【FP2級】障害基礎年金と障害厚生年金(公的年金❺)
今回のテーマは障害給付です。”障害基礎年金”と”障害厚生年金”の受給要件や金額を押さえていきましょう。
- 障害基礎年金の受給要件と金額を理解する
- 障害厚生年金の受給要件と金額を理解する
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ
障害給付とは
今回は公的年金の給付のうち、“障害給付”を学習します。
障害給付とは、事故などで一定の障害状態になったときに受給できる年金です。
障害給付には、国民年金の”障害基礎年金”と厚生年金の”障害厚生年金”があります。
障害基礎年金
障害基礎年金の受給要件
まずは“障害基礎年金”から解説していきます。
障害基礎年金は、障害認定日において障害等級1級・2級に該当した場合に受給できる国民年金の給付です。
初診日において国民年金の被保険者である者のほか、60歳以上65歳未満で国民年金の被保険者であった者も受給対象となります。
国民年金の被保険者は20歳以上60歳未満ですが、60歳以上65歳未満の人が障害になった場合でも受給対象になるということです。65歳以上の人は既に老齢基礎年金を受給しているので対象外となります。
障害基礎年金を受給するには、以下の保険料納付要件を満たす必要があります。
以下のいずれかに該当すること
- 初診日の前々月までの被保険者期間のうち、3分の2以上の期間の保険料を納付している
- 初診日の前々月までの1年間に保険料の滞納がない
原則は❶ですが、救済措置として❷があるイメージです。いつどんな事故に遭遇するかは分かりませんから、保険料はしっかり納付しておきたいものです。
ところでよ、障害認定日ってなんだ?
障害認定日とは、一定の障害等級に該当することを認定された日のことです。具体的には以下のいずれかが障害認定日となります。
- 初診日から1年6か月を経過した日
- 障害が治った日(=障害が固定した日)
ここでいう”障害が治った日”は、”障害が固定した日”と考えた方が分かりやすいです。治療を続けてもこれ以上の改善が望めない状態を指します。
早い段階で障害が固定すればその日が障害認定日となりますが、通常は初診日から1年6か月を経過した日に障害認定が行われます。
病気やケガで会社を休む場合、健康保険から1年6か月を限度として傷病手当金が支給されます。1年6か月後も完治せずに障害が残った場合は、障害基礎年金にバトンタッチされるイメージです。
障害基礎年金の年金額
障害基礎年金の年金額は障害等級により異なります。
816,000円は老齢基礎年金の満額と同額です。
障害基礎年金は保険料の納付期間に関係なく、一律に満額が支給されます。
ポイントは、障害等級1級の場合は年金額が1.25倍になることです。
子の加算額ってなんだ?
“子の加算額”は、18歳未満の子(または20歳未満の1〜2級の障害状態にある子)がいる場合に養育費として支給される給付です。
第2子までは1人につき234,800円、第3子以降は1人につき78,300円が給付されます。
この後で解説する障害厚生年金には、子の加算の代わりに配偶者の加算があります。混乱しないようにしましょう。
障害厚生年金
障害厚生年金の受給要件
ここからは“障害厚生年金”の解説です。
障害厚生年金は、障害認定日において障害等級1級・2級・3級に該当した場合に受給できる厚生年金の給付です。
障害基礎年金とは異なり、障害等級3級でも受給対象になるのがポイントです。
初診日に厚生年金の被保険者である者が対象となります。
障害認定日の考え方は障害基礎年金と同じです。つまり、1年6か月後もしくは障害が治った日(固定した日)が障害認定日となります。
保険料納付要件は障害基礎年金と同じです。復習も兼ねてもう一度確認しておきましょう。
以下のいずれかに該当すること
- 初診日の前々月までの被保険者期間のうち、3分の2以上の期間の保険料を納付している
- 初診日の前々月までの1年間に保険料の滞納がない
障害厚生年金の年金額
障害厚生年金の年金額も障害等級により異なります。
障害厚生年金の年金額は、老齢厚生年金の報酬比例部分に応じて変わります。つまり、収入が多い人や長く保険料を支払っている人の方が多くもらえるということです。
じゃあ若いときに障害になったら、少ししかもらえないのか?
カビバラくんの言うように、このままでは被保険者期間が短い人の障害厚生年金は非常に少額となってしまいます。
このため、障害厚生年金を計算する場合、被保険者期間が300月に満たない場合は300月とみなして計算することになっています。
これなら若くして障害になった場合でも相応の金額が受給できますね。
また、障害等級1・2級では、“配偶者加給年金額”が追加で支給されます。対象は生計を維持する65歳未満の配偶者がいる場合です。
金額は老齢厚生年金の加給年金と同じく234,800円となります。
障害等級1級の場合に1.25倍になるのは障害基礎年金と同じです。
また、障害等級1〜3級には該当しない軽い障害の場合でも、厚生年金では“障害手当金”が一時金として支給されます。
国民年金に比べて、厚生年金は給付が充実していますね。
障害基礎年金と障害厚生年金の間違いやすいポイント
障害基礎年金と障害厚生年金は、とても混同しやすいです。
下の表で違いを整理しておきましょう。
障害等級 | 障害基礎年金 | 障害厚生年金 |
---|---|---|
1級 | 816,000円×1.25倍+子の加算額 | 老齢厚生年金の報酬比例部分×1.25倍+配偶者加給年金額 |
2級 | 816,000円+子の加算額 | 老齢厚生年金の報酬比例部分+配偶者加給年金額 |
3級 | ー | 老齢厚生年金の報酬比例部分 |
過去問チャレンジ
最後にFP2級対策として実際の過去問を見てみましょう。
公的年金制度の障害給付に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
- 障害厚生年金の額を計算する際に、その計算の基礎となる被保険者期間の月数が300月に満たない場合、300月として計算する。
- 国民年金の被保険者ではない20歳未満の期間に初診日および障害認定日があり、20歳に達した日において障害等級1級または2級に該当する程度の障害の状態にある者に対しては、その者の前年の所得の額にかかわらず、障害基礎年金が支給される。
- 障害基礎年金の受給権者が、所定の要件を満たす配偶者を有する場合、その受給権者に支給される障害基礎年金には、配偶者に係る加算額が加算される。
- 障害手当金の支給を受けようとする者が、同一の傷病により労働者災害補償保険の障害補償給付の支給を受ける場合、障害手当金と障害補償給付の支給を同時に受けることができる。
それでは解説していきます。
❶適切。
設問のとおりです。被保険者期間が300月未満の場合、報酬比例部分は被保険者期間が300月あったものとして計算します。さらに、障害等級3級の場合は障害基礎年金の4分の3が最低保障されます。この点もあわせて覚えておきましょう。
❷不適切。
初診日が20歳未満であっても、20歳以後に障害が残っている場合は障害基礎年金が支給されます。ただし、前年の所得が多い場合は年金の半分または全額が支給停止になります。設問は”前年の所得の額に関わらず”という記載が誤りです。
❸不適切。
障害基礎年金で加算されるのは“子の加算額”です。”配偶者加給年金額”が加算されるのは障害厚生年金です。
❹不適切。
労働者災害補償保険の障害補償給付を受給する権利がある場合、障害手当金は受給できません。設問では”同時に受けることができる”としているので誤りです。非常に細かい点ですが、余裕があれば覚えておきましょう。
以上により、正解は❶となります。
今回の学習は以上です。次回は公的年金の遺族給付を解説します。
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ