【FP2級】遺族基礎年金と遺族厚生年金(公的年金❻)
今回のテーマは遺族給付です。”遺族基礎年金”と”寡婦年金&死亡一時金”、”遺族厚生年金”はどれも頻出なので丁寧に解説していきます。
- 遺族基礎年金の受給要件・金額を理解する
- 寡婦年金と死亡一時金を理解する
- 遺族厚生年金の受給要件・金額を理解する
- 中高齢寡婦加算を理解する
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ
遺族給付とは
今回は公的年金の給付のラスト、“遺族給付”を学習します。
遺族給付とは、死亡した者に生計を維持されていた遺族に支給される年金です。
遺族給付には、国民年金の”遺族基礎年金”と”遺族厚生年金”があります。
遺族基礎年金
遺族基礎年金の受給要件
まずは“遺族基礎年金”から解説します。
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者、60歳以上65歳未満で国民年金の被保険者であった者、老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上(300月以上)の者が死亡したときに、遺族に支給されます。
遺族基礎年金を受給するには、以下の保険料納付要件を満たす必要があります。
以下のいずれかに該当すること
- 被保険者期間のうち、3分の2以上の期間の保険料を納付
- 直近1年間に保険料の滞納がない
ん?どっかで見た気がするぞ
よく気づいたね!!実は障害基礎年金や障害厚生年金と同じ要件です。
遺族基礎年金の受給対象者(遺族の範囲)
FP2級で頻出なのは、受給対象者(遺族の範囲)です。
遺族基礎年金は、子のある配偶者または子に対して支給されます。
逆に言えば、子のいない配偶者や他の親族には遺族基礎年金は支給されません。
この点は極めて重要なのでしっかり覚えておきましょう。
支給されるのは、子が18歳になった年度の3月末までです。
“配偶者と子がいる場合”は配偶者に支給され、”子のみの場合”は子に支給されます。
“子のみの場合”とは、離婚している場合や配偶者が既に死亡している場合です。
遺族基礎年金の年金額
遺族基礎年金の年金額は、障害基礎年金(障害等級2級)と同じです。
“子の加算”は、第2子までは1人につき234,800円、第3子以降は1人につき78,300円となります。
この金額も障害基礎年金と同じですね。
例えば、配偶者と2人の子がいる場合の年金額は、
816,000円+234,800×2人=1,285,600円 となるわけです。
寡婦年金と死亡一時金
寡婦年金とは
ここからは国民年金の“寡婦年金”を学習します。
寡婦年金とは、60歳以上65歳未満の寡婦に対する国民年金の遺族給付です。
寡婦ってなんだ?
“寡婦”とは夫を失って独身の女性のことです。
先ほど学習した”遺族基礎年金”は子がいないと支給されません。
これでは子がいない妻は生活に困ってしまうかもしれませんね。特に年金受給前の高齢の妻(60代前半)にとっては、新たに就職先を見つけるのも困難だし深刻です。
寡婦年金はこうした高齢の寡婦の生活を守るための制度です。
65歳に達すると自分の老齢基礎年金がもらえるようになるので、寡婦年金は65歳で支給が打ち切られます。
寡婦年金の受給要件
寡婦年金の受給要件は以下のとおりです。
10年以上がキーワードです。
寡婦年金の年金額と受給期間
寡婦年金の年金額は老齢基礎年金の4分の3です。
受給期間は60歳から65歳に達するまでの期間です。
ただし、受給者(寡婦)が自分の老齢基礎年金を繰上げ受給する場合は、寡婦年金の受給権は消滅します。
「自分の年金があるから寡婦年金は不要ですよね?」と言われてしまうわけです。
死亡一時金
国民年金の遺族給付として“死亡一時金”も押さえておきましょう。
死亡一時金とは、以下の要件を満たしたときに遺族が受給する国民年金の給付です。
寡婦年金とは異なり、年金ではなく一時金で支払われます。
ポイントは、寡婦年金と死亡一時金は同時に受給できないということです。両方の受給要件を同時に満たしても、いずれか一方しか選択できません。
この点はFP2級対策としてしっかり押さえておきましょう。
国民年金の遺族給付まとめ
遺族基礎年金に寡婦年金、死亡一時金…
ちょっと混乱してきたと思うので、図表で簡単に整理しておきます。
しっかりイメージをつかんでおきましょう!!
遺族厚生年金
遺族厚生年金の受給要件
“遺族厚生年金”は、厚生年金の被保険者が死亡したときに遺族に支給される年金です。
被保険者の死亡以外に、次のようなケースでも支給されます。
- 厚生年金の被保険者であった者が傷病の初診日から5年以内に死亡したとき
- 1級・2級の障害厚生年金の受給権者が死亡したとき
- 25年以上の被保険者期間がある老齢厚生年金の受給権者が死亡したとき
❶と❷は、傷病や障害で厚生年金の被保険者ではなくなっていた人も、傷病や障害になる前に被保険者であれば対象になるということです。
❸は老齢厚生年金の受給権者をイメージしてください。長い間保険料を納付した者の遺族には、老齢厚生年金に代わって遺族厚生年金が支給されるということです。
次に保険料の納付要件を見ていきましょう。
以下のいずれかに該当すること
- 被保険者期間のうち、3分の2以上の期間の保険料を納付
- 直近1年間に保険料の滞納がない
もう何回も見ている要件ですね。遺族基礎年金・障害基礎年金・障害厚生年金とまったく同じ要件です。
遺族厚生年金の受給対象者(遺族の範囲)
遺族厚生年金を受給できるのは、死亡した者に生計を維持されていた遺族です。
ポイントは、優先順位が高い遺族にのみ支給されるということです。
- 優先順位❶:配偶者と子
- 優先順位❷:父母
- 優先順位❸:孫
- 優先順位❹:祖父母
例えば、遺族に配偶者がいる場合は、父母や孫、祖父母には支給されません。
また優先順位❶の場合、”配偶者と子”の両方がいる場合は配偶者に支給され、”子のみ”の場合には子に直接支給されます。
兄弟姉妹は遺族厚生年金の対象外です。
次に遺族の年齢要件です。少し細かい点ですが、妻以外の遺族には年齢要件があります。
- 配偶者(妻) ➡︎ 年齢要件なし
※ただし、子のない30歳未満の妻は5年間の有期年金 - 配偶者(夫)・父母・祖父母 ➡︎ 55歳以上
- 子・孫 ➡︎ 18歳に到達する年度の末日まで
20代の妻だと5年しかもらえないのか
子のない20代ならまだやり直しがきだろうという趣旨です。FP2級で頻出なのでしっかり覚えておきましょう。
遺族厚生年金の年金額
遺族厚生年金の年金額は次のとおりです。
報酬比例部分の金額は、被保険者期間が短いと非常に少額になってしまいます。
このため、報酬比例部分の計算において、被保険者期間が300月に満たない場合は300月とみなして計算することになっています。
300月のルールは障害厚生年金と全く同じです。また”4分の3″というのは寡婦年金と同じですね。
中高齢寡婦加算
続いては“中高齢寡婦加算”です。
中高齢寡婦加算とは、子がいないために遺族基礎年金を受給できない妻の生活を守るための給付です。
遺族厚生年金に加算して支給されます。
寡婦とは夫を亡くした独身の女性のことでしたね。
また、ここでいう中高齢は40歳以上65歳未満を指します。
以上から、中高齢寡婦加算は40歳以上65歳未満の子のいない寡婦に支給されます。
金額は一律612,000円となります。
遺族基礎年金の受給期間中は支給されませんが、子が18歳になって遺族基礎年金が停止された時点で要件を満たせば支給されます。
寡婦年金に中高齢寡婦加算?混乱してきたぞ
この2つはいずれも老齢基礎年金の代わりに支給される給付ですが、やや紛らわしいので以下の点を整理しておきましょう。
- 寡婦年金
☑︎国民年金の給付
☑︎60歳以上65歳未満の寡婦に支給 - 中高齢寡婦加算
☑︎厚生年金の給付
☑︎40歳以上65歳未満の寡婦に支給
過去問チャレンジ
それではFP2級対策として実際の過去問を見てみましょう。
公的年金の遺族給付に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 厚生年金保険の被保険者である夫が死亡し、子のない30歳未満の妻が遺族厚生年金の受給権を取得した場合、その妻に対する遺族厚生年金の支給期間は、最長で5年間である。
- 国民年金の第1号被保険者である夫が死亡し、子のない60歳未満の妻が寡婦年金の受給権を取得した場合、その妻に対する寡婦年金の支給期間は、妻の60歳到達月の翌月から65歳到達月までである。
- 遺族基礎年金を受給できる遺族とは、国民年金の被保険者または被保険者であった者の死亡の当時、その者によって生計を維持されていた親族のうち、配偶者、子、父母、孫、祖父母をいう。
- 遺族厚生年金の年金額(中高齢寡婦加算額および経過的寡婦加算額を除く)は、原則として、死亡した者の厚生年金保険の被保険者記録を基に計算された老齢厚生年金の報酬比例部分の額の4分の3相当額である。
それでは解説していきます。
❶適切。
設問のとおりです。遺族厚生年金を妻が受給する場合に年齢要件はありません。ただし、妻が子なしで30歳未満の場合は5年間の有期年金となります。
❷適切。
設問のとおりです。“寡婦年金”は国民年金の給付であり、遺族基礎年金を受給できない60歳以上65歳未満の寡婦に支給されます。
一方で“中高齢寡婦加算”は厚生年金の給付であり、40歳以上65歳未満の寡婦が対象です。違いを整理しておきましょう。
❸不適切。
老齢基礎年金は、子のある配偶者または子に支給されます。子のいない妻や父母・孫・祖父母には支給されません。
設問のように父母や孫、祖父母も支給対象になるのは老齢厚生年金です。引っ掛け問題には十分注意しましょう。
❹適切。
設問のとおりです。遺族厚生年金の年金額は、老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3となります。
なお、寡婦年金の年金額は老齢基礎年金の4分の3です。遺族給付は4分の3が多いことを覚えておきましょう。
以上により、正解は❸となります。
今回は長かったな・・・
おつかれさまでした。遺族給付はFP2級試験では頻出なので、何度も復習しておきましょう。次回のテーマは”公的年金の併給調整”です。
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ