【FP2級】労働者災害補償保険〜業務中や通勤中のケガや病気を補償〜

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- 労働者災害補償保険の給付内容を理解する
- 業務災害と通勤災害の違いを整理する
労働者災害補償保険とは
労働者災害補償保険(労災保険)とは、労働者が業務上または通勤途中に、ケガや病気、障害になったり、死亡した場合に保険給付を行うものです。
業務中のケガや病気を「業務災害」、通勤中のケガや病気を「通勤災害」と言います。
労働者災害補償保険では、原則として1人以上の労働者を使用する全ての事業所が対象となり、保険料は全額事業主負担になります。
保険料率は業種によって異なり、危険度が高い業種ほど保険料は高くなります。
被保険者は全ての従業員です。全てというくらいですから、正社員だけでなく、アルバイトやパートも被保険者になるというのがポイントです。
給付の種類
労働者災害補償保険の給付として、次の4つをおさえておきましょう。
- 療養補償給付(療養給付)
- 休業補償給付(休業給付)
- 障害補償給付(障害給付)
- 遺族補償給付(遺族給付)
業務災害の場合は「〇〇補償給付」、通勤災害の場合は「〇〇給付」と言います。
それでは順番に見ていきましょう。
療養補償給付(療養給付)
業務災害または通勤災害による病気やケガの治療を労災病院などで受けた場合、療養補償給付として治療費が全額支払われます。
ただし、療養給付の場合(つまり通勤災害の場合)は、200円だけ自己負担が発生します。
休業補償給付(休業給付)
業務災害または通勤災害により、会社を休んで賃金が受けられない場合、休業4日目から1日につき給付基礎日額の60%が支給されます。
給付基礎日額とは、過去3か月間の1日あたりの平均給与のことです。
更にこれとは別に、休業特別支給金として給付基礎日額の20%が支給されます。
つまり、実質的には休業4日目から給与の80%相当が支給されるわけですね。
障害補償給付(障害給付)
業務災害または通勤災害により体に障害が残った場合、その障害の程度に応じて支給されるのが障害補償給付です。
障害の程度が重い場合(障害等級1〜7等級)は年金が、比較的軽い場合(障害等級8〜14級)は一時金が支給されます。
更に障害補償給付とは別に、「障害特別支給金」が一時金として支給されます。
遺族補償給付(遺族給付)
業務災害または通勤災害により死亡した場合、遺族に支払われるのが遺族補償給付です。
遺族補償給付は年金で、遺族の数が多いほど支給日数が長くなります。
遺族補償給付を受け取る優先順位は、配偶者が最優先されます。配偶者以外が受け取る場合には年齢要件はありません。一方で、子が受け取る場合は18歳の3月31日まで、親や兄弟姉妹が受け取る場合は55歳以上であることが条件となります。
更に遺族補償給付とは別に、遺族特別支給金が一時金として給付されます。こちらは遺族の数に関係なく、一律300万円です。
業務災害と通勤災害
意外とややこしいのが、業務災害や通勤災害に該当するかどうかの判断です。
まずは、業務災害または通勤災害に認定されるための要件を整理しておきましょう。
- 業務災害…認定されるには、業務起因性と業務遂行性の両方が認められることが必要。業務起因性とは、病気やケガの原因が業務に起因すること。業務遂行性とは、ケガや病気になった時に事業主の支配下にあることを指します。業務中はもちろん、例えば昼食休憩中でも事業主の支配下にあるとみなされます。
- 通勤災害…住居と就業場所の往復、就業場所から他の就業場所への移動、住居と就業の場所の往復の前後の住居間の移動の際のケガや病気が対象。これらの移動は合理的な経路および方法により行わなければなりません。
ケース❶
会社から自宅への帰宅途中にいつも使う歩道橋で転倒してケガをした。この日は、自宅へまっすぐ帰らず、途中でスーパーで買い物をした後だった。通勤災害には該当するか?
このケースは通勤災害に該当します。
通勤途中で寄り道をした場合、原則通勤災害にはなりませんが、寄り道の理由が日用品の購入など日常生活上やむを得ない理由で、通常の経路に戻った後の事故であれば通勤災害に認定されます。
ケース❷
出張先のホテルから取引先の事業所に向かう途中に転倒してケガをした。通勤災害に該当するか?
このケースでは通勤災害には該当しませんが、業務災害に該当します。
出張中の移動は通勤ではなく、業務中とみなされるからです。
ケース❸
アルバイトを掛け持ちしている大学生が、バイト先Aからバイト先Bに自転車で移動する途中、転倒してケガをした。通勤災害に該当するか?
「就業場所から次の就労場所への移動」のため、通勤災害に該当します。
ただし、例えば大学の授業を受けた後にアルバイト先に向かう途中のケガなどは、「自宅と就労場所の往復」にも「就業場所から次の就労場所への移動」にも該当しないため、通勤災害に認定はされません。
労働者災害補償保険まとめ
最後にFP2級試験で出題頻度が高い項目を整理しておきましょう。
- 労働者災害補償保険は全ての事業所が対象で、保険料は全額自己負担
- 保険料は業種によって異なる(危険な業種ほど保険料が高い)
- 被保険者はその事業所に勤務する従業員全員で、アルバイトやパートも含む
- 業務災害または通勤災害に対して給付される
- 主な給付は、療養(補償)給付、休業(補償)給付、障害(補償)給付、遺族(補償)給付
- 休業(補償)給付は休業4日目から、1日につき給付基礎日額の60%が支給されることに加え、20%相当額の休業特別支給金が支給される