【FP2級】公的年金の併給調整(公的年金❼)
今回は公的年金の併給調整を学習します。ここだけで1点取れることもあるので、ぜひ得点源にしていきましょう。
- 公的年金同士の併給ルールを理解する
- 健康保険や労働者災害補償保険との併給ルールを理解する
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ
併給調整とは
日本の年金制度は“1人1年金の原則”により、原則は1種類の年金しか受給できません。
複数の年金の受給要件を同時に満たした場合、基本的にはどれか1つの年金だけが支給され、他の年金の支給は停止されます。このルールを“併給調整”といいます。
でもよ、老齢基礎年金と老齢厚生年金って同時に受給してるんじゃないか?
いいところに気がついたね!実は同一種類の年金であれば併給ができます。つまり、老齢基礎+老齢厚生、障害基礎+障害厚生、遺族基礎+遺族厚生の組み合わせなら併給できるということです。
同一種類の年金以外にも、実は例外的に併給できるケースがあります。
ここがFP2級試験で問われるので、順番に見ていきましょう。
公的年金同士の併給調整
老齢基礎年金・老齢厚生年金と遺族厚生年金
まずは、老齢基礎年金・老齢厚生年金と遺族厚生年金の併給です。
例えば、夫の遺族厚生年金を受給していた妻が65歳に達したケースを考えてみましょう。
このとき、妻は遺族厚生年金だけでなく、受給要件を満たせば自分の老齢基礎年金+老齢厚生年金の受給権も得ることになります。
このようなケースの場合、原則は自分の老齢基礎年金+老齢厚生年金が優先されます。
ただし、自分の老齢厚生年金よりも遺族厚生年金の方が多い場合、その差額が遺族厚生年金として支給されます。
すなわち、老齢基礎年金・老齢厚生年金・遺族厚生年金は併給できるということです。
以下の流れをおさえておきましょう。
ただし、この組合わせが可能なのは、受給者が65歳以上の場合のみです。すなわち、老齢厚生年金を繰上げ受給する場合、併給は認められません。
- 遺族厚生年金と老齢厚生年金の受給権を有している者は、65歳以降、その者の選択によりいずれか一方の年金が支給され、他方の年金は支給停止となる。○か×か?
(2019年9月 FP2級学科より) -
正解は“×”です。まず老齢厚生年金が全額支給され、老齢厚生年金との差額が遺族厚生年金として支給されます。本人が自由に年金を選択できるわけではありません。
障害基礎年金と各種厚生年金
次に障害基礎年金と各種厚生年金の組み合わせです。
まず、障害基礎年金は障害厚生年金と併給できます。これは同種類の年金なので当然ですよね。
重要なのは、障害基礎年金は老齢厚生年金や遺族厚生年金とも併給できるということです。
障害基礎年金はどの厚生年金とも併給可能だと覚えておきましょう。
障害基礎年金だけ特別なんだな
ただし、これらの組み合わせが可能なのは、受給者が65歳以上の場合のみです。
この点は、老齢基礎年金・老齢厚生年金と遺族厚生年金の組み合わせと同じです。
公的年金同士の併給まとめ
異なる年金同士で併給可能な組み合わせを整理しておきましょう。
全体のイメージは以下の通りです。
老齢厚生 | 障害厚生 | 遺族厚生 | |
---|---|---|---|
老齢基礎 | ○ | × | ○ |
障害基礎 | ○ | ○ | ○ |
遺族基礎 | × | × | ○ |
表が”4”の形になっているのが分かりますか?
この表が頭に浮かべば試験対策はバッチリです。
健康保険・労災保険との併給調整
健康保険の傷病手当金との併給調整
健康保険の傷病手当金は、業務外の病気やケガによって働けず、給与の支払いが受けられない場合に支給される健康保険の給付です。
同一の傷病で傷病手当金と障害厚生年金を同時に受給できる場合、障害厚生年金が全額支給され、原則として傷病手当金は支給されません。
ただし、障害厚生年金が傷病手当金より少ない場合、差額が傷病手当金として支給されます。
例えば、傷病手当金の日額が5,000円、障害厚生年金の1日あたりの金額が3,000円だったとしましょう。この場合、まず障害厚生年金から3,000円が支給され、差額の2,000円が傷病手当金から支給されるイメージです。
労働者災害補償保険(労災保険)との併給調整
次に労働者災害補償保険(労災保険)との併給調整です。
業務災害または通勤災害により、体に障害が残ったときには障害補償給付、死亡したときには遺族に遺族補償給付が支給されます。
例えば、同一の理由で障害補償給付と障害厚生年金、遺族補償給付と遺族厚生年金が同時に受給できるケースを考えてみましょう。
このような場合は、まず公的年金(障害給付・遺族給付)が全額支給されます。
そのうえで、労災保険の給付が所定の調整率により減額して支給されます。
“公的年金と健康保険”または”公的年金と労災保険”が同時に受給できる場合、いずれも公的年金の給付が優先すると覚えておきましょう。
過去問チャレンジ
それではFP2級試験対策として、実際の過去問を見てみましょう。
公的年金に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 障害基礎年金と遺族厚生年金の受給権を有している者は、65歳以降、障害基礎年金と遺族厚生年金を同時に受給することができる。
- 障害基礎年金と老齢厚生年金の受給権を有している者は、65歳以降、障害基礎年金と老齢厚生年金を同時に受給することができる。
- 同一の事由により、障害厚生年金と労働者災害補償保険法に基づく障害補償年金が支給される場合、障害補償年金は全額支給され、障害厚生年金は所定の調整率により減額される。
- 健康保険の傷病手当金の支給を受けるべき者が、同一の疾病または負傷およびこれにより発した疾病について障害厚生年金の支給を受けることができる場合、原則として傷病手当金は支給されない。
それでは解説していきます。
❶適切。
設問のとおりです。障害基礎年金は障害厚生年金だけでなく、老齢厚生年金や遺族厚生年金とも併給可能です。障害基礎年金だけ特別だと覚えておきましょう。
❷適切。
設問のとおりです。理由は❶と同様です。
❸不適切。
公的年金と労災保険の障害補償給付の受給要件を同時に満たす場合、公的年金が全額支給され、労災保険の給付は所定の調整率で減額されます。設問の記載は、公的年金と労災害保険の説明が逆です。
❹適切。
設問のとおりです。公的年金と健康保険の傷病手当金の受給要件を同時に満たす場合、公的年金が優先して支給され、傷病手当金は支給停止となります。ただし、公的年金の給付が傷病手当金より少ない場合、差額が傷病手当金として支給されます。
以上により、正解は❸となります。
併給調整の学習は以上です。次回はいよいよ公的年金の最終回!年金生活者支援金や公的年金の税金を解説します。
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ