に対して、建物を時価で買い取るように請求することができます。このような権利のことを「建物買取請求権」と言います。
定期借地権
定期借地権とは更新がない期間限定の借地権のことです。
定期借地権には、大きく次の3種類があります。
- 一般定期借地権…建物の用途に制限なし
- 事業用定期借地権…建物の用途は事業用に限定(一部でも居住用は不可)
- 建物譲渡特約付借地権…建物の用途に制限なし、期間満了時に建物を地主に変換
1つ目の一般定期借地権は、建物の用途に特に制限はなく、居住用の土地にも事業用の土地にも設定することができます。
2つ目の事業用定期借地権は、建物用途が事業用に限定されます。建物の一部でも居住用に利用する場合、その土地に事業用定期借地権を設定することはできません。
3つ目の建物譲渡特約付的借地権は、借地権の存続期間が満了して土地を返還する際に、残っている建物を地主に返還する(地主に売却する)ことを定めた借地権です。用途に制限はなく、居住用でも事業用でもOKです。
FP2級の試験で頻出なのは、3つの定期借地権の存続期間(何年の契約としなければならないか)と契約方式(どのような書面で契約しなければならないか等)です。
下の表の内容は必ずおさえておきましょう。
一般定期借地権 | 事業用定期借地権 | 建物譲渡特約付借地権 | |
存続期間 | 50年以上 | 10年以上50年未満 | 30年以上 |
契約方式 | 書面(公正証書でなくてもOK) | 必ず公正証書 | 制限なし(書面でも口頭でもOK) |
繰り返しになりますが、FP2級試験での出題頻度は高いです。
3つの定期借地権の存続期間と契約方式の違いは、必ず覚えておくようにしましょう。