【FP2級】直系尊属からの一括贈与の非課税措置〜教育資金と結婚・子育て資金の特例〜
今回は「教育資金の一括贈与の非課税措置」と「結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置」を解説していきます。 贈与税の学習もいよいよ最終回です!
- 特例を受ける条件を理解する
- 非課税限度額を理解する
- 2つの特例の違いを理解する
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ
教育資金の一括贈与の非課税措置
教育資金の一括贈与の非課税措置とは
“直系尊属からの教育資金の一括贈与の非課税措置”とは、直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた時に、最大で1,500万円まで贈与税が非課税になる特例のことです。
この特例を利用するには、贈与者・受贈者ともに要件があります。
次のポイントをおさえておきましょう。
贈与者 | ・直系尊属であること(父母や祖父母) |
受贈者 | ・30歳未満の子や孫であること ・前年の合計所得金額が1,000万円以下であること |
特に受贈者の「30歳未満」というのは重要なので覚えておきましょう。
この特例は、暦年課税の基礎控除、相続時精算課税制度、直系尊属からの住宅取得資金の贈与の非課税と併用可能です。
さらに、この後学習する「結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置」とも併用可能です。
また、非課税枠は受贈者ごとに利用できます。
「受贈者ごと」というのは、例えば祖父からの贈与について、兄と弟がそれぞれ1,500万円の非課税枠を利用できるということです。
非課税限度額
先ほど、1,500万円まで非課税になると解説しましたが、これはあくまで学校等(幼稚園、小中高校、大学、専門学校など)に直接支払う金銭の限度額です。
ってことは習い事はダメなのか?
いいところに気が付いたね!実は習い事も非課税の対象になるよ。ただし、非課税限度額は500万円までという制限があるんだ。
つまり、入学金など学校に直接支払う金銭は1,500万円まで非課税ですが、習い事など学校以外に支払う金銭は500万円までが限度になります。
通学定期代なんかも、学校以外に支払う金銭になります。
学習塾などの習い事や通学定期代に500万円超使ってしまうと、超過した分が贈与税の課税対象になってしまうので注意が必要です。
なお、受贈者が23歳以上の場合、学校以外に支払われる金銭は非課税の対象にはなりません。例外は教育訓練給付金の支給対象になる講座などに金銭を支払う場合です。
この点も余裕があれば押さえておきましょう。
大人になってからの習い事くらい、自分で払えってことだな
制度開始の手続き
この制度を利用するには、金融機関に教育資金口座を開設し、金融機関経由で教育資金非課税申告書を提出する必要があります。
贈与を受けた教育資金は教育資金口座に預け入れ、必要な時に払い出しを行います。
払い出しを行った場合は、それを教育資金に充当したことを証明するために、金融機関に領収書等を提出します。
実際に教育資金に支出した金額のみが非課税になるということです。
制度開始時の手続きは、あまり出題されないから流し読みで大丈夫!重要なのは次の契約終了時の取扱いです!
契約終了時の取扱い
教育資金口座の契約は次のような場合に終了します。
- 教育資金口座の残高がゼロになった場合
- 受贈者が死亡した場合
- 受贈者が30歳に達した場合
では、契約が終了した時に口座に残高が残っていた場合はどうなるのでしょうか。
次のポイントをおさえておきましょう。
- 受贈者が死亡した場合、残高があっても贈与税は非課税
- 受贈者が30歳に達した場合、残高が贈与税の課税対象
受贈者の死亡により契約が終了した場合は非課税、受贈者が30歳に到達して契約が終了した場合は課税対象となります。
少しややこしいですが、FP2級の学科試験で出題される可能性があるので、正確に理解しておきましょう。
結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置
結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置とは
“直系尊属からの結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置”とは、直系尊属から結婚や子育てのための資金の贈与を受けた時に、最大で1,000万円まで贈与税が非課税になる特例のことです。
教育資金の特例とセットで覚えておくと良いでしょう。
この特例を利用するの贈与者・受贈者の要件は次の通りです。
贈与者 | ・直系尊属であること(父母や祖父母) |
受贈者 | ・18歳以上50歳未満の子や孫であること ・前年の合計所得金額が1,000万円以下であること |
暦年課税の基礎控除、相続時精算課税制度、直系尊属からの住宅取得資金の贈与の非課税、教育資金の一括贈与の非課税措置とも併用可能です。
また、祖父からの贈与について、兄と弟がそれぞれこの特例を利用するなど、非課税枠は受贈者ごとに利用できます。
このあたりは教育資金の特例と同じですね。
非課税限度額
先ほど解説した通り、この制度の非課税限度額は1,000万円です。
このうち、結婚資金として支出する金額は300万円が限度になっています。
1,000万円全てを教育資金に使うことはできますが、結婚資金に使えるのは300万円までということです。ここは大変重要なポイントです。
豪華な結婚式代まで非課税にはしてやらんということだな
あくまで子育て資金がメインということだね。ところで教育資金の特例は、学校以外への支出は500万円が限度でした。混同しないようにしよう!
制度開始の手続き
この制度を利用するためには、金融機関に結婚・子育て資金口座を開設し、金融機関経由で結婚・子育て資金非課税申告書を提出する必要があります。
支払い後に領収書等を提出するのは教育資金の特例とほとんど同じです。
契約終了時の取扱い
結婚・子育て資金口座の契約は、次のような場合に終了します。
- 教育資金口座の残高がゼロになった場合
- 受贈者が死亡した場合
- 受贈者が50歳に達した場合
次に、契約終了時に残高が残っていた場合の扱いをおさえておきましょう。
- 受贈者が死亡した場合、残高があっても贈与税は非課税
- 受贈者が50歳に達した場合、残高が贈与税の課税対象
年齢が50歳であること以外は教育資金の特例と同じですね。
過去問チャレンジ
それでは実際の過去問を解いてみましょう!
直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税の特例(以下「本特例」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 本特定の適用を受けるためには、直系尊属である祖父母から贈与を受ける必要があり、父母から子に対する贈与は本特例の対象とならない。
- 本特例の適用を受けた場合、贈与税が非課税となる限度額は、受贈者1人につき2,500万円である。
- 本特例の対象となる教育資金は、学校に直接支払われる入学金や授業料などの金銭のみで、学校以外の施設に支払われる金銭は対象ではない。
- 本特例の適用を受けた贈与財産のうち、受贈者が30歳に達した日に教育資金に充当していない金銭が残っている場合は、原則としてその残額がその年に贈与があったものとして贈与税の課税対象となる。
(2014年9月 FP2級学科試験)
それでは設問ごとに解説していきます。
❶不適切。
祖父母だけでなく、父母も対象となります。
❷不適切。
受贈者1人につき、1,500万円が非課税限度額となります。
❸不適切。
塾や習い事の費用も対象となります。ただし、学校以外に支払われる金銭は上限500万円までとなります。
❹適切。
設問の通り、受贈者が30歳になった時に残高がある場合は、原則、贈与税の課税対象となります。ただし、30歳以上でも、受贈者が学校に在籍していたり、教育訓練を受けている場合は、40歳に達するまで贈与税は課せられません(この点は細かいので余裕があれば覚えておいてください)。
以上より、正解は❹となります。
まとめ
「教育資金の一括贈与の非課税措置」と「結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置」は非常に似ている制度ですが、取り扱いが異なる点もあります。
2つの特例の違いを整理しておきましょう。
教育資金 | 結婚・子育て資金 | |
---|---|---|
非課税限度額 | 1,500万円 *学校以外は500万円 | 1,000万円 *結婚資金は300万円 |
受贈者の年齢 | 30歳未満 | 18歳以上50歳未満 |
受贈者の合計所得金額 | 1,000万円以下 | 1,000万円以下 |
2つの特例を併用することも可能ですし、暦年課税の基礎控除や相続時精算課税制度、住宅取得等資金贈与の非課税とも併用することができます。
教育資金と結婚子育て資金の特例は、とにかく併用可能だと覚えておきましょう!
贈与税の学習はここまでです。贈与税の計算方法や各種特例はしっかり覚えられたかな?次回からは相続の学習に入ります!
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ