【FP2級】自営業者の年金と共済制度〜国民年金基金・中小企業退職金共済・小規模企業共済
今回のテーマは自営業者の年金と共済制度です。国民年金基金・中小企業退職金共済・小規模企業共済の3つを押さえましょう。
- 国民年金基金を理解する
- 中小企業退職金共済を理解する
- 小規模企業共済を理解する
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自営業者向け年金と共済制度
まずは今回学習する3つの制度の概要です。
- 国民年金基金:国民年金の第1号被保険者の年金に上乗せする制度
- 中小企業退職金共済:中小企業の従業員向け退職金準備制度
- 小規模企業共済:個人事業主や小規模企業の役員向け退職金準備制度
ここから順番に解説していきます。
国民年金基金
国民年金基金とは
“国民年金基金”とは、国民年金の上乗せを目的とした年金制度です。
国民年金の第1号被保険者が任意で加入することができます。
国民年金基金には、終身年金(2種類)と確定年金(5種類)があります。
終身年金は死亡するまでもらえる年金、確定年金は生死に関わらず一定期間もらえる年金のことです。
国民年金基金では、1口目は必ず終身年金を選ばなければなりませんが、2口目以降は好きな種類を選べます。
1口とか2口ってどういうことだ?
国民年金基金の加入は口数制で、1口あたりの金額は年齢や性別に応じて変わります。例えば、30代男性の終身年金は1口あたり約1万円です。加入口数が多いほど、将来もらえる年金額も多くなります。
国民年金基金の加入対象者
加入対象者は、国民年金の第1号被保険者と任意加入被保険者です。
ただし、国民年金保険料を滞納していたり、免除を受けている者は加入できません。
あくまで国民年金の上乗せなので、本体の保険料を納めていない者の加入は認められないということです。
任意加入被保険者を忘れてしまった方は、公的年金❶で復習しておきましょう!
国民年金基金の掛金
国民年金基金の掛金限度額は月額68,000円です。この限度額の範囲以内で加入口数を選ぶことになります。
ポイントは、確定拠出年金個人型(iDeCo)の掛金と合算で68,000円以内ということです。
また、国民年金基金と付加年金とは併用できません。どちらも国民年金の上乗せ制度なので、二重で上乗せはできないルールになっています。
ちなみに付加年金と確定拠出年金個人型(iDeCo)は併用可能ですが、この場合も合算で68,000円以内が掛金限度額となります。
国民年金基金の掛金は全額が社会保険料控除の対象となります。
この点は国民年金や厚生年金と同じです。
国民年金基金の給付と税制
国民年金基金の給付には、老齢年金と遺族一時金があります。
確定拠出年金とは異なり、障害給付はないので注意しましょう。
国民年金基金の老齢給付は、その全額が雑所得として公的年金等控除の対象となり、所得税や住民税が軽減されます。
この点は、老齢基礎年金や老齢厚生年金、確定拠出年金と同じです。
- 国民年金基金の給付には、老齢年金、障害年金、遺族一時金がある。○か×か?
(2022年5月FP2級学科より抜粋) -
正解は“×”です。国民年金基金の給付に障害年金はありません。設問は確定拠出年金の給付内容です。
国民年金基金は自己都合による脱退はできません。このため、脱退一時金といった給付は存在しません!
中小企業退職金共済
中小企業退職金共済とは
“中小企業退職金共済(中退共)”とは、退職金制度がない中小企業向けの退職金準備制度です。
対象は従業員や資本金が一定以下の中小企業に限定されます。
従業員数 | 資本金・出資金 | |
---|---|---|
一般業種(製造・建設業等) | 300人以下 | 3億円以下 |
卸売業 | 100人以下 | 1億円以下 |
サービス業 | 100人以下 | 5千万円以下 |
小売業 | 50人以下 | 5千万円以下 |
この表、覚えるのか?
余裕があれば覚えておきましょう。ただ、出題頻度は低いので思い切って捨てるのもアリです。
- 小売業に属する事業を主たる事業として営む事業主は、常時使用する従業員の数が100人以下である場合、原則として、中小企業退職金共済法に規定される中小企業者に該当し、共済契約者になることができる。○か×か?
(2022年5月FP2級学科より抜粋) -
正解は“×”です。小売業は従業員数が50人以下の場合に加入できます。設問は100名としているので誤りです。本問はFP2級試験の中ではかなりの難問です。
中小企業退職金共済の加入対象者
導入企業の従業員は原則として全員加入となります。
あくまで従業員が対象なので、会社役員や個人事業主は加入できません。
中小企業退職金共済の掛金
中小企業退職金共済の掛金は全額事業主負担となります。
掛金の一部でも従業員に負担させることはできません。
掛金は従業員1人につき月額5,000円〜30,000円の間で選択します。
限度額の30,000円は覚えておきましょう。
掛金はいつでも増額することができ、全額損金算入することができます。
また、新規加入をした場合は、加入後4か月目から1年間、掛金の2分の1(1人当たり最大5,000円)について国から助成を受けることができます。
国の助成は加入月からではなく、4か月目からです。細かい点ですが注意しましょう!
- 中小企業退職金共済の掛金は、原則として、事業主と従業員が折半して負担する。○か×か?
(2021年9月FP2級学科より抜粋) -
正解は“×”です。中小企業退職金共済の掛金は全額事業主負担です。一部でも従業員に負担させることはできません。
中小企業退職金共済の給付と税制
中小企業退職金共済の給付は、従業員が退職したときに、従業員に直接支払われます。
退職金の受取方法は、年金と一時金から選択できます。受取方法によって税制が異なることに注意しましょう。
- 年金で受取り ➡︎ 雑所得(公的年金等控除の対象)
- 一時金で受取り ➡︎ 退職所得(退職所得控除の対象)
税金の取扱いは”確定拠出年金”やこの後学習する”小規模企業共済”と同じです。
小規模企業共済
小規模企業共済とは
“小規模企業共済”とは、個人事業主や小規模企業の役員向けの退職金準備制度です。
中小企業退職金共済と混同しないようにしましょう。
小規模企業共済の加入対象者
小規模企業共済には、従業員数が一定以下の企業の役員や個人事業主が加入できます。
加入資格の従業員数は出題頻度高めです。
- 小売業を主たる事業として営む個人事業主が、小規模企業共済に加入するためには、常時使用する従業員数が5人以下でなければならない。○か×か?
(2021年9月FP2級学科より抜粋) -
正解は“○”です。小売業は商業に該当するため、従業員数5人以下が要件となります。ちなみに卸売業も商業に該当します。
小規模企業共済の掛金
小規模企業共済の掛金は、1,000円〜70,000円の間で選択します。
限度額の70,000円は覚えておきましょう。
掛金は全額が“小規模企業共済等掛金控除”の対象となります。
この点は確定拠出年金と同じです。
- 小規模企業共済の掛金月額は、共済契約者1人につき、3万円が上限となっている。○か×か?
(2022年5月FP2級学科より抜粋) -
正解は“×”です。小規模企業共済の掛金限度額は月額70,000円です。30,000円が上限なのは中小企業退職金共済です。混乱しないようにしましょう。
小規模企業共済の給付と税制
小規模企業共済の給付は、役員が退職したときや法人が解散したときに支払われます。
受取方法は、分割受取と一括受取、一括・分割の併用から選択できます。
受取方法によって税制が異なるのは、確定拠出年金や中小企業退職金共済と同じです。
- 分割受取り ➡︎ 雑所得(公的年金等控除の対象)
- 一括受取り ➡︎ 退職所得(退職所得控除の対象)
掛金限度額と税制まとめ
ここまで制度ごとに解説してきましたが、少し混乱してきたと思います。
特に混乱しがちな掛金限度額と税制についてまとめておきます。
まずは掛金限度額(月額)からです。
掛金限度額(月額) | |
---|---|
国民年金基金 | 68,000円 |
中小企業退職金共済 | 30,000円 |
小規模企業共済 | 70,000円 |
次に税制を整理しておきましょう。
掛金 | 給付 | |
---|---|---|
国民年金基金 | 社会保険料控除 | 公的年金等控除 |
中小企業退職金共済 | 損金算入 | 一括:退職所得控除 分割:公的年金等控除 |
小規模企業共済・確定拠出年金 | 小規模企業共済等掛金控除 |
※国民年金基金の給付に一括受取はありません。
過去問チャレンジ
最後にFP2級試験対策として実際の過去問を見てみましょう。
国民年金基金、小規模企業共済および中小企業退職金共済に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 国民年金基金には、国民年金の第1号被保険者だけでなく第3号被保険者も加入することができる。
- 国民年金基金には、国内に住所を有する60歳以上65歳未満の国民年金の任意加入被保険者も加入することができる。
- 小規模企業共済に加入した場合、支払った掛金額に2分の1を乗じた額が小規模企業共済等掛金控除として所得税の所得控除の対象となる。
- 中小企業退職金共済に新規で加入する事業主は、加入月から1年間、掛金月額の2分の1相当額(従業員ごとに5,000円が上限)について国の助成を受けることができる。
それでは解説していきます。
❶不適切。
国民年金基金の加入対象は、国民年金の第1号被保険者と任意加入被保険者です。第2号被保険者や第3号被保険者は加入できません。
❷適切。
設問のとおりです。❶の解説のとおり、任意加入被保険者も国民年金基金に加入できます。
❸不適切。
小規模企業共済の掛金は、全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となります。設問は、”2分の1を乗じた額”としているので誤りです。
❹不適切。
小規模企業共済に新規加入すると、加入後4か月目から1年間、国から掛金の2分の1(1人当たり最大5,000円)の助成を受けることができます。設問は”加入月から”としているので誤りです。
以上により、正解は❷となります。
今回の学習は以上です。次回はいよいよライフ分野の最終回!中小法人の資金計画を解説します。
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ