【FP2級】労働者災害補償保険(労災保険)〜業務災害・通勤災害と5つの給付
今回のテーマは労働者災害補償保険(労災保険)です。対象者や給付内容などを解説していきます。
- 労働者災害補償保険の対象者を理解する
- 労働者災害補償保険の給付内容を理解する
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労働者災害補償保険(労災保険)とは
労働者災害補償保険(労災保険)とは、業務中または通勤途中におけるケガや病気、障害や死亡に対して保険給付を行う制度です。国が運営しています。
業務中のケガや病気を“業務災害”、通勤中のケガや病気を“通勤災害”といいます。
- 健康保険:業務外のケガや病気が対象
- 労働者災害補償保険:業務中や通勤途中のケガや病気が対象
労働者災害補償保険は、1人以上の労働者を使用するすべての事業者が対象となり、保険料は全額事業主負担です。労働者(被保険者)の保険料負担はありません。
保険料率は業種によって異なります。事故などの多い危険な業種ほど保険料は高くなります。
対象は全ての労働者です。正社員だけでなく、アルバイトやパート、日雇い労働者や外国人労働者も対象になります。
まずはここまでが超重要なので、一旦整理しておきましょう。
労働者災害補償保険の給付
労働者災害補償保険の給付として、次の5つをおさえておきましょう。
- 療養補償給付(療養給付)
- 休業補償給付(休業給付)
- 傷病補償年金(傷病年金)
- 障害補償給付(障害給付)
- 遺族補償給付(遺族給付)
- 葬祭料(総裁給付)
業務災害の場合は「〇〇補償給付」、通勤災害の場合は「〇〇給付」といいます。たとえば、業務災害では”療養補償給付”、通勤災害では”療養給付”という呼び方をします。
それでは順番に見ていきましょう。
❶療養補償給付(療養給付)
業務災害による病気やケガの治療を労災指定病院で受けた場合、療養補償給付として治療費が全額支払われます(通勤災害による療養給付は一部自己負担があります)。
労災指定病院以外で治療を受けた場合は、一旦全額を支払うことになりますが、後から全額支給を受けることができます。
❷休業補償給付(休業給付)
業務災害または通勤災害により、会社を休んで賃金が受けられない場合、休業4日目から1日につき給付基礎日額の60%が休業補償給付(休業給付)として支給されます。
支給は4日目からなので最初の3日間は支給されません。
給付基礎日額とは、過去3か月間の1日あたりの平均給与のことです。
4日目から給付なのは健康保険の”傷病手当金”と同じです。
❸傷病補償年金(傷病年金)
業務災害または通勤災害によるケガや病気が1年6か月以上経過しても治らず、一定の傷病等級(傷病等級1〜3)に該当する場合には、傷病補償年金(傷病年金)が支給されます。
年金が支給される期間は、傷病等級に応じて異なります。
❹障害補償給付(障害給付)
業務災害または通勤災害により体に障害が残った場合、その障害の程度に応じて支給されるのが障害補償給付(障害給付)です。
障害の程度が重い場合(障害等級1〜7等級)は年金が、比較的軽い場合(障害等級8〜14級)は一時金が支給されます。
このように、年金か一時金かは障害等級によって決定されるため、労働者(被保険者)が自由に選ぶことはできません。
❺遺族補償給付(遺族給付)
業務災害または通勤災害により死亡した場合、遺族に支払われるのが遺族補償給付(遺族給付)です。
遺族補償給付(遺族給付)は、年金または一時金で支給されます。
年金の支給額は死亡した者と生計を同じくする遺族(配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹)がいる場合に支給されます。
遺族の数が多いほど、年金の支給期間は長くなります。
対象となる遺族がいない場合は、その他の遺族に一時金が支給されます。
❻葬祭料(葬祭給付)
亡くなった者の葬祭を行った者に支払われるのが“葬祭料(葬祭給付)”です。
遺族だけでなく、会社や友人が葬祭を行った場合にも支給されます。
業務災害の場合は”葬祭料”、通勤災害の場合は”葬祭給付”と呼ばれます。
支給額は「315,000円+給付基礎日額の30日分」または「給付基礎日額の60日分」のいずれか大きい金額です。
請求期限は死亡から2年以内となります。
業務災害と通勤災害の違い
意外とややこしいのが、業務災害や通勤災害に該当するかどうかの判断です。
ケーススタディで見てみましょう。
会社から自宅への帰宅途中にいつも使う歩道橋で転倒してケガをした。この日は、自宅へまっすぐ帰らず、途中でスーパーで買い物をした後だった。通勤災害には該当するか?
このケースは通勤災害に該当します。
通勤途中で寄り道をした場合、原則通勤災害にはなりません。
ただし、寄り道の理由が日用品の購入など日常生活上やむを得ない理由で、通常の経路に戻った後の事故であれば通勤災害に認定されます。
出張先のホテルから取引先の事業所に向かう途中に転倒してケガをした。通勤災害に該当するか?
このケースでは通勤災害には該当しませんが、業務災害に該当します。
出張中の移動は通勤ではなく、業務中だとみなされるからです。
アルバイトを掛け持ちしている大学生が、バイト先Aからバイト先Bに自転車で移動する途中、転倒してケガをした。通勤災害に該当するか?
通勤災害は、”自宅と就労場所の往復”だけでなく、”就業場所から次の就労場所”も対象です。
したがってこのケースは通勤災害に該当します。
ただし、例えば大学の授業を受けた後にアルバイト先に向かう途中のケガは、”自宅と就労場所の往復”にも”就業場所から次の就労場所への移動”にも該当しないため、通勤災害には認定されません。
過去問チャレンジ
最後にFP2級試験対策として実際の過去問を見てみましょう。
労働者災害補償保険(以下「労災保険」という)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 労災指定病院で療養補償給付として受ける療養の給付については、労働者の一部負担金はない。
- 労災保険の適用を受ける労働者には、雇用形態がアルバイトやパートタイマーである者は含まれるが、日雇労働者や外国人労働者は含まれない。
- 業務災害により労働者が死亡した場合、対象となる遺族に対し、遺族補償給付として遺族補償年金または遺族補償一時金が支給される。
- 労働者が業務上の負傷または疾病による療養のため労働することができず賃金を受けられない場合、賃金を受けられない日の第4日目から休業補償給付が支給される。
(2023年1月 FP2級学科)
それでは解説していきます。
❶適切。
設問のとおりです。労災指定病院で業務災害によるケガや病気の治療を受ける場合、労働者は医療費を支払う必要はありません。
❷不適切。
労働者災害補償保険の対象は全ての労働者(従業員)です。正社員だけでなく、アルバイトやパート、日雇労働者や外国人労働者も対象になります。設問は”日雇労働者や外国人労働者は含まれない”としているので誤りです。
❸適切。
設問のとおりです。業務上の理由で労働者が死亡した場合、遺族補償給付が年金または一時金で遺族に支給されます。
❹適切。
設問のとおりです。休業補償給付は休業4日目から1日につき給付基礎日額の60%が支給されます。最初の3日間は待機期間として給付されません。
以上により、正解は❷となります。
労働者災害補償保険の学習は以上です。次回からは”雇用保険”の学習に入っていきます。
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