不動産

居住用財産の譲渡の特例〜3,000万円特別控除、軽減税率の特例、特定の居住用財産の買換えの特例、譲渡損失の損益通算・繰越控除

*このページは2020年4月4日に更新しました

ヤギハシ先生
ヤギハシ先生
今回は居住用財産の譲渡の特例を解説していきます。FP2級では、学科・実技ともに重要だからしっかり付いてきてね!
今回の目標
  1. 居住用財産の譲渡損失の特例(4つ)の内容を理解する
  2. 各特定の適用要件の違いを整理する
  3. 特例を使った税額の計算ができるようになる

居住用財産の譲渡の特例とは

不動産を譲渡して利益が出ると譲渡所得として課税対象になりますが、
譲渡資産が居住用不動産(マイホーム)の場合には、譲渡所得の控除が受けられたり、税率を低くしてもらえる特例があります。

こういった特例はまとめて「居住用財産の譲渡の特例」といわれています。

具体的には次の4つの特例があります。

  1. 3,000万円の特別控除
  2. 軽減税率の特例
  3. 特定の居住用財産の買換えの特例
  4. 譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例
カピバラくん
カピバラくん
うぅ…すでに戦意を喪失しているんだが
ヤギハシ先生
ヤギハシ先生
気持ちは分かる(笑)分かりやすく解説するからがんばって!

4つの特例の共通要件

特例は無条件に利用できるわけではありません。

これらの特例を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

特例を受けるための共通要件
  • 過去3年に特例の利用がないこと(3年に1回しか利用できない)
  • 特別関係者(配偶者、直系血族など)への譲渡ではないこと
  • 居住の用に供さなくなった日の3年後の12月31日までの譲渡であること

まずはこの点を押さえたうえで、それぞれの特例を学習していきましょう。

居住用財産の3,000万円の特別控除

居住用財産の3,000万円の特別控除とは、居住用財産の譲渡で得られた譲渡所得から3,000万円を控除できる特例です。

課税譲渡所得金額 = 譲渡所得金額 ー 3,000万円

課税所得金額が5,000万円であれば、3,000万円を控除した残り2,000万円が課税対象になるということです。

譲渡所得金額が3,000万円以下であれば、全く課税されないということになります。

居住用財産の土地・建物ともに夫婦の共有名義になっている場合は、夫と妻それぞれ3,000万円の特別控除を受けることができます(合計6,000万円)。

居住用財産の軽減税率の特例

軽減税率の特例とは、居住用財産の課税譲渡所得に対して、通常よりも低い税率が適用される特例です。

課税譲渡所得金額のうち、

  • 6,000万円以下の部分 … 14.21%(所得税10.21%、住民税4%)
  • 6,000万円超の部分 … 20.315%(所得税15.315%、住民税5%)

課税譲渡所得が8,000万円の場合は、6,000万円までは税率14.215%、残りの2,000万円は税率20.315%になります。

軽減税率の特例は、3,000万円の特別控除と併用することができます。

つまり、課税長期譲渡所得金額から3,000万円を控除し、残った金額に軽減税率を適用できるということです。

適用の要件

軽減税率の特例を受けるには、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていることが要件となります。

3,000万円の特別控除との違いが問われるので、しっかり理解しておきましょう。

  • 3,000万円の特別控除は、所有期間の要件なし(買ってすぐ売ってもOK)
  • 軽減税率の特例は、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていなければならない

税額の計算

ここまでの学習の確認の意味を込めて、3,000万円の特別控除と軽減税率の特例をつかった税額計算問題にチャレンジしてみましょう。

練習問題(1)

譲渡した年の1月1日時点で所有期間が12年の居住用財産を12,000万円で譲渡しました。取得費は不明、譲渡費用は400万円です。居住用財産の3,000万円の特別控除と軽減税率の特例を活用する場合、所得税と住民税の合計額はいくらになるでしょうか?

さきほど学習したとおり、3,000万円の特別控除と軽減税率の特例は併用できます。

まずは、3,000万円特別控除後の課税譲渡所得を求めてみましょう。

課税譲渡所得金額は次のように求めます。

課税譲渡所得金額 = 譲渡価額ー(取得費+譲渡費用)ー特別控除3,000万円

しかし、問題文では取得費が不明となっていますね。

カピバラくん
カピバラくん
わかったぞ!概算取得費だな!
ヤギハシ先生
ヤギハシ先生
そのとおり!取得費が不明な時は、概算取得費を使います!

概算取得費は譲渡価額の5%なので、次のように計算します。

12,000万円×5%=600万円(概算取得費)

したがって、課税譲渡所得金額は次のようになります。

12,000万円ー(600万円+400万円)ー3,000万円=8,000万円(課税譲渡所得金額)

次に税額を求めていきます。

軽減税率の特例により、課税譲渡所得金額6,000万円までの税率は14.21%、それを超える部分の税率は20.315%になります。

6,000万円×14.21%=8,526,000円(A)

2,000万円×20.315%=4,063,000円(B)

(A)+(B)=12,589,000円

以上より、答えは12,589,000円となります。

しば犬くん
しば犬くん
概算取得費の計算は必ずできるようにしておこう!FP2級では「取得費不明」の問題がよく出題されるからね!

特定居住用財産の買換えの特例

特定居住用財産の買換えの特例とは

3,000万円の特別控除と軽減税率の特例は、居住用財産を譲渡した場合に利用できる特例でした。

これから学習する「居住用財産の買換えの特例」は、居住用財産を譲渡するのと合わせて、新たに居住用財産を取得する場合(つまり買換えた場合)に適用できる特例です。

この特例を利用すると、次のようなメリットがあります。

  • 「譲渡資産の譲渡価額 ≦ 買換資産の取得価額」の場合、譲渡がなかったものとされる
  • 「譲渡資産の譲渡価額 > 買換資産の取得価額」の場合、差額部分にのみ譲渡があったものとみなされる

通常であれば譲渡価額の全てが課税対象になります。

これに対して「居住用財産の買換えの特例」を活用すれば、譲渡価額と取得価額の差額だけが課税対象になるということです。

適用の要件

「居住用財産の買換えの特例」を利用するには、いくつかの要件があります。

譲渡資産と取得資産それぞれに要件があるので、順番に見ていきましょう。

譲渡資産の要件

まずは譲渡資産(譲渡する方)の要件を見ていきましょう。

  • 譲渡した年の1月1日時点で所有期間が10年超であること
  • 居住期間が通算10年以上であること
  • 譲渡資産の売却額が1億円以下であること

10年・1億円というのがキーワードです。

買換資産

次に買換資産(新たに購入する方)の要件です。

  • 建物の床面積は50㎡以上、土地の面積は500㎡以下であること
  • 中古住宅は建築後25年以内であること(または一定の耐震基準を備えていること)
  • 譲渡した年の前年の1月1日から翌年の12月31日までに取得すること
  • 譲渡日と取得日のうち、遅い方の日の翌年12月31日までに居住すること
カピバラくん
カピバラくん
ぐぬぬ…。これ覚えるのしんどいぞ

覚えられない人は、下のイメージだけでも頭の片隅に入れておきましょう。

  • 狭すぎる建物、広すぎる土地はダメ!
  • 古すぎて地震で倒壊する恐れがある建物はダメ!
    (古くても耐震基準を満たしていればOK!)
  • 買換資産をすぐに買わなかったり、買ってもすぐに住まないのはダメ!

他の特例との併用

「居住用財産の買換えの特例」は、3,000万円の特別控除や軽減税率とは併用できません。

この点はFP2級対策として、しっかり押さえておきましょう。

  • 3,000万円の特別控除と軽減税率の特例は併用できる
  • 居住用財産の買換えの特例は、3,000万円の特別控除や軽減税率の特例と併用できない

税額の計算

では実際に「居住用財産の買換えの特例」を使った場合の税額計算をしてみましょう。

このケースでは、「譲渡資産の譲渡価額5,000万円 ≦ 買換資産の譲渡価額6,000万円」であるため、譲渡がなかったものとみなされます。

つまり、所得税・住民税は発生しません(正確に言うと課税が全額繰り延べになります)。

簡単ですね。

難しいのは次のようなケースです。

このケースでは、「譲渡資産の譲渡価額8,000万円 > 買換資産の譲渡価額2,000万円」となり、差額の2,000万円の譲渡があったものとみなされます。

取得費と譲渡費用は全額差引きたい気持ちになりますが、ここはぐっと我慢しましょう。

差し引けるのは、以下の式で計算した金額になるからです。

$$(譲渡資産の取得費+譲渡費用)\times\frac{収入金額}{譲渡価額}$$

つまり、次のように計算します。

$$(3,500万円+500万円)\times\frac{2,000万円}{8,000万円}$$

$$=1,000万円$$

よって、譲渡益は2,000万円ー1,000万円=1,000万円

以上から、所得税と住民税の合計額は、

1,000万円 × 20.315%(長期譲渡所得の税率)=2,031,500円

ということになります。

しば犬くん
しば犬くん
取得費と譲渡費用の計算がちょっと難しいけど、しっかり理解しておこうね!

居住用財産の譲渡損失の損益通算と繰越控除

譲渡損失の損益通算・繰越控除とは

居住用財産の譲渡は利益が出るケースばかりではなく、損失が発生するケースもあります。

3,000万円で取得した土地が2,000万円でしか売れないことも当然考えられますよね。

一方で、不動産の譲渡所得は分離課税であるため、通常であれば損失を他の所得と損益通算することはできません。

しかし、一定の要件を満たす居住用財産の譲渡損失については、特例的に他の所得と損益通算することが認められています。

これが譲渡損失の損益通算の特例です。

たとえば、給与所得のある人が、居住用財産を譲渡して損失が発生した場合、その損失を給与所得から差引くことで所得全体を減らせるというわけです。

所得が減れば納める税金も少なくて済みますよね。

更にその年に通算しきれなかった損失は、翌年以後3年間にわたって繰越しができます。

これが譲渡損失の繰越控除の特例です。

損益通算の特例と繰越控除の特例を活用すると、最大で4年間、譲渡損失の通算ができるということです。

  • 居住用財産の譲渡損失は、他の所得と損益通算ができる
  • 通算しきれない分は、翌年以後3年間繰越ができる

適用の要件

損益通算・繰越控除の特例を利用するには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること
  • 合計所得金額が3,000万円以下であること
  • 譲渡資産の住宅ローン残高があること
    (買換資産を購入する場合は、買換資産の住宅ローン残高があること)
ヤギハシ先生
ヤギハシ先生
合計所得金額の要件があるのはこの特例だけです。「3,000万円」という金額をしっかり覚えておこう!

損益通算・繰越控除の特例は、正確には2つの種類があります。

❶居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除
(居住用財産を譲渡し、買換資産を購入する場合)

❷特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除
(居住用財産を譲渡し、買換資産を購入しない場合)

*❷のケースでは、「譲渡損失額ー住宅ローン残高」が、損益通算・繰越控除の上限金額となります。

 

他の特例との併用

譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例は、他の居住用財産の特例(*)と併用できません。
(*)3,000万円の特別控除、軽減税率の特例、居住用財産の買換えの特例

一方で、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)との併用はできます。

この点はFP2級対策として押さえておきましょう。

譲渡損失の損益通算・繰越控除の特例は、

  • 他の居住用財産の特例との併用はできない
  • 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)との併用はできる

ちなみに、他の居住用財産の特例は、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)との併用はできません。

「住宅ローン控除」とは、マイホームをローンで購入すると、ローン残高1%相当を所得税から控除できる制度のことです。

制度を利用できる期間は最大10年間。

控除できる金額は、年間最大40万円(認定長期優良住宅は50万円)です。

まとめ

最後に居住用財産の譲渡の特例の重要ポイントをまとめておきます。

居住用財産の譲渡の特例まとめ

全ての特例の共通要件
  • 過去3年に特例の利用がないこと(3年に1回しか利用できない)
  • 特別関係者(配偶者、直系血族など)への譲渡ではないこと
  • 居住の用に供さなくなった日の3年後の12月31日までの譲渡であること
所有期間の要件
所有期間の要件
3,000万円特別控除 なし(買ってすぐ売ってもOK)
軽減税率の特例 1月1日時点で10年超
特定の居住用財産の買換えの特例 1月1日時点で10年超
譲渡損失の損益通算・繰越控除 1月1日時点で5年超
他の特例や住宅ローン控除との併用
  • 3,000万円特別控除と軽減税率の特例は併用可
  • 譲渡損失の損益通算・繰越控除は住宅ローン控除との併用可
軽減税率の特例
  • 6,000万円以下は14.21%
  • 6,000万円超は20.315%
特定の居住用財産の交換の特例
  • 「譲渡資産の譲渡価額 ≦ 買換資産の取得価額」の場合、譲渡がなかったものとされる
  • 「譲渡資産の譲渡価額 > 買換資産の取得価額」の場合、差額部分にのみ譲渡があったものとみなされる
譲渡損失の損益通算と繰越控除
  • 初年度の損益通算、繰越控除は3年間と合わせて合計4年間損失が控除できる
  • 合計所得金額が3,000万円以下であること
ヤギハシ先生
ヤギハシ先生
居住用財産の譲渡損失の特例の学習は以上になります。次回は、居住用以外の不動産の譲渡の特例を解説していきます。