【FP2級】相続財産の評価❶〜金融資産と宅地の評価(路線価方式・倍率方式)
今回は金融資産や宅地など、相続税財産の評価方法を解説します!上場株式と宅地の評価は実技試験にもつながるので、必ず理解しておきましょう!
- 金融資産の評価を理解する
- 路線価方式と倍率方式による宅地の評価を理解する
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ
はじめに
納付すべき相続税の金額を算出するには、相続した財産の価値を評価する必要があります。
相続財産の評価額は、相続税法で「財産を取得した時の時価」と定められていますが、財産の種類によって時価の算出方法にルールがあります。
FP2級の試験対策としておさえておきたいのは、以下の財産の評価方法です。
- 金融資産(預貯金や株式など)
- 宅地
- 宅地上の権利
- 建物
今回は上の❶と❷を学習し、❸と❹は次回の講義で解説していきます。
金融資産等の評価
預貯金の評価
金融資産の代表例として預貯金(普通預金や定期預金)があります。
預貯金は原則として、相続開始日の預入残高が評価額となります。
少し厄介なのは普通預金と定期預金で、利子(経過利子)の扱いが異なることです。
預金種類 | 評価方法 |
---|---|
普通預金 | 預入残高 |
定期預金 | 預入残高+源泉所得税控除後の経過利子 |
普通預金は金利も低く、利子も大した金額にはならないので、利子は評価の対象外にしてOKだということです。
反対に、定期預金はそこそこの利息がもらえるのだから、その分も加算して評価しましょうね、というルールになっています。
ちなみに、外貨預金(ドルやユーロ建ての預金)は、課税時期のTTBで円換算した価額で評価します。TTBとは、銀行が顧客から外貨を買い取るときの相場のことです。
ゴルフ会員権の評価
ゴルフ会員権とは、会員になったゴルフ場を優先的に使える権利のことです。
取引相場があるものは、金融資産のひとつとして評価されます。
通常の取引価格が1,000万円のゴルフ会員権であれば、相続税評価額は700万円になるということです。
なお、ゴルフ場施設を利用して単にプレーできるだけで、資産性のないゴルフ会員権はは評価ゼロとして扱います。
生命保険契約に関する権利の評価
次に、被相続人が契約していた生命保険契約の評価です。
被相続人が自分以外の誰かを被保険者として生命保険に加入して保険料を支払っていた場合、相続開始によりその契約に関する権利は、相続人に継承されます。
こういった生命保険契約に関する権利は、解約返戻金相当額で評価します。
解約返戻金とは、保険契約を中途解約した時に戻ってくるお金のことです。
払込保険料で評価するわけではないので注意しましょう。
上場株式等の評価
次に上場株式やETF、J-REITなどの評価方法を解説していきます。
これら上場株式等は日々の値動きで価値が変動するため、いつ時点で評価するかがポイントとなります。
FP2級試験で頻出なので、しっかりルールをおさえておきましょう。
当日の終値・当月の平均値・前月の平均値・前々月の平均値のうち、最も低い金額を採用してOKということです。
課税時期にたまたま株価が高騰していたら、評価額が高くなって相続税の納付額も増えてしまうかもしれません。これでは納得がいかないし、不公平感がありますよね。
そんな問題を解消するために、このようなルールがあるわけです。
個人向け国債の評価
公社債には様々な種類がありますが、FP2級対策としては、個人向け国債の評価方法をおさえておきましょう。
過去問の傾向から上場株式等の評価が最頻出です。実技試験でも出題されるので、しっかり理解しておきましょう。
宅地の評価
宅地の評価単位
宅地とは住宅用の敷地のことです。
宅地の評価は登記上の1筆ごとではなく、利用単位の1区画ごとに行います。
例えば、ひとつの建物の敷地が登記上では複数の地番にまたがっていても、同じ建物に利用されている宅地として一体で評価するということです。
宅地の評価方法
宅地の評価方法には、路線価方式と倍率方式があります。
- 路線価方式・・・道路ごとに定められた1㎡あたりの標準的な価額に基づき評価する方法
- 倍率方式・・・固定資産税評価額×国税局長が定めた倍率で評価する方法
どちらで評価するかは、宅地の所在地により国税局長が指定しています。
納税者が自由に選択できるわけではないので注意しましょう。
どうして場所によって評価方法が違うんだ?
原則は路線価方式を使うんだけど、路線価は全ての道路に定められているわけではないんだ。実際、地方部では路線価がない地域も多い。そういった地域では倍率方式で評価するということになるね。
路線価方式
ここからは路線価方式による宅地の評価について、詳しく学習していきます。
次の3つのパターンの評価方法をおさえておきましょう。
- 1つの道路にのみ面している場合
- 角地で2つの道路に面している場合
- 正面と裏面の道路に面している場合
1つの道路にのみ面している場合
最も単純なのがこのケースです。
評価対象の宅地が1つの道路にのみ面している場合、次のように計算します。
路線価に奥行価格の補正を行い、地積を乗じることで評価額を算出します。
奥行価格補正率とは、道路からの奥行が短かったり、長くて利用価値の低い土地の評価を減額補正するものです。
地積というのは面積のことです。
具体例で解説していきます。
次の土地を路線価方式で評価してみましょう!
路線価を奥行価格補正率で補正し、地積を乗じて算出します。
300千円×0.95×200㎡=57,000千円(5,700万円)
つまり、この土地の評価額は5,700万円になるということです。
そんなに難しくないな
角地で2つの道路に面している場合
次に、角地で2つの道路に面している土地の評価方法です。
2つの道路に面しているわけですから、1つの道路に面している場合よりも利用価値は高くなりますよね。
このため、1つの道路に面している土地と比較して、評価額は少し高くなります。
具体的には以下の計算式で評価額を算出します。
ん?急に複雑になったな・・・
一見複雑な計算式に見えますが、実はそれほど難しくありません。
具体例で解説していきます。
次の土地を路線価方式で評価してみましょう!
奥行補正率を乗じた金額が大きい方を正面路線価として扱います。
したがって、300千円の方が正面路線価、200千円の方が側面路線価になります。
奥行補正率が2つありますが、正面路線価の奥行補正率が0.95、側面路線価の奥行補正率が1.00(補正なし)となります。
以上の前提のもと、先ほどの計算式に当てはめると評価額は次のように算出できます。
(300千円×0.95+200千円×1.00×0.03)×600㎡=174,600千円
したがって、1億7,460万円の評価額ということになります。
考え方を理解すれば決して難しくありません。実技試験対策にもなるので、必ず解けるようにしておきましょう!
正面と裏面の道路に面している場合
最後に、宅地の正面と裏面が道路に面している土地の評価方法です。
早速、計算式を見ていきましょう。
考え方は❷角地とほぼ同じです。側方路線価が裏面路線価に、側方路線影響加算率が二方路線影響加算率という言葉に変わっただけですね。
今回も具体例で解説していきます。
次の土地を路線価方式で評価してみましょう!
正面路線価は300千円、裏面路線価は100千円になります。
計算式に当てはめてみましょう。
(300千円×0.95+100千円×0.95×0.03)×400㎡=115,140千円
したがって、1億1,514万円がこの土地の評価額ということになります。
倍率方式
路線価が定められていない地域では、倍率方式により評価をします。
「国税局長が定めた倍率」は問題用紙に記載があるので、それを見ながら計算すれば簡単に答えが出せます。
例えば、固定資産税評価額が2,000万円で、国税局長が定めた倍率が1.1倍の地域の場合、評価額は2,000万円×1.1=2,200万円となります。
固定資産評価額は既に土地の個別事情を織り込み済みなので、宅地の形状による補正(奥行や不整形な土地の減額補正など)は行いません。
路線価方式と比べると計算方法は単純ですね。
まとめ
それではFP2級試験対策として、今回の学習のまとめです。
金融資産の評価
- 預金は「預入残高」で評価(定期預金は経過利子を加算)
- ゴルフ会員権は「通常の取引価格×70%」で評価
- 生命保険に関する権利は「課税時期の解約返戻金相当額」で評価
- 個人向け国債は「中途解約した場合に金融機関から支払われる価額」で評価
- 上場株式等は以下のうち最も低い価額で評価
❶課税時期の終値
❷課税時期の属する月の毎日の終値の平均値
❸課税時期の属する月の前月の毎日の終値の平均値
❹課税時期の属する月の前々月の毎日の終値の平均値
宅地の評価
- 宅地の評価は利用単位の1区画ごとに行う
- 路線価がある地域は「路線価方式」、無い地域は「倍率方式」で評価
- 路線価方式
❶基本・・・路線価 × 奥行価格補正率 × 地積
❷角地・・・(正面路線価 × 奥行価格補正率 + 側面路線価 × 奥行価格補正率 × 二面路線影響加算率)× 地積
❸裏面道路あり・・・(正面路線価 × 奥行価格補正率 + 裏面路線価 × 奥行価格補正率 × 路線影響加算率)× 地積 - 倍率方式:固定資産評価額 × 国税局長が定めた倍率
株式と宅地の評価方法はしっかり理解しておきましょう!次回は宅地上の権利と建物の評価方法を解説します。
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ