*このページは2020年3月20日に更新しました
- 不動産の有効活用の6つの方式を理解する
- 特に「等価交換方式」の仕組みをしっかり理解する
なぜ土地の有効活用が必要なのか
土地の有効活用法を学習する前に、そもそもなぜ有効活用が必要なのか考えてみましょう。
土地は所有しているだけでは何の収益も生んでくれません。
むしろ固定資産税などの税金がかかるため、所有しているだけでは損をしてしまいます。
このため、多くの土地を所有する地主と呼ばれる人たちは、様々な手段で土地を有効活用しています。
例えば、定期借地契約を結んで土地の賃貸収入を得たり、マンションやオフィスビルを建築することで家賃収入を得たりしているわけです。
また、土地を有効活用する目的は、利益を得るためとは限りません。
例えば、土地に建物を建築すれば、建物の減価償却費を計上することができます。
減価償却費を計上すれば、利益を圧縮して所得税を節税できます。
また、土地は建物が建っている建付地よりも、更地の方が評価額が高くなります。
このため、建物を建築して土地の相続税評価額を下げることができれば、相続税の節税につながるかもしれません。
これらを踏まえて、具体的な土地の有効活用の手法を学習していきましょう。
6つの有効活用手法
土地の有効活用手法として押さえておきたいのは、次の6つの手法です。
自己建設方式 | 自ら企画して賃貸用建物を建築する |
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事業受託方式 | ディベロッパーに委託して賃貸用建物を建築する |
定期借地権方式 | 定期借地権を結んで土地を賃貸する |
土地信託方式 | 信託銀行に土地を信託し、運用実績に応じた配当を受け取る |
等価交換方式 | 土地の一部をディベロッパーに譲渡する代わりに、ディベロッパーが建築した建物の一部を取得する |
建設協力金方式 | 入居予定のテナントから建設協力金を募って建物を建築する |
1つ1つ分かりやすく解説するから諦めないで!
自己建設方式
まずは「自己建設方式」から解説していきます。
自己建設方式とは、土地所有者自らが事業を企画し、建物の建築、資金調達、建築後の管理・運営までを担う手法です。
利益は全て土地所有者のものになりますが、業務負担が大きく、ノウハウも必要です。
資金調達(銀行借入)も自ら行う必要があり、比較的リスクの高い手法といえます。
なお、建築した建物は減価償却が計上できるため、所得税の節税効果が期待できます。
事業受託方式
「事業受託方式」とは、事業の企画、建物の建築、建築後の管理・運営などをディベロッパー(不動産開発業者)に委託する方法です。
利益の一部はディベロッパーに持っていかれますが、ディベロッパーのノウハウが活用できることや、業務負担が軽減されることがメリットです。
ただし、資金調達は土地所有者が行う必要があるため、資金リスクを負うことは自己建設方式と変わりません。
せっかく賃貸マンションや賃貸ビルを建築しても、実際に入居者が集まらないリスク(空室リスク)があります。
空室リスクを回避するために有効なのが「サブリース方式」です。サブリース方式とは、建物を不動産管理会社に一括して借り上げてもらうことで、空室リスクを不動産管理会社に負ってもらう方式です。
直接賃借人を募集した場合よりも収益は少なくなりますが、賃料収入の安定確保を目指すことができます。
定期借地権方式
「定期借地権方式」とは、定期借地契約を締結し、土地を一定期間賃貸する方式です。
定期借地権は、更新がない期間限定の借地権のことでしたね。
忘れてしまった人は、「借地借家法(1)〜普通借地権と定期借地権〜」で復習しておきましょう。
更新がないため、将来は必ず手元に土地が戻ってきます。
また、土地を貸すだけなので資金調達は不要です。
このため、自己建設方式や事業受託方式よりも、比較的リスクが少ない方式といえます。
ただし、建物を建築するわけではないため、減価償却費による節税効果は見込めません。
土地信託方式
「土地信託方式」とは、土地所有者が土地を信託銀行に信託し、運用実績に応じて信託会社から配当を受け取る方式です。
信託銀行は土地所有者に代わって、事業計画を策定し、建物の建築や運営・管理まで一括して行います。
土地の所有権は一旦は信託銀行に移りますが、信託期間が終了すると戻ってきます。
土地運用のノウハウも資金調達も不要なので、利益は少ないですが、リスクも小さい方式といえるでしょう。
ただし、近年はあまり利用されていないようです。
等価交換方式
FP2級試験の対策として最も押さえておきたいのが、「等価交換方式」です。
等価交換方式とは、土地所有者が土地の一部をディベロッパーに譲渡する代わりに、ディベロッパーが建築した建物の一部を取得する方式です。
評価額6億円の土地に、ディベロッパーが4億円の賃貸マンションを建築するとします。
この時、事業総額10億円に対する負担割合は、土地所有者6:ディベロッパー4になりますね。
等価交換方式では、この負担割合に応じて、土地と建物を交換します。
つまり、土地所有者は土地の40%(6億円×40%=2.4億円)を譲渡する代わりに、建物の60%(4億円×60%=2.4億円)を取得することになります。
要するに、土地と建物を等価で交換するから「等価交換方式」というわけです。
ちなみに、所有権を有する土地だけでなく、借地権や底地であっても等価交換の対象となります。
等価交換方式には次の2つのパターンがあります。
部分譲渡方式 | 土地所有者が土地の一部をディベロッパーに譲渡し、完成した建物の一部を取得する方式 |
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全部譲渡方式 | 土地所有者が土地の全部を一旦ディベロッパーに譲渡し、完成した建物の一部と土地の一部を取得する方式 |
等価交換方式の最大のメリットは、建築資金の負担がないことです。
一方で、土地の一部を失うこと、自己建設方式や事業受託方式に比べると減価償却費があまり計上できないことがデメリットといえるでしょう。
建設協力金方式
最後に「建設協力金方式」です。
建設協力金方式とは、入居予定のテナントから建設協力金という名目で資金を募り、建物を建築する方式です。
飲食店やスーパー、ショッピング施設など、商業目的の建物を建築する場合に使われる手法です。
商業目的なので、ロードサイドの土地を活用したいときに有効な手法といえるでしょう。
建築協力金は一種の借入金なので、建物建築後はテナントに返済しなければなりません。
一般的には、テナントからもらう賃料と相殺するケースが多いようです。
建設協力金方式は、金融機関からの資金調達が不要であること、土地も建物も所有権を失わないことなどがメリットです。
テナントにとっては、自分の希望する建物を建築してもらえることがメリットとなります。