*このページは2020年12月10日に更新しました。
- 小規模宅地等の評価の特例の概要を理解する
- 特例を利用するための条件を理解する
小規模宅地等の評価の特例とは
「小規模宅地等の評価の特例」とは、相続人が居住用または事業用に供されていた宅地を相続した場合に、相続税評価額の評価を減額してもらえる制度です。
相続人が居住する宅地はもちろん、事業用の宅地も対象になります。
ただし、あくまで相続により取得した宅地が対象なので、贈与により取得した宅地は対象外となります。
また、更地(青空駐車場を含む)も対象外なのでおさえておきましょう。
- 贈与により取得した宅地は特例の対象外
- 更地(青空駐車場を含む)も特例の対象外
特例の範囲
限度面積と減額割合
「小規模宅地」の特例なので、特例を受けられる面積には限度があります。
また、宅地の種類(居住用か事業用か)に応じて減額割合が決まっています。
次の表で整理しておきましょう。
限度面積 | 減額割合 | |
特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
特定事業用宅地等 (特定同族会社事業用宅地等) |
400㎡ | 80% |
貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
たとえば、居住用の宅地であれば、330㎡までの部分について、80%の評価減を受けることができるということです。
同様に、事業用であれば400㎡まで80%、貸付事業用であれば200㎡まで50%の評価減を受けることができます。
イメージが湧くように、簡単な練習問題をやってみましょう。
自用地評価額5,000万円、面積500㎡の特定事業用宅地があります。小規模宅地等の評価の特例を受ける場合、相続税評価額はいくらになるでしょうか。
特定事業用宅地なので、400㎡までの部分が80%減額されます。
減額される金額は次のように計算します。
$$5,000万円\times\frac{400㎡}{500㎡}\times0.8=3,200万円$$
したがって、特例を受けた後の評価額は、5,000万円ー3,200万円=1,800万円になるというわけです。
宅地の種類が2つ以上にまたがる場合
特定居住用宅地と特定事業用宅地(または特定同族会社事業用宅地)の両方を所有している場合、それぞれに特例を適用することができます。
つまり、特定居住用宅地の330㎡と特定事業用宅地の400㎡を合わせて、合計730㎡までが特例の対象となるということです。
この点は、FP2級で頻出なのでしっかり覚えておきましょう。
ただし、貸付事業用宅地と併用する場合は、一定の計算式に基づき限度面積が調整されます。
たとえば、特定居住用宅地と貸付事業用宅地を所有している場合、特例の対象面積は530㎡(330㎡+200㎡)よりも少なくなるということです。
FP2級では問われる可能性が低いため計算式は割愛しますが、頭の片隅に入れておきましょう。
適用の条件
小規模宅地等の評価の特例を受けるためには、宅地の種類ごとに条件があります。
ポイントを順番に解説していきます。
特定居住用宅地の条件
特定居住用宅地に該当するための条件は、財産を取得した人が誰かによって異なります。
配偶者 | 要件なし |
---|---|
同居親族 | 申告期限まで引続き居住し、所有していること |
別居親族 | ・被相続人に配偶者も同居親族もいないこと ・過去3年以内にマイホームに居住したことがないこと ・申告期限まで引続き所有していること(居住はしていなくても良い) ・相続開始時に所有していた家屋を過去に所有していないこと |
配偶者については、特例の適用を受けるための条件がありません。
つまり、配偶者であれば相続した宅地に居住していなくても、もっと言えば売却してしまったとしても特例の適用を受けることができるということです。
一方で、同居親族が相続した場合は、申告期限までの居住と所有が条件になります。
別居親族が特例を受けるにはいくつか条件がありますが、「配偶者も同居親族もいないこと」と「過去3年以内にマイホームに居住したことがないこと」の条件が特に重要です。
小規模宅地等の評価の特例は、被相続人の住居を守るための制度ですから、既にマイホームを持っているような別居親族は対象外というわけですね。
特定事業用宅地・貸付事業用宅地の条件
特定事業用宅地、特定同族会社事業用宅地、貸付事業用宅地の要件は基本的に同じです。
次の要件を覚えておきましょう。
- 被相続人または被相続人と生計を一にしていた親族の事業の用に供されていた土地であること
- 土地を取得した親族が、被相続人の事業を引き継ぎ、申告期限まで所有して事業を継続すること
事業の引き継ぎと継続保有が条件です。
裏を返せば、事業を引き継がない親族が相続したり、事業を引き継いでも申告期限までに売却してしまった場合は特定の適用を受けることはできません。
まとめ
最後に小規模宅地等の評価の特例のまとめです。
- 特定居住用宅地は、330㎡まで80%減額
- 特定事業用宅地(特定同族会社事業用宅地)は、400㎡まで80%減額
- 貸付事業用宅地は、200㎡まで50%減額
- 特定居住用宅地と特定事業用宅地(特定同族会社事業用宅地)は併用ができ、最大730㎡まで80%減額できる
- 配偶者が相続した居住用宅地は、無条件で特例を受けられる
- 同居親族が居住用宅地を相続した場合は、所有と居住が条件
- 別居親族は、配偶者も同居親族もいないこと、3年以内にマイホームを所有していないことが条件
- 特定事業用宅地と貸付事業用宅地は、事業の引継ぎと継続所有が条件
- 贈与により取得した土地や更地(青空駐車場も含む)は特例の対象外