*このページは2020年10月28日に更新しました。
- 相続税算出までの流れを理解する
- 遺産に係る基礎控除額が計算できるようになる
- 相続税の2割加算と各種税額控除を理解する
相続税算出までの流れ
はじめに言っておくと、相続税の算出方法はひじょーに複雑です。
簡単に理解できるものではありません。
でも安心してください。
FP2級の試験では詳細な知識を問われることはありませんので、試験に出るポイントだけ押さえて、全体の流れはざっくり理解しておけば大丈夫です。
早速全体の流れを見ていきましょう。
ステップ❶課税価格の合計額
まずは被相続人の財産から、「課税価格の合計額」を算出します。
「課税価格の合計額」は次のようにして求めます。
<加算するもの>
本来の相続財産、みなし相続財産、相続開始前3年以内の贈与財産、相続時精算課税制度による贈与財産
<減算するもの>
非課税財産、債務費用、葬式費用
ステップ❷課税遺産総額
次に、課税遺産総額から「遺産に係る基礎控除額」を差し引いて「課税遺産総額」を算出します。
遺産に係る基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
ステップ❸相続税の総額
次に、課税遺産総額を法定相続分に沿って按分した場合の、各相続人の税額を算出します。
たとえば、課税遺産総額が1億円、法定相続人が妻と子2人の場合、妻が5,000万円、2人の子が2,500ずつ相続したものとして、各人の相続税額を算出するということです。
その後、各人の相続税額を合計して「相続税の総額」を求めます。
相続税は累進課税となっており、相続財産が多いほど税率が高くなります。
2020年4月1日現在の相続税率は以下の通りです。
法定相続分に応じる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | ー |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
(出典:国税庁HP)
*この税率表を暗記する必要はありません。計算問題が出題される場合は、必ず問題用紙に税率表が示されます。ただし、相続税の最高税率が55%ということだけは、念のため押さえておきましょう。
ステップ❹各相続人の相続税額
ステップ❸で算出した相続税の総額について、実際に取得した課税価格の割合に応じて各相続人に振り分けます。
たとえば、相続税の総額が5,000万円だったとして、相続人Aさんが全体の40%の財産を取得していた場合、5,000万円×40%=2,000万円がAさんの負担になります。
そして最後に、相続人ごとに相続税の加算・控除を行って、各人の納付税額が決定します。
<各人の相続税に加算するもの>
相続税額の2割加算
<各人の相続税から控除するもの>
贈与税額控除、配偶者に対する相続税額の軽減、未成年者控除、障害者控除
以上が相続税算出までのざっくりとした流れです。
繰り返しになりますが、現時点ではなんとなく流れを理解して入れば十分です。
FP2級試験の頻出ポイントは、この後分かりやすく解説していきます。
遺産に係る基礎控除額
遺産に係る基礎控除額の計算式
ここからはステップ❷で触れた「遺産に係る基礎控除額」について、詳しく解説します。
まずは以下の計算式をしっかり覚えておきましょう。
遺産に係る基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
たとえば、被相続人に妻と3人の実子がいた場合、法定相続人は4人になりますね。
このケースでは、遺産に係る基礎控除額は、5,800万円(3,000万円+600万円×4人)となります。
つまり、仮に課税価格の合計額が8,000万円であれば、差引3,200万円(8,000万円ー5,800万円)が課税遺産総額となるということです。
では、課税価格の合計額が4,000万円であった場合はどうでしょう。
このケースでは、課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額未満であるため、課税遺産総額はゼロとなります。
要するに相続税は発生しないということです。
よく「相続税は金持ちの税金だ!」なんて言われるとおり、課税価格の合計額が少なければ相続税は無縁ということですね。
法定相続人が1人もいない場合、遺産に係る基礎控除額は3,000万円になります。ゼロ円にはならないので注意しましょう。
「法定相続人の数」の考え方
遺産に係る基礎控除額の計算式はシンプルなのですが、若干分かりにくいのが、「法定相続人の数」の考え方です。
次のポイントを押さえておきましょう。
- 相続を放棄した者も法定相続人の数に含める
- 普通養子は2人までを法定相続人にカウントできる
- 被相続人に実子がいる場合、普通養子は1人までしか法定相続人の数にカウントできない
相続税の2割加算と税額控除
ここからはステップ❹で解説した、各人の相続税に加算するもの、相続税から控除するものを学習していきます。
相続税の2割加算
加算するもので唯一押さえておくべきなのは「相続税の2割加算」です。
「相続税の2割加算」とは、相続や遺贈により財産を取得した人が、被相続人の1親等の血族または配偶者以外であった場合、その人の相続税額を2割増しにする制度です。
「1親等以外」には、兄弟姉妹や孫などが該当します。
このうち孫に関しては、次の点がFP2級で問われるため、正しく理解しておきましょう。
- 被相続人の養子となった孫(孫養子)は、2割加算の対象となる
- 代襲相続人である孫は、2割加算の対象にはならない
配偶者に対する相続税額の軽減
ここからは相続税から控除できるものを学習していきます。
まず「配偶者に対する相続税額の軽減」ですが、これが最も重要です。
「配偶者に対する相続税額の軽減」とは、その名のとおり、被相続人の配偶者に限定して特別に相続税を軽減してあげようという制度です。
具体的には、次のような軽減措置を受けることができます。
- 配偶者は、法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額まで、相続や遺贈により財産を取得しても相続税がかからない。
要するに、配偶者が取得した財産が1億6,000万円以内であれば無条件に相続税はゼロ、それを超えても法定相続分までの金額であれば相続税はゼロになるということです。
被相続人の財産は、ある意味で配偶者と共同で築き上げた財産と言えるわけですから、配偶者に対する相続税は軽減してあげようという趣旨の制度になります。
重要なのは、婚姻期間の条件は無いということです。
つまり、結婚してすぐに相続が発生したとしても、適用を受けることができます。
ただし、内縁の妻は対象外なので注意しましょう。
- 贈与税の配偶者控除 … 婚姻期間20年以上が条件!
- 配偶者に対する相続税額の軽減 … 婚姻期間は問わない!
贈与税額控除
次に「贈与税額控除」を解説します。
相続開始前3年以内の贈与財産と、相続時精算課税制度を利用した贈与財産は、相続税の課税価格の合計額を算出するとき(ステップ❷)に加算されます。
しかし、これらの財産は既に贈与税を支払い済みであり、相続税まで課せられると税金が二重でかかってしまいますよね。
このため、既に支払った贈与税の金額分は相続税の金額から差し引くことができます。
この制度が「贈与税額控除」です。
贈与税額控除の対象は次の2つ!
- 相続開始前3年以内の贈与財産
- 相続時精算課税制度を利用した贈与財産
未成年者控除
「未成年者控除」とは、相続人が20歳未満の法定相続人である場合、その人の相続税額から一定金額を控除できる制度です。
未成年者控除額 = (20歳ー相続時の年齢) × 10万円
例えば、相続人が10歳の法定相続人であれば、(20歳ー10歳)×10万円=100万円が相続税額から控除できるということです。
障害者控除
「障害者控除」とは、相続人が障害者の法定相続人である場合、その人の相続税額から一定金額を控除できる制度です。
障害者控除額 = (85歳ー相続時の年齢) × 10万円
*特別障害者×20万円
例えば、相続人が30歳の障害者(法定相続人)であれば、(85歳ー30歳)×10万円=550万円が相続税額から控除できるということです。
相次相続控除
「相次相続控除(そうじそうぞくこうじょ)」とは、10年以内に2回以上相続が発生した場合に、1回目の相続税の一定金額を2回目の相続税から控除できる制度です。
外国税額控除
「外国税額控除」とは、外国の財産を相続した人が、既に外国で相続税に相当する税金を課せられている場合に、その分を日本の相続税から控除できる制度です。
二重課税を防ぐための制度になります。
まとめ
最後に今回の学習のポイントを整理しておきましょう。
- 遺産に係る基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数
- 「法定相続人の数」の考え方は、生命保険の非課税金額と同じ
- 孫養子は「相続税の2割加算」の対象
- 代襲相続人である孫は「相続税の2割加算」の対象外
- 配偶者は、法定相続分または1億6,000万円のいずれか多い金額までは相続税がかからない
- 贈与税額控除の対象は、相続開始前3年以内の贈与財産と、相続時精算課税制度を利用した贈与財産
- 未成年者控除額=(20歳ー相続時の年齢)×10万円
- 障害者控除額=(85歳ー相続時の年齢)×10万円