*このページは2020年10月3日に更新しました。
- 相続税の課税財産と非課税財産を理解する
- 生前贈与加算の仕組みを理解する
- 債務控除と葬儀費用の扱いを理解する
相続税の課税財産
本来の相続財産
相続や遺贈によって、金銭に見積もることができる経済的な価値のある財産を取得すると相続税の課税対象となります。
例えば、銀行預金や不動産、有価証券、自身が経営する会社の株式などが相続税の課税対象になるわけです。
このような財産を「本来の相続財産」と言います。
このうち不動産は、所有権の移転登記の有無は関係なく、相続税の課税対象になります。
被相続人が生前に土地や建物を購入して、登記完了前に亡くなったとしても、その土地や建物を相続する以上、相続税の課税対象になるというわけです。
一方で、抵当権や質権は相続税の課税対象にはなりません。
抵当権や質権は主たる権利を担保するために設定するものであり、それ単独では財産を構成しないからです。
- 土地や建物は、所有権の移転登記が未済でも相続税の課税対象
- 抵当権や質権は、相続税の課税対象にはならない
みなし相続財産
「みなし相続財産」とは、本来の相続財産ではないものの、実質的な相続財産として相続税の課税対象になる財産のことです。
本来の相続財産とみなし相続財産の違いは、遺産分割の対象になるかどうかという点です。
本来の相続財産と異なり、みなし相続財産は受取人固有の財産とされるため、遺産分割の対象にはなりません。このため、相続を放棄した者でも受け取ることができます。
つまり、「みなし相続財産」は遺産分割の対象外ではあるものの、相続税の課税対象にはなるということです。
具体的には次のようなものが「みなし相続財産」とされます。
生命保険金(死亡保険金) | 契約者および被保険者が被相続人である生命保険契約が対象 |
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退職手当金(死亡退職金) | 被相続人の死亡後3年以内に支払いが確定したものが対象 |
上の表のとおり、生命保険金(死亡保険金)は、みなし相続財産として相続税の課税対象になります。
一方で、交通事故で死亡した被害者の遺族が、加害者の対人賠償保険から受け取った保険金は、相続税は非課税のため違いを整理しておきましょう。
また、退職手当金の「死亡後3年以内に支払いが確定」というのは頻出なので、必ず押さえておく必要があります。
ちなみに3年経過後に確定した退職手当金(死亡退職金)は、相続税ではなく所得税の課税対象になります。
生前贈与加算
生前贈与加算とは
相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた財産(生前贈与財産)は、贈与時の価額により相続財産に加算されます。
そのとき、支払い済の贈与税額は相続税額から差し引かれます。
要するに、相続開始前3年以内の贈与をなかったことにして、相続により財産を取得したことにするというイメージです。
被相続人が亡くなる直前の生前贈与によって、相続財産を減らす行為を防止するための取扱いになります。
このような取扱いを「生前贈与加算」と言います。
「結婚・子育て資金の一括贈与」を受けた財産に残額がある状態で贈与者が亡くなった場合は、その残額が相続税の課税価額に加算されます。
また、「教育資金の一括贈与」を受けた財産に残額がある状態で贈与者が亡くなった場合、次のいずれかに該当する場合を除き、相続税の課税価額に加算されます。
- 受贈者が23歳未満である場合
- 受贈者が学校等に在学している場合
- 受贈者が教育訓練給付金の対象となる教育訓練を受給している場合
生前贈与加算の例外
相続開始前3年以内の贈与であっても、生前贈与加算の対象外になるケースがあります。
- 受贈者が相続により財産を取得しなかった場合
- 相続時精算課税制度の適用を受けた場合
- 贈与税の配偶者控除を受けた場合
- 直系尊属からの住宅資金等の贈与を受けた場合の非課税の特例を受けた場合
相続時精算課税制度や贈与税の配偶者控除、直系尊属からの住宅資金等の贈与の非課税について、忘れてしまったという人はしっかり復習しておきましょう。
債務控除と葬儀費用
債務控除
通常、借入金など被相続人が残した債務(マイナスの資産)は、相続財産から控除することができます。
つまり、現預金1億円と借入金2千万円を相続する場合、資産と債務の差額である8千万円が相続税の課税対象になるわけです。
このように、相続税を計算する際に、プラスの資産から債務を差し引くことを「債務控除」といいます。
例えば、相続財産の中に、銀行借入金や未払の医療費、所得税・固定資産税などの未払税金があった場合は、債務控除することで相続税の負担を減らすことができることになります。
ただし、債務によっては債務控除の対象にならないものがあります。
ここがFP2級試験で問われますので、しっかり押さえておきましょう。
- 被相続人が生前に購入した墓地や暮石の未払金
- 保証債務
- 遺言執行費用
- 税理士や弁護士に対する相続税の申告費用
葬儀費用
被相続人の葬儀に要した費用(葬儀費用)には、相続財産から控除できるものと控除できないものがあります。
例えば、通夜、葬儀、火葬、埋葬、納骨に要した費用、お寺へのお布施に要した費用などは、相続財産から控除することができます。
一方で、香典返し費用や、法要費用、死体の解剖費用などは、相続財産から控除することはできません。
葬儀費用の取扱いについては、次の表で整理しておきましょう。
控除できるもの | ・通夜、葬式、埋葬、火葬、納骨の費用 ・お寺へのお布施、戒名料 ・死体の捜索、運搬費用 |
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控除できないもの | ・香典返礼費用 ・初七日、四十九日等の法要費用 ・死体の解剖費用 ・死後における墓地などの購入費用 |
重要なのは「控除できないもの」の方です。
特に香典返礼費用と法要費用が控除できないことは、しっかり押さえておきましょう。
まとめ
最後に今回の学習の重要ポイントをまとめておきます。
- 土地や建物は、所有権の移転登記が未済でも相続税の課税対象
- 相続を放棄しても、生命保険金を受け取れば相続税の課税対象(みなし相続財産)
- 死亡後3年以内に支払いが確定した死亡退職金は相続税の課税対象(みなし相続財産)
- 生前贈与加算は「贈与時の時価」で計算
- 相続時精算課税制度、配偶者控除、直系尊属からの住宅資金の非課税の特例を受けた場合は、生前贈与加算の対象外
- 墓地や暮石の未払金、遺言執行費用は債務控除の対象外
- 香典返礼費用、法要費用(初七日、四十九日など)は、相続財産から控除できない