相続・事業承継

【FP2級】相続財産の評価〜金融資産・宅地・宅地上の権利・建物の評価

*このページは2020年11月28日に更新しました。

ヤギハシ先生
ヤギハシ先生
今回は金融資産や宅地など、相続税財産の評価方法を解説します!少し長丁場になりますが、実技でも加点できるので、必ず理解しておきましょう!
今回の目標
  1. 金融資産の評価を理解する
  2. 路線価方式と倍率方式による宅地の評価を理解する
  3. 借地権や貸宅地、貸家建付地の評価を理解する
  4. 建物の評価を理解する

はじめに

納付すべき相続税の金額を算出するには、相続した財産の価値を評価する必要があります。

相続財産の評価額は、相続税法で「財産を取得した時の時価」と定められていますが、財産の種類によって時価の算出方法にルールがあります。

FP2級の試験対策としておさえておきたいのは、金融資産(預貯金や株式など)、宅地、宅地上の権利、建物の評価方法です。

順番に学習していきましょう。

金融資産等の評価

預貯金の評価

金融資産の代表例として預貯金(普通預金や定期預金)があります。

預貯金は原則として、相続開始日の預入残高が評価額となります。

少し厄介なのは普通預金と定期預金で、利子(経過利子)の扱いが異なることです。

普通預金 預入残高で評価(経過利子は加算しない)
定期預金 預入残高+源泉所得税控除後の経過利子で評価

普通預金は金利も低く、利子も大した金額にはならないので、評価の対象外にしてOKだということです。

反対に、定期預金はそこそこの利息がもらえるのだから、その分も加算して評価しましょうね、というルールになっています。

しば犬くん
しば犬くん
実際のところ、超低金利の現代では、定期預金の金利もほとんどゼロなんだけどね…。

ちなみに、外貨預金(ドルやユーロ建ての預金)は、課税時期のTTBで円換算した価額で評価します。

TTBとは、銀行が顧客から外貨を買い取るときの「買いレート」のことです。

細かい点ですが、念のためおさえておきましょう。

ゴルフ会員権の評価

ゴルフ会員権とは、会員になったゴルフ場を優先的に使える権利のことです。

取引相場があるものは、金融資産のひとつとして評価されます。

ゴルフ会員権の評価額 = 通常の取引価格 × 70%

たとえば、通常1,000万円で取引されるゴルフ会員権であれば、相続税評価額は700万円になるということです。

生命保険契約に関する権利の評価

次に、被相続人が契約していた生命保険契約の評価についてです。

例えば、被相続人が自分以外の誰かを被保険者として生命保険に加入して保険料を支払っていた場合、相続開始によりその契約に関する権利は、相続人に継承されます。

こういった生命保険契約に関する権利は、次のように評価します。

生命保険契約に関する権利 = 課税時期の解約返戻金相当額

解約返戻金とは、保険契約を中途解約した時に戻ってくるお金のことです。

払込保険料で評価するわけではないので注意しましょう。

「生命保険契約に関する権利は、既払込保険料の合計額で評価する」なんていう問題に引っ掛からないでくださいね!(答えはもちろん×です。)

上場株式等の評価

次に上場株式やETF、J-REITなどの評価方法を解説していきます。

これら上場株式等は、日々値動きがあり価値が変わります。

このため、どの時点の価額で評価するかがポイントとなります。

FP2級試験で頻出なので、しっかりルールをおさえておきましょう。

上場株式等の評価方法

次の❶〜❹のうち、最も低い価額で評価する。

  1. 課税時期の終値
  2. 課税時期の属する月の毎日の終値の平均値
  3. 課税時期の属する月の前月の毎日の終値の平均値
  4. 課税時期の属する月の前々月の毎日の終値の平均値

要するに、その日の終値、今月or前月or前々月の平均値のうち、最も低い金額を採用してOKということです。

課税時期にたまたま株価が高騰していたら、評価額が高くなって相続税の納付額も増えてしまうかもしれません。

ちょっと納得がいかないし、不公平ですよね。

そんな問題を解消するために、このようなルールがあるわけです。

個人向け国債の評価

公社債には様々な種類がありますが、FP2級対策としては、個人向け国債の評価方法をおさえておきましょう。

個人向け国債の評価額 = 中途解約した場合に金融機関から支払われる価額

宅地の評価

宅地の評価単位

宅地とは住宅用の敷地のことです。

宅地の評価は、登記上の1筆ごとにではなく、利用の単位となる1区画の宅地ごとに評価を行います。

要するに、ひとつの建物の敷地が登記上では複数の地番にまたがっていても、同じ建物に利用されている宅地として一体で評価するということです。

宅地の評価方法

宅地の評価方法には、路線価方式と倍率方式があります。

路線価方式 道路ごとに定められた1㎡あたりの標準的な価額に基づき評価する方法
倍率方式 固定資産税評価額×国税局長が定めた倍率で評価する方法

どちらの方式で評価するかは、宅地の所在地により国税局長が指定しています。

納税者が自由に選択できるわけではないので注意しましょう。

カピバラくん
カピバラくん
どうして場所によって評価方法が違うんだ?
ヤギハシ先生
ヤギハシ先生
基本的には路線価方式を使うんだけど、路線価は全ての道路に定められているわけではないんだ。たとえば地方部では路線価がないことが多い。そういった地域では倍率方式で評価するということになるね。

路線価方式

ここからは路線価方式による宅地の評価方法について、詳しく学習していきます。

次の3つのパターンの評価方法をおさえておきましょう。

  1. 1つの道路にのみ面している場合
  2. 角地で2つの道路に面している場合
  3. 正面と裏面の道路に面している場合
<❶1つの道路にのみ面している場合>

最も単純なのがこのケースです。

評価対象の宅地が1つの道路にのみ面している場合、次のように計算します。

評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 地積

路線価に奥行価格の補正を行い、地積を乗じることで評価額を算出します。

奥行価格補正率とは、道路からの奥行が短かったり、長くて利用価値の低い土地の評価を減額補正するものです。

地積というのは面積のことです。

具体例で解説していきます。

次の土地を路線価方式で評価してみましょう。

路線価を奥行価格補正率で補正し、地積を乗じて算出します。

300千円×0.95×200㎡=57,000千円

つまり、この土地の評価額は5,700万円になるということです。

カピバラくん
カピバラくん
そんなに難しくないな
<❷角地で2つの道路に面している場合>

次に、角地で2つの道路に面している土地の評価方法です。

2つの道路に面しているわけですから、1つの道路に面している場合よりも利用価値は高くなりますよね。

このため、1つの道路に面している土地と比較して、評価額は少し高くなります。

具体的には次のような計算式で算出します。

評価額 = (正面路線価 × 奥行価格補正率 + 側面路線価 × 奥行価格補正率 × 二面路線影響加算率)× 地積

カピバラくん
カピバラくん
ん?急に複雑になったな…

一見複雑な計算式に見えますが、実はそれほど難しくありません。

具体例で解説していきます。

次の土地を路線価方式で評価してみましょう。

奥行補正率を乗じた金額が大きい方が正面路線価です。

したがって、300千円の方が正面路線価、200千円の方が側面路線価になりますね。

奥行補正率が2つありますが、正面路線価の奥行補正率が0.95、側面路線価の奥行補正率が1.00(補正なし)となります。

以上の前提のもと、先ほどの計算式に当てはめると評価額は次のように算出できます。

(300千円×0.95+200千円×1.00×0.03)×600㎡=174,600千円

したがって、1億7,460万円の評価額ということになります。

しば犬くん
しば犬くん
考え方を理解すれば、計算は決して難しくありません。実技試験対策にもなるので、必ず解けるようにしておきましょう!
<❸正面と裏面の道路に面している場合>

最後に、宅地の正面と裏面が道路に面している土地の評価方法です。

早速、計算式を見ていきましょう。

評価額 = (正面路線価 × 奥行価格補正率 + 裏面路線価 × 奥行価格補正率 × 二方路線影響加算率)× 地積

考え方は角地とほぼ同じです。

側方路線価が裏面路線価に、側方路線影響加算率が二方路線影響加算率という言葉に変わっただけですね。

今回も具体例で解説していきます。

次の土地を路線価方式で評価してみましょう。

正面路線価は300千円、裏面路線価は200千円になります。

計算式に当てはめてみましょう。

(300千円×0.95+100千円×0.95×0.03)×400㎡=115,140千円

したがって、1億1,514万円がこの土地の評価額ということになります。

奥行価格補正以外にも、間口が狭小である土地、がけ地、不整形な土地などは、一定の補正率で評価額が減額されます。
計算方法を覚える必要はありませんが、理解はしておきましょう。

倍率方式

路線価が定められていない地域では、倍率方式により評価をします。

倍率方式

固定資産税評価額 × 国税局長の定めた倍率

たとえば、固定資産税評価額が2,000万円で、倍率が1.1倍の地域の場合、評価額は2,200万円(2,000万円×1.1)になります。

ちなみに、固定資産税評価額は既に土地の個別事情を折り込み済みなので、宅地の形状による補正(奥行や不整形な土地の減額補正)は行いません。

路線価方式と比べると計算方法は単純ですね。

宅地上の権利の評価

宅地は自ら使用するだけでなく、借地権など他人の権利付きのケースもあります。

ここからは、そういった宅地上の権利形態に応じた評価方法を解説します。

ヤギハシ先生
ヤギハシ先生
ちょっと疲れてきたと思うけど、ココからが大事です!

自用地の評価

自用地とは所有者以外に使用する権利を有する者がいない土地のことです。

自用地の場合は、路線価方式や倍率方式の評価がそのまま評価額となります。

次の点をおさえておきましょう。

  • 青空駐車場は自用地として評価する
  • 使用貸借により貸付けている敷地等は自用地として評価する
  • 宅地の所有者のみが通行している私道は自用地として評価する
    (不特定多数の者が通行している私道は評価額ゼロ)

使用貸借とは、無償で誰かに土地を貸すことです。

賃料を徴収している場合とは評価方法が異なるので、注意が必要してください。

借地権(普通借地権)の評価

借地権とは、地主から土地を借りて使用する権利のことです。

土地そのものを保有していなくても、借地権を有する場合は相続税評価の対象となります。

借地権の評価方法は次のとおりです。

借地権の評価額 = 自用地評価額 × 借地権割合

借地権割合とは、建物の価値に占める借地権の割合のことで、国税庁が地域によって30%〜90%の割合で定めています。

基本的には都心ほど借地権割合が高くなる傾向にあります。

たとえば、借地権割合が70%の地域における自用地評価額3,000万円の宅地の評価額は、2,100万円(3,000万円×70%)になるということです。

貸宅地の評価

貸宅地とは、借地権が設定されている土地のことです。

他人の権利が付いた土地ですから、自用地よりも評価額は低くなります。

評価方法は次のとおりです。

貸宅地の評価額 = 自用地評価額 ×(1 − 借地権割合)

要するに借地権の評価分だけ、評価額が低くなるということです。

たとえば、自用地評価額4,000万円、借地権割合60%の貸宅地の評価額は、1,600万円(4,000万円×(1−60%))になるということです。

借地権と貸宅地の評価額の関係を理解するために、次の練習問題をみてみましょう。

Aさんの土地(貸宅地)とBさんの借地権の評価額を算出してください。

まず、Aさんの貸宅地の評価額は、

6,000万円×(1−70%)=1,800万円 となります。

次に、Bさんの借地権の評価額は、

6,000万円×70%=4,200万円 となります。

しば犬くん
しば犬くん
貸宅地と借地権の評価額を合わせると自用地評価額になるんだね!

貸家建付地の評価

貸家建付地とは、宅地の所有者が建物を建築し、その建物を貸し付けている場合の宅地のことです。

要するに、賃貸アパートの敷地のことです。

貸家建付地は次のように評価します。

貸家建付地の評価額 = 自用地評価額 × (1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

借家権割合とは、建物に対する借家権の割合のことで、全国一律30%と決まっています。

機械的に覚えてしまいましょう。

賃貸割合とは、入居率のことです。

賃貸アパートが満室であれば賃貸割合は100%、入居率が半分であれば50%となります。

今回も練習問題を見てみましょう。

Aさんの土地(貸家建付地)の評価額を算出してください。

先ほどの式に当てはめると、評価額は次のようになります。

5,000万円×(1−60%×30%×100%)=5,000万円×82%=4,100万円

今回は満室(賃貸割合100%)でしたが、たとえば入居率が8割のアパートでは賃貸割合80%で計算することになります。

しば犬くん
しば犬くん
難しく感じるかもしれないけど、貸家建付地の計算はFP2級で頻出です!計算方法は必ずマスターしておこう!

今回学習したとおり、貸家建付地は自用地と比べて評価額が低くなります。このため、賃貸アパートは資産家の相続対策として利用されることがあります。評価額が下がれば、相続税の負担も少なくなりますからね!

建物の評価

最後に建物の評価方法です。

自用家屋と貸家の評価方法を解説していきます。

カピバラくん
カピバラくん
おいおい、まだ続くのか?こっちはもうヘトヘトだぞ
ヤギハシ先生
ヤギハシ先生
ごめんごめん!あとちょっとだから、もう少しだけ頑張って!

自用家屋の評価

自用家屋とは、賃貸をせずに自ら使用する建物のことです。

自用家屋は固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になります。

面倒な計算がないので簡単ですね!

  • 電気やガス、給排水設備など家屋の構造上一体となっている設備は、家屋の評価に含めて評価する
  • 建築中の家屋は、それまでに要した建築費用×70%で評価する

貸家の評価

貸家とは所有する建物を他人に貸しているケースを指します。

賃貸アパートをイメージすると分かりやすいでしょう。

貸家の評価額は次のとおり算出します。

貸家の評価額 = 固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合)

自用家屋と同じく固定資産税評価額がベースとなりますが、誰かに賃貸していると用途が限定されるため、自用家屋よりも評価が低くなります。

貸家建付地のところで学習したとおり、借家権割合は全国一律30%でしたね。

また、賃貸割合とは入居率のことでした。

たとえば、固定資産税評価額が8,000万円で入居率が90%の賃貸アパートの評価額は、次のように計算します。

8,000万円×(1−30%×90%)=8,000万円×73%=5,840万円

貸家建付地と同様、貸家の評価額も計算できるようにしておきましょう!

まとめ

最後に各種相続財産の評価方法を整理しておきましょう。

<金融資産の評価>

普通預金 預入残高(経過利子は加算しない)
定期預金 預入残高+源泉所得税控除後の経過利子
ゴルフ会員権 通常の取引価格 × 70%
上場株式
ETF
J-REIT
次の❶〜❹のうち、最も低い価額で評価する
❶課税時期の終値
❷課税時期の属する月の毎日の終値の平均値
❸課税時期の属する月の前月の毎日の終値の平均値
❹課税時期の属する月の前々月の終値の平均値
個人向け国債 中途解約した場合に金融機関から支払われる価額

<宅地の評価>

路線価方式 路線価 × 奥行価格補正率 × 地積
*面している道路が2つ以上ある場合は評価額を加算
倍率方式 固定資産税評価額 × 国税局長が定めた倍率

<宅地上の権利の評価> *ココが最重要!

借地権 自用地評価額 × 借地権割合
貸宅地 自用地評価額 × (1 − 借地権割合)
貸家建付地 自用地評価額 × (1 − 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合)

<建物の評価>

自用家屋 固定資産税評価額
貸家 固定資産税評価額 × (1 − 借家権割合 × 賃貸割合)
カピバラくん
カピバラくん
やっと終わりか。今回はほんとに疲れたぞ…
ヤギハシ先生
ヤギハシ先生
おつかれさま!今回頑張った分、確実に合格に近づいたと思うよ!次回は「小規模宅地等の評価の特例」を解説します。次回はそんなに長くならないから安心してね(笑)

>>小規模宅地等の評価の特例