*このページは2020年11月7日に更新しました。
- 相続税の申告方法を理解する
- 延納・物納をするための条件を理解する
- 準確定申告を理解する
相続税の申告
前回の学習では相続税の計算方法を学習しました。
計算の結果、相続税が発生する場合には、所定の期限までに申告書を提出し、相続税を納付しなければなりません。
FP2級試験で問われるのは、申告の期限と申告先です。
次の点を押さえておきましょう。
- 相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告しなければならない
- 申告書の提出先は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署長(相続人の住所地ではない!)
原則として納付税額がゼロの場合は申告は不要です。
ただし、例外として次のケースでは納付税額がゼロであっても申告が必要になるので注意しましょう。
- 配偶者に対する相続税額の軽減を受けている場合
- 小規模宅地等の相続税の課税価格の特例を受けている場合
「配偶者に対する相続税額の軽減」を忘れてしまったという人は、しっかり復習しておきましょう。>>相続税の計算
「小規模宅地等の相続税の課税価格の特例」に関しては、また別の機会に解説しますね。
申告した相続税額に誤りがあった場合、後から修正することができます。
次の2つの言葉を覚えておきましょう。
- 修正申告…過少に申告していた税額を改めること
- 更正の請求…過大に申告していた税額を改め、支払った相続税額の一部の還付を求めること
修正申告に関しては、不足していた税額について延滞税がかかります。
延滞税を支払いのは勿体ないので、最初から正確に申告したいところですね。
延納と物納
原則は金銭一括納付
相続税は原則として金銭で一括納付しなければなりません。
ただし、金銭一括納付が困難な場合には、延納を選択することができ、延納も難しいときは物納を選択することができます。
延納や物納はあくまで例外であり、金銭一括納付が原則です。
延納
延納とは、相続税を分割で納めることです。
金銭一括納付が困難で、相続税額が10万円超の場合は、申告期限までに延納申告書を提出して許可を受けることで、延納を選択することができます。
10万円超というのがポイントです。
10万円くらいなら、なんとかして金銭一括納付できるでしょ?という趣旨です。
延納が認められるためには、それ以外にもいくつか要件があります。
次のポイントを押さえておきましょう。
- 延納期間は、原則として最長5年
- ただし、相続財産に不動産の割合が高い場合は、最長で20年
- 原則として担保の提供が必要
- ただし、延納税額が100万円未満かつ延納期間が3年以内であれば担保は不要
原則と例外の両方を理解しておきましょう。
提供する担保は、相続財産に限らず、相続人固有の財産でも認められます。
また、延納を選択した場合、延納期間に応じて利子税の支払いが必要になります。
延納期間が長いほど利子税の支払金額も多くなるわけです。
物納
物納とは、金銭ではなく、相続により取得した財産そのものによって納付する方法です。
金銭一括納付でも延納でも納付が困難な場合に、申告期限までに物納申請書を提出して許可を受けることで、はじめて物納を選択することができます。
ただし、どんな財産でも物納できるわけではなく、物納できる財産を「物納的確財産」と言います。
物納的確財産には優先順位があります。
次のポイントを押さえておきましょう。
<物納適格財産>
第1順位 | 国債、地方債、不動産、上場株式・社債・投資信託、船舶など |
---|---|
第2順位 | 非上場の株式・社債・投資信託など |
第3順位 | 動産 |
つまり、国債と動産を相続した人が物納をする場合は、第1順位の国債の方を物納しなければならないということです。
また、物納適格財産であっても、担保(抵当権や質権)が設定されている不動産や、譲渡制限がある株式などは物納の対象にすることはできません。
加えて相続時精算課税制度による贈与財産も、物納はできない決まりになっています。
少し整理しておきましょう。
- 抵当権や質権などの担保が設定されている不動産
- 譲渡制限株式
- 相続時精算課税制度による贈与財産
物納財産の収納価格は、相続税評価額となります。
「小規模宅地等の評価減の特例」を適用した土地を物納する場合は、特例適用後の低い評価額で収納されることも覚えておきましょう。
準確定申告
最後に「準確定申告」について解説します。
「準確定申告」とは、亡くなった被相続人の代わりに相続人が確定申告をすることです。
確定申告は、本来であれば前年の所得に応じて本人が実施しなければなりませんが、本人が亡くなってしまった場合は相続人が代わりに申告をしなければなりません。
準確定申告は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に実施する必要があります。
- 相続の限定承認・放棄…3か月以内
- 相続税の申告…10か月以内
- 準確定申告…4か月以内
まとめ
最後に今回の学習のまとめです。
- 相続税は相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内に申告しなければならない
- 申告書の提出先は、被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署長
- 延納は、相続税額が10万円超であることが条件
- 延納期間は、原則として最長5年(相続財産に不動産の割合が高い場合は、最長20年)
- 延納は、延納税額が100万円未満かつ延納期間が3年以内であれば担保は不要
- 物納できる財産は、物納的確財産(不動産、株式、動産など)に限定される
- 物納財産の収納価格は、相続税評価額で評価
- 準確定申告は、相続開始を知った翌日から4か月以内に実施する必要あり