【FP2級】雇用保険(1)〜求職者給付と就職促進給付〜

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- 雇用保険の対象者を理解する
- 求職者給付の仕組みを理解する
- 就業促進給付の仕組みを理解する
雇用保険とは
雇用保険とは、一言で言うと「働けなくなった人の生活を守るための公的保険」です。
失業した場合だけではなく、例えば育児や介護により働けなくなった場合に受けられる給付もあります。
また、65歳以上も働き続ける人のための高年齢雇用継続給付、新たな技能を身につけようとする人のための教育訓練給付など、雇用保険には様々な給付があります。
FP2級の試験では、これらの給付の内容や受給条件、受給できる期間などが問われます。
覚えることは少し多いですが、今回の学習でしっかりと整理していきましょう。
雇用保険の対象者
雇用保険の給付を学習する前に、雇用保険の対象者(被保険者)の要件など、制度の概略を理解していきます。
まず、雇用保険は原則、全ての労働者が対象になります。
健康保険とは異なるので、労働者の家族は雇用保険の対象にはなりません。
また、学生も原則、雇用保険の対象にはなりません。
最後に、雇用保険の保険者(給付金などを支払う主体)は政府で、運営は公共職業安定所(ハローワーク)が担っていることをおさえておきましょう。
求職者給付(基本手当)
受給資格
ここからは雇用保険の各種給付について学習していきます。
まずは雇用保険の最も代表的な給付である、求職者給付の基本手当です。
失業保険とも呼ばれ、その名の通り、失業した人に対して給付を行うものです。
働く意思と能力がある65歳未満の人で、離職日以前の2年間に雇用保険の被保険者期間が12か月以上(倒産・解雇の場合は離職日以前の1年間に6か月以上)あった人が給付の対象となります。
例えば、新卒1年目に自己都合で退職した場合は条件を満たさないため、基本手当は受給できないことになります。
65歳以上の人が離職した場合、基本手当は受給できませんが、一定の条件を満たせば一時金として「高年齢求職者給付金」を受給することができます。一時金の額は基本手当日額(後ほど説明します)の30日〜50日分です。
受給金額と所定給付日数
基本手当の給付総額は、「基本手当日額×所定給付日数」となります。
まず、基本手当日額は、離職前6か月間の賃金総額を180日で割った賃金日額に一定割合を乗じて算出されます(上限あり)。
ここで言う一定割合とは、賃金日額や年齢に応じて45%〜80%の幅があり、賃金日額が多いほど割合は低く、賃金日額が少ない人ほど割合は高くなります。離職者の生活を守るための制度ですから、当然といえば当然ですね。
そして、基本手当日額は永久に受給できるわけではなく、受給できる日数(所定給付日数)が決まっています。この受給できる日数のことを「所定給付日数」と言います。
所定給付日数は、自己都合・定年退職の場合と、倒産・解雇の場合とで長さが異なります。
この点がFP2級の試験では頻出なので、しっかりと整理しておきましょう。
自己都合退職・定年退職の場合
まずは、自己都合退職または定年退職の場合の所定給付日数です。
被保険者期間 | 1年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
所定給付日数 | 90日 | 120日 | 150日 |
表から分かる通り、被保険者期間が長いほど、所定給付日数は長くなります。
また、被保険者期間が1年未満の場合は、所定給付日数はありません。
自己都合退職の場合の所定給付日数には、退職時の年齢は加味されないこともおさえておきましょう。
倒産・解雇の場合
次に、倒産や解雇により離職した場合の所定給付日数です。
倒産や解雇の場合は、被保険者期間だけではなく、離職時の年齢によっても所定給付日数が変わってきます。
自己都合退職や定年退職の場合と比べて、全体的に所定給付日数は長く、就職困難者(障がい者など)の場合は更に期間が長くなります。
被保険者期間と年齢に応じた全パターンを覚えるのは大変なので、FP2級の試験対策としては最低限、次のパターンの所定給付日数だけ覚えておきましょう。
- 被保険者期間が1年未満の場合は、年齢を問わず90日
- 最も所定給付日数が長いのは、「被保険者期間20年以上かつ離職時の年齢が45歳以上60歳未満」のケースで330日(就職困難者の場合は360日)
待機期間と支給期間
求職者給付の基本手当は、離職後すぐに受給できるわけではありません。
7日間の待機期間というものがあり、これを経過した後に受給ができるようになります。
注意しなければならないのは、自己都合退職の場合、7日間の待機期間に加えて、3か月間の給付制限があるということです。
つまり、自己都合退職した人が基本手当を受給できるのは、退職の日から7日間+3か月後になるということです。
したがって、自己都合退職してすぐに転職するようなケースでは、基本手当は受給できないことになります。
また、基本手当の受給期間は1年間という制限があります。1年経過後は、たとえ所定給付日数が残っていたとしても、基本手当を受給することはできなくなるので注意が必要です。
手続き
求職者給付の基本手当は、自ら手続きをしなければ受給することはできません。
具体的な手続きとして、本人の住所を管轄する公共職業安定所(ハローワーク)に離職票を提出し、失業認定を受ける必要があります。
失業認定とは、要するに求職活動をしているにも関わらず、就職できていないことをハローワークに認めてもらうことです。
この失業認定は1回で終わりではなく、基本手当の受給期間中は4週間に1度の頻度で認定を受ける必要があります。
基本手当は、働く意思と能力がある人に支給するものですから、定期的に要件を満たしているかを確認しようというわけです。
就職促進給付
基本手当の受給資格がある人が、一定の要件を満たして再就職すると「就職促進手当」が受給できます。
就職促進手当には、「再就職手当」と「就業促進定着手当」の2つがあります。
再就職手当
基本手当の支給残日数が、所定給付日数の3分の1以上ある状態で安定した職業に就くと、「再就職手当」が一時金として支給されます。
支給額は残日数に応じて変わってくるので、以下の表でおさえておきましょう。
基本手当の支給残日数 | 支給額 |
---|---|
3分の2以上 | 基本手当日額 × 支給残日数 × 70% |
3分の1以上3分の2未満 | 基本手当日額 × 支給残日数 × 60% |
すぐに再就職できた人があまり損しないように、本来受け取れたはずの基本手当の一部は支給してあげましょうという制度ですね。
就業促進定着手当
無事に再就職はしたものの、賃金が前職よりも下がってしまった人に支給されるのが、「就職促進定着給付」です。
再就職先に6か月以上勤務し、6か月間に支払われた1日当たりの賃金が前職を下回る場合に、前職との差分が一時金として支給されます。