相続・事業承継

相続時精算課税制度〜財産を前渡しするための制度〜

ヤギハシ先生
ヤギハシ先生
今回は「相続時精算課税制度」を学習します。少しややこしいけど、FP2級試験では超頻出!ポイントをおさえれば確実に点数が取れるから頑張ろう!

相続時精算課税制度とは

子や孫に相続財産を前渡しするための制度

贈与税の基本」では、贈与税の税率はとても高いという話をしました。

一般的に税率は贈与税>相続税となっているため、基本的には贈与よりも相続で財産を取得した方が納税負担は少なくて済むことが多くなります。

このため多くの資産家は、相続を中心に子や孫へ財産を移転するわけですが、一方で相続を待っていては、次世代への財産の移転がなかなか進まないという課題があります。
特に日本は超高齢化社会で平均余命も世界一ですからね。

この課題に対応するために創設されたのが「相続時精算課税制度」です。

受贈者の「相続時精算課税制度」を選択すると、
父母または祖父母からの贈与のうち、2,500万円までは贈与税が課税されません。
代わりに贈与者の相続開始とともに他の相続財産と合算されて相続税が課税されることになります。

つまり、贈与なのにも関わらず、税率が高い贈与税ではなく、税率が低い相続税の支払いで済むことになるわけです。

しばいぬ君
しばいぬ君
イメージとして「子や孫に相続財産を前渡しするための制度」と覚えておくと良いよ!

2,500万円を超えた分は一律20%の贈与税

繰り返しになりますが、相続時精算課税制度を選択すると、2,500万円までは贈与税ではなく、将来の相続税の課税対象になります。

では、贈与額が2,500万円を超えるとどうなるか。
2,500万円を超えた部分については、一律20%の税率で贈与税が課税されます。

例えば3,000万円の贈与を受けた場合、(3,000万円−2,500万円)×20%=100万円の贈与税を納税することになります。

暦年課税の贈与税の最高税率は55%の累進課税ですから、それに比べれば納税額は少なく済むケースは多いと言えるでしょう。

利用するための条件

60歳以上の父母・祖父母からの贈与が条件

「相続時精算課税制度」は誰でも利用できるわけではありません。
次の条件を確認しておきましょう。

  • 贈与者は60歳以上の父母または祖父母であること
  • 受贈者は贈与があった年の1月1日時点で20歳以上の推定相続人である子(代襲相続人を含む)か、20歳以上の孫であること

ただし、2021年3月31日までに住宅取得資金の贈与を受ける場合は、特別に贈与者の年齢要件がなくなります(受贈者の要件は変わりません)。
住宅取得資金の贈与に限って、例えば55歳の父から25歳の息子への贈与でも制度を利用できるわけです。

しばいぬ君
しばいぬ君
細かいところだけど「1月1日時点で20歳以上」というところはおさえておこう。「贈与時点」ではないことに注意!

父と母それぞれに適用できる

「相続時精算課税制度」は受贈者が贈与者ごとに選択できます

つまり、父と母の両方に適用することも、父にだけ適用して母からの贈与は通常の暦年課税とすることも可能です。
また、年齢要件を満たしていれば兄妹、或いは子と孫がそれぞれ制度を利用することもできます。

例えば、2人兄弟がそれそれ父母両方に「相続時精算課税制度」を適用すれば、合計で1億円まで贈与税ゼロで贈与を受けることができるわけです。

適用を受けるたのの手続き

「相続時精算課税制度」の適用を受けるためには、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までの間に、相続時精算課税制度選択届出書を提出しなければなりません。

届出書は、贈与額の合計が2,500万円以下で、結果的に贈与税額がゼロであったとしても必ず提出しなければなりません。提出しなかった場合は、通常の暦年課税により贈与税が課税されます。

重要なポイントは、「相続時精算課税制度」は一度選択したら取り消しすることができないということです。暦年課税には二度と戻ることができません。

このため、「相続時精算課税制度」の選択は慎重に検討する必要があります。

カピバラ君
カピバラ君
暦年課税の方が良いことなんてあるのか?
ヤギハシ先生
ヤギハシ先生
暦年課税のメリットは110万円の基礎控除があることだよ。だから毎年110万円以下の少額贈与であれば、暦年課税のままにしておいた方が有利なケースがあるんだ!

相続発生時の対応

贈与者に相続が発生した場合、これまでに受け取った贈与財産とそれ以外の相続財産を合算して相続税額を計算し、そこから既に支払った贈与税を控除した金額を相続税として納付することになります。

ここで言う「既に支払った相続税」とは、2,500万円超の贈与に対して一律20%で課税される贈与税のことです。

重要なのは、相続財産と合算する贈与財産の価額は、贈与時の時価であることです。
相続時の時価ではないことに注意しましょう。

カピバラ君
カピバラ君
よくわからん。贈与時の時価だと何か良いことあるのか?
ヤギハシ先生
ヤギハシ先生
例えば、贈与時点で5,000万円の時価だった株式が、相続時点で8,000万円に値上がりしていたとする。この時、相続税の計算上は5,000万円の価値として計算できるから、その分相続税の納税額が少なくて済むんだ!

まとめ

最後に、FP2級試験の頻出項目を中心にまとめです。

相続時精算課税制度まとめ
  • 2,500万円まで贈与税が課税されない(超えた分は一律20%で課税)
  • 贈与者は60歳以上の父母または祖父母、受贈者は1月1日時点で20歳以上の子か孫
  • 一度選択したら取消し不可で、二度と暦年課税には戻れない
  • 相続税に加算される贈与財産の価額は贈与時の時価
ヤギハシ先生
ヤギハシ先生
おつかれさまでした。相続時精算課税制度の問題は出題傾向がはっきりしているから、「まとめ」のポイントは必ずおさえておこう。次回からは贈与税の特例を学習していくよ。