宅地建物取引法とは
宅地建物取引業者
土地や建物を買いたい時や売りたい時、または賃貸したい時、多くの人は不動産屋さんで相談すると思います。最近はネットで相談できるケースも多いですね。
この不動産業ですが、誰でも営めるわけではありません。
土地や建物の売買、賃貸借の媒介(仲介)などを行うには、専門的な知識が要求されるため、宅地建物取引業の免許を受ける必要があります。
宅地建物取引業の免許を受けた業者のことを「宅地建物取引業者」と言います。
基本的に不動産屋さんを営むには、宅地建物取引業者の免許が必要です。
そして、宅地建物取引業者の業務を規制したりする法律が「宅地建物取引業法(宅建業法)」というわけです。詳細は後ほど解説していきますね。
ここで宅地建物取引業者の定義を整理しておきましょう。
宅地建物取引業とは
- 自分または他人の土地や建物の売買や交換を行う
- 他人の土地や建物の賃貸の代理や媒介を行う
ことを不特定多数の者に対して、反復継続的に行うことを指します。
裏を返せば、自分の土地や建物を賃貸するだけであれば、宅建業の免許はいりません。
FP2級の試験では引っかけ問題で出題されることがあるので注意しましょう。
「所有するマンションの賃貸を自ら業として行う場合、宅地建物取引業の免許が必要である」という選択肢があったら、答えは「誤り」になるわけです。
宅地建物取引士
宅地建物取引業者は、事務所ごとに5人に1人以上の割合で専任の「宅地建物取引士」を置かなければならないという決まりがあります。
「宅地建物取引士」とは、国家資格(いわゆる宅建試験)に合格して都道府県知事の登録を受けた人のことです。要するに不動産の専門知識を持った人を指します。
不動産取引はとても高額である一方、一般の人にはあまり馴染みがありません。
取引をする一般の人が不当な契約を強いられないように、宅地建物取引業法では宅地建物取引業者に対して、重要事項をしっかり説明することを求めています。
そして、この重要事項の説明は、宅地建物取引士でしか行うことはできません。
重要事項の説明を含め、宅地建物取引士にしかできない業務が3つあります。
- 買主・借主に対する重要事項の説明
- 「重要事項説明書」への記名・押印
- 契約を締結した時に交付する書面(37条書面)への記名・押印
重要事項を説明する際は、宅地建物取引士証を提示しなければなりません。
また、重要事項の説明は売買契約の成立前に行わなければなりません。
この辺りのルールも、FP2級の試験で問われることがあるので、しっかりおさえておきましょう!
宅地建物取引業法の規制
民法には「契約自由の原則」というものがあります。これは、契約は当事者間の契約は、合意によって自由に決定できるというのが民法の大原則です。
基本的には不動産取引においても、この原則は当てはまります。
しかし、宅地建物取引業者と一般の人の取引は完全に自由というわけにはいきません。
高額で専門知識が要求される不動産取引において、プロである業者と素人の契約を自由にしてしまうと、素人が騙されて不利な契約を結んでしまうかもしれません。
宅地建物取引業法では、素人を守るために、宅地建物取引業者に対して様々な規制をかけています。
順番に見ていきましょう。
手付金の限度額
手付金とは、契約成立を確認するために、契約締結時に買主が売主に預けるお金のことです。
手付金には、解約手付、違約手付、証約手付などの種類がありますが、FP2級の試験では「解約手付」だけ覚えておけばOKです。
解約手付というのは、買主が契約を解除したい時は手付金を放棄、売主が契約を解除したい時は手付金の倍額を買主に支払うことで契約を解除できる性質を持った手付金のことです。
FP2級の試験ではとても頻出なので、もう1度整理しておきましょう。
- 買主は手付金を放棄することで契約を解除できる
- 売主は手付金の倍額を支払うことで契約を解除できる
ただし、手付金による契約解除は相手方が契約の履行に着手する前でなければなりません。
逆に言えば、相手方が契約の履行に着手した後は、売主が手付金を放棄しても、買主が手付金の倍額を支払っても契約を解除することはできないというわけです。
この点も試験では超頻出なので、しっかりおさえておきましょう。
さて、この手付金の金額は民法上、買主と売主の間で自由に決めることができます。
ただし、宅地建物取引業法では、売主が宅地建物取引業者で買主が宅地建物取引業者以外(素人)の場合、手付金は売買代金の2割が上限という決まりがあります。
たとえ契約で合意してもダメです。2割の上限を超えることはできません。
プロである業者が素人から不当に高い手付金を受け取ることを禁止しているわけですね。
また、先ほど手付金には種類があると説明しましたが、売主が宅地建物取引業者で買主が業者以外(素人)の場合、解約手付としての性格を失わないという決まりもあります。
契約書に何と書こうが、売主である業者が契約の履行に着手する前であれば、買主は手付金を放棄することで契約を解除することができるということです。
いずれの決まりも素人の買主を守るためのものです。裏を返せば、買主側も宅地建物取引業者の場合(要するにプロ同士の取引)の場合は、自由に契約を結ぶことができるわけです。
一般的に手付金の相場は、売買代金の5〜10%程度だと言われています。
損害賠償の予定額の制限
契約では相手方の債務不履行(簡単にいうと契約を守らないこと)に対して、損害賠償を定めることがあります。
この損害賠償の予定額についても、売主が宅地建物取引業者の場合は売買代金の2割が上限になります。
報酬の限度額
不動産取引が成立すると通常、買主は不動産の購入代金や賃借料に加えて、宅地建物取引業者(不動産屋さん)に報酬を支払います。いわゆる仲介手数料というやつです。
宅地建物取引業者も商売なので、報酬を受け取るのは当然ですよね。
しかし、宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者が受け取る報酬について一定の限度を定めています。
FP2級の試験では、具体的な上限金額の計算方法まで覚える必要はなです。
ただし、賃貸借の媒介をする場合の上限金額だけは、覚えておきましょう。
- 賃貸の媒介(仲介)をした場合に宅地建物取引業者が受け取れる報酬は、賃借料の「1か月+消費税」が上限
- 上記の上限金額は貸主と借主から受け取る報酬の合計金額(貸主と借主それぞれから「1か月+消費税」を受け取れるわけではない)
媒介契約
不動産売買の仲介を宅地建物取引業者にお願いするときは、宅地建物取引業者との間で媒介契約を結びます。
要するに、「私の土地・建物を買ってくれる人を探してくださいね!」とか「私の希望する土地・建物を見つけてきてくださいね!」という時に宅地建物取引業者と結ぶ契約が「媒介契約」になるわけです。
仲介と媒介という2つの言葉が出てきましたが、意味はほとんど同じです。
ただし、契約に当たっては「媒介」の方を使います。
この「媒介契約」ですが、次の3種類があります。
- 一般媒介契約
- 専任媒介契約
- 専属専任媒介契約
それぞれの違いがFP2級の試験では問われます。
一般媒介契約
1つ目の「一般媒介契約」は、最も縛りが少ない契約形態です。
まず、依頼者は複数の宅地建物取引業者に依頼が可能です。A社だけでなく、B社やC社にも同時に媒介を依頼することができるわけですね。
また、宅地建物取引業者に依頼をしつつ、自分で取引の相手を見つけてくることも可能です。
- 一般媒介契約では、複数の業者に依頼が可能
- 自己発見取引もOK
専任媒介契約
「専任媒介契約」では、専任という言葉の通り、依頼者は契約を結んだ宅地建物取引業者以外とは媒介契約を結ぶことはできません。
ただし、自己発見取引ならOKです。
ところで、専任でお願いするわけですから、依頼した宅地建物取引業者にはダラダラせずに、しっかり仕事をしてもらわなければなりません。
ということで、専任媒介契約には次のような決まりがあります。
- 契約は3か月以内
- 宅地建物取引業者は、2週間に1回以上の頻度で依頼者に進捗状況を報告しなければならない
- 宅地建物取引業者は、契約から7日以内に指定流通機構に物件情報を登録しなければならない
ちなみに、3か月を超える契約をした場合、契約自体は無効にはなりませんが、契約期間は3か月とみなされます。
細かい点ですが、この点もFP2級の試験で問われることがあるので、おさえておきましょう。
指定流通機構とは、国土交通省から指定を受けた公益財団法人です。全国で東日本、中部圏、近畿圏、西日本の4つの地域に設立されています。
指定流通機構では「レインズ」という、宅地建物取引業者同士で不動産情報を交換するサービスを運営しています。
宅地建物取引業者はお互いに「レインズ」の情報を使うことで、スムーズな情報収集と取引成立に結びつけることができるわけです。
専属専任媒介契約
最後に「専属専任媒介契約」です。
専属専任媒介契約では、依頼者は契約を結んだ宅地建物取引業者以外とは媒介契約を結ぶことはできません。
ここまでは専任媒介契約と同じですが、異なるのは自己発見取引もNGということです。
依頼した業者経由の契約でなければ、たとえ自力で契約の相手方を見つけてきても契約はできないということになります。
ここまで依頼者を縛っているわけですから、宅地建物取引業者も責任は重大です。
このため、依頼者への報告頻度や指定流通機構への登録期限は、専任媒介契約よりも厳しくなっています。
- 契約は3か月以内
- 宅地建物取引業者は、1週間に1回以上の頻度で依頼者に進捗状況を報告しなければならない
- 宅地建物取引業者は、契約から5日以内に指定流通機構に物件情報を登録しなければならない
契約が3か月以内というのは同じですが、依頼者への報告頻度と指定流通機構への登録期限が短くなっていることが分かると思います。
3つの媒介契約の違い
最後に3つの媒介契約の違いを整理しておきましょう。
一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | |
複数業者への依頼 | 可 | 不可 | 不可 |
自己発見取引 | 可 | 可 | 不可 |
契約期間 | 自由 | 3か月以内 | 3か月以内 |
依頼者への報告 | 不要 | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 |
指定流通機構への登録 | 不要 | 7日以内 | 5日以内 |