【FP2級】国民年金と厚生年金(公的年金❶)
今回から公的年金制度の学習に入ります。FP2級試験全体を見ても最大の山場です!長丁場にはなりますが、8回に分けて分かりやすく解説していきます。
- 公的年金制度の全体像を理解する
- 国民年金の被保険者と保険料を理解する
- 国民年金の保険料免除・猶予制度を理解する
- 厚生年金の被保険者と保険料を理解する
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ
公的年金制度の全体像
公的年金制度とは
生きていくうえでは加齢や障害、死亡などさまざまなリスクがあります。
公的年金はこれらのリスクに社会全体で備えるための仕組みです。
公的年金に加入しておくことで、いざというときに国から給付を受けることができます。
国民年金と厚生年金
日本の公的年金制度は、1階部分の国民年金と2階部分の厚生年金から構成されます。
国民年金と厚生年金の関係は、以下の図でイメージしておきましょう。
国民年金は広く国民を対象とした基礎年金と位置付けられ、その上に会社員や公務員が加入する厚生年金があるイメージです。
ここから詳しく学習していきましょう。
国民年金保険
国民年金の被保険者
ここからは国民年金保険の制度を解説していきます。
大前提として、国内に住所がある20歳以上60歳未満の者は、すべて国民年金保険に加入しなければなりません。
これを”国民皆保険制度”と呼び、国民ひとりひとりには基礎年金番号という固有の番号が割り当てられます。
ここでもう一度、図を見てみましょう。
図に記載のとおり、国民年金の被保険者は次の3つに分類されます。
- 第1号被保険者:第2号・第3号被保険者以外の者(自営業者、自営業者の配偶者、20歳以上の学生など)
- 第2号被保険者:会社員、公務員
- 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養される配偶者(専業主婦)
厚生年金保険料には国民年金の保険料も含まれるため、通常、会社員や公務員は”国民年金の第2号被保険者”であり、”厚生年金の被保険者”にもなります。
少し特殊なのが、会社員や公務員の被扶養配偶者(専業主婦・専業主夫)です。この人たちは、自ら保険料を納めることなく、国民年金の第3号被保険者となります。
第2号・第3号被保険者のいずれにも当てはまらない人が第1号被保険者です。主に自営業者をイメージすると良いでしょう。
- 自営業者の配偶者は国民年金の第3号被保険者である。○か×か?
-
正解は「×」です。自営業者の配偶者は、第1号被保険者として自ら国民年金に加入しなければなりません。第3号被保険者になれるのは、第2号被保険者(会社員・公務員)に扶養されている配偶者です。引っ掛け問題に注意しましょう。
- 第2号被保険者の被扶養配偶者である60歳の妻は、第3号被保険者である。○か×か?
-
正解は「×」です。国民年金の第3号被保険者は”20歳以上60歳未満”が要件となります。
- 夫が脱サラして自営業者になった。これまで第3号被保険者であった妻はどうすれば良い?
-
第3号被保険者になれるのは、第2号被保険者の被扶養配偶者だけです。自営業者になった夫は国民年金の第1号被保険者に該当するため、妻自身も第1号被保険者となって保険料を納めなければなりません。このあたりは、国民健康保険と健康保険の関係と同じです。
国民年金の保険料
国民年金の保険料納付義務があるのは、第1号被保険者だけです。
第2号被保険者は厚生年金の保険料に国民年金の保険料も含まれており、第3号被保険者はどちらの納付義務もありません。
保険料負担だけ考えれば、第3号被保険者がお得ですね。
国民年金の保険料は月額16,980円(2024年度)です。
本人の所得に関係なく、定額となります。この点はこれから学習する厚生年金の保険料とは異なるので押さえておきましょう。
- 国民年金保険料:月額16,980円(所得に関係なく定額)
- 厚生年金保険料:本人の所得に応じて変わる
保険料は本人または世帯主・配偶者が連帯して納付する義務を負います。夫が未納であった場合、妻に請求される可能性もあるということです。
保険料の納期限は翌月末です。たとえば、3月分の保険料は4月末までに納める必要があります。納付方法は現金だけでなく、クレジットカードでもOKです。
また、資金に余裕があれば最長で2年分の保険料を“前納”することもできます。前納した場合はその期間に応じて、保険料が割引されます。要するに”早割り”です。
納めるのを忘れたらどうなるんだ?
過去2年分までなら遡って納付することができるよ。これを追納といいます。
国民年金の保険料免除・猶予制度
保険料は期限までに納付するのが原則ですが、経済的事情から納付が難しい場合も考えられますよね。
そんなときのために、国が保険料の支払いを免除してくれる制度があります。
- 産前産後期間の免除:出産予定月の前月から4か月間
- 法定免除:障害年金の受給者と生活保護の受給者
- 申請免除:本人、配偶者、世帯主の所得が一定以下の場合
- 学生納付特例制度:所得が一定額以下の学生
- 納付猶予制度:50歳未満で本人および配偶者の所得が一定以下の場合
このうち、申請免除以外は保険料の全額が免除されます。
申請免除はその人の所得に応じて、“全額免除”、“4分の3免除”、“半額免除”、“4分の1免除”のいずれかが適用されます。
免除を受けていた期間の保険料は、10年を限度に遡って追納することができます。
せっかく免除してもらえるのに何で追納するんだ?
保険料の納付月数が少ないと将来の年金受取額が減ってしまうんだ。追納することで将来の年金受取額を回復できるということです。
たとえば、”学生納付特例制度”で免除されていた保険料を社会人になってから追納することで、将来の年金額を回復できます。
*ちなみに筆者は、大学時代(20歳〜22歳)に”学生免除特例制度”を受けていましたが、保険料の追納期間が過ぎてしまったため、国民年金の減額が確定しております。。。
ただし、“産前産後期間の免除”に限っては、追納しなくても免除期間は保険料を納付したものとして扱われます。国による子育て支援の一環だと理解しておきましょう。
過去問チャレンジ
国民年金の保険料免除・猶予制度は、出題頻度も高いので過去問を見ながら理解を深めましょう。
国民年金の保険料に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 第1号被保険者で障害基礎年金または障害等級1級もしくは2級の障害厚生年金を受給している者は、原則として、所定の届出により、保険料の納付が免除される。
- 第1号被保険者が出産する場合、所定の届出により、出産予定月の前月から4ヵ月間(多胎妊娠の場合は出産予定月の3ヵ月前から6ヵ月間)、保険料の納付が免除される。
- 第1号被保険者である大学生は、本人の所得金額の多寡にかかわらず、所定の申請により、学生納付特例制度の適用を受けることができる。
- 学生を除く50歳未満の第1号被保険者は、本人および配偶者の前年の所得(1月から6月までの月分の保険料については前々年の所得)がそれぞれ一定金額以下の場合、所定の申請により、保険料納付猶予制度の適用を受けることができる。
それでは早速解説していきます。
❶適切。
設問のとおりです。障害年金の受給者(障害等級3級の障害厚生年金受給者を除く)や生活保護受給者は、国民年金保険料の納付が法定免除となります。
❷適切。
設問のとおりです。産前産後期間の免除は、保険料を追納しなくても免除期間中の保険料を全額納付したものとして扱われます。
❸不適切。
学生であっても、所得が一定以上の者は学生納付特例制度の適用を受けることはできません。ガンガン稼いでいる学生起業家は対象外ということです。
❹適切。
設問のとおりです。”納付猶予制度”の出題頻度は少ないですが、余裕があれば覚えておきましょう。
以上により正解は❸となります。
厚生年金保険
厚生年金の被保険者
ここからは厚生年金の解説です。
厚生年金は会社員や公務員が加入する年金で、公的年金制度の2階部分に当たります。
被保険者は、厚生年金の適用事業所で働いている70歳未満の会社員や公務員です。
厚生年金は国民年金の上乗せの役割を果たします。厚生年金に加入することで、国民年金の第1号被保険者よりも高い金額の給付を受けることができます。
適用事業所ってなんだ?
法人はすべて厚生年金の適用事業所となります。個人事業所の場合は、常時5人以上の従業員を使用していると適用事業所となります。
厚生年金の保険料
厚生年金の保険料は一律ではなく、その人の所得に応じて変わります。
厚生年金の保険料は毎月の給与と賞与のそれぞれに対してかかります。
保険料率はどちらも18.30%に固定されており、保険料は労使折半で負担します。
標準報酬月額とは、毎月の給与金額をおおまかに区分したものです。全部で32等級に区分されています。
公的年金の標準報酬月額は32等級までですが、健康保険の標準報酬月額は50等級まであります。混乱しないようにしましょう。
産前産後期間中・育児休業期間中の保険料免除
産前産後期間中と育児休業期間中(子供が3歳に達するまで)、産後パパ育休中は、厚生年金保険料の支払いが免除されます。
重要なのは、被保険者負担分だけでなく、事業主負担分も免除されるということです。
年金額の計算においても、免除期間は保険料を納付したものみなされます。
少子高齢化につき、国は出産や子育てを優遇しています。事業者の保険料負担も免除することで、事業者が育児休業に前向きになるよう促している面もあるのでしょう。
過去問チャレンジ
最後にFP2級試験対策として、実際の過去問を見てみましょう。
公的年金に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
- 産前産後休業を取得している厚生年金保険の被保険者の厚生年金保険料は、所定の手続きにより、被保険者負担分と事業主負担分がいずれも免除される。
- 厚生年金保険の適用事業所に常時使用される者のうち、65歳以上の者は、厚生年金保険の被保険者とならない。
- 国民年金の保険料免除期間に係る保険料のうち、追納することができる保険料は、追納に係る厚生労働大臣の承認を受けた日の属する月前10年以内の期間に係るものに限られる。
- 日本国籍を有するが日本国内に住所を有しない20歳以上65歳未満の者は、国民年金の第2号被保険者および第3号被保険者に該当しない場合、原則として、国民年金の任意加入被保険者となることができる。
それでは回答を見ていきましょう。
❶適切。
設問のとおりです。産前産後期間中と育児休業期間中(子供が3歳に達するまで)の厚生年金保険料は、事業主の手続により、被保険者負担分・事業主負担分ともに免除されます。さらに年金額の計算においても、免除期間は保険料を納付したものみなされます。
❷不適切。
厚生年金の適用事業所で働いている70歳未満の者は、厚生年金の被保険者となるので、設問の記載は誤りです。
なお、65歳以上70歳未満の者は厚生年金の被保険者にはなりますが、国民年金の第2号被保険者にはなりません。また、70歳以上の者は国民年金の第2号被保険者にも厚生年金の被保険者にもなりません。このあたりまで押さえられたら完璧です。
❸適切。
設問のとおりです。免除期間の保険料は、10年を限度に遡って追納ができます。なお、単なる保険料の滞納の場合、追納できる期間は過去2年分が限度です。
❹適切。
設問のとおりです。”日本国籍を有するが日本国内に住所を有しない20歳以上65歳未満の者”とは、海外で働いている人を想像してください。日本に住所がなければ国民年金への加入義務はありませんが、将来の年金受給額が減らないよう、本人が希望すれば国民年金への任意加入が認められています。
よって正解は❷となります。
今回の学習は以上です!公的年金は複雑なので、一度で理解するのは困難です。何度も復習していきましょう。次回は国民年金の老齢給付を解説します。
試験前の追い込みには“直前対策note”がおすすめだぞ