【FP2級】公的医療保険(1)〜健康保険と国民健康保険

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- 健康保険と国民健康保険の違いを理解する
- パート・アルバイトの加入条件を理解する
公的医療保険の全体像
3つの公的医療保険
社会保険とは、医療保険、介護保険、年金保険のほか、広義では労働者災害補償保険や雇用保険といった労働保険も含めた公的保険制度の総称です。
このうち今回学習するのは、医療保険についてです。
日本では「国民皆保険制度」といって、誰もが公的医療保険に加入しなければなりません。
公的医療保険に加入することで、医療費が3割の負担で済んだり、病気で働けなくなった時に給付金を受け取れたり、更には自分や家族が出産する時に出産手当金や出産育児一時金がもらえたりします。
公的医療保険には健康保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度の3つの種類があり、どの保険に加入しなければならないかは働き方や年齢によって変わってきます。
- 健康保険:会社員やその被扶養家族などが対象
- 国民健康保険:自営業者やフリーター、その家族などが対象
- 後期高齢者医療制度:75歳以上の人が対象
健康保険と国民健康保険
健康保険には、「全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)」と「組合管掌健康保険(組合けんぽ)」の2つがあります。
それぞれの特徴を整理しておきましょう。
保険者 | 保険料 | 保険料負担 | |
協会けんぽ | 全国健康保険協会 | 都道府県毎に異なる | 労使折半 |
組合けんぽ | 企業の健康保険組合 | 組合毎に異なる | 原則、労使折半 |
「協会けんぽ」は中小企業の従業員、「組合けんぽ」は大企業の従業員が主な対象者というイメージです。
保険料は労使折半であることが共通点です。
次に国民健康保険ですが、こちらは市町村が保険者の場合と、国民健康保険組合が保険者の場合の2パターンがあります。
このうち、国民健康保険組合が保険者の場合は、特定の事業・業務に従事している人のみを対象とします。
例えば建設業に従事している人を対象とした国民健康保険組合など、業種単位で組合があるイメージです。
健康保険
健康保険の対象
ここからは、健康保険についての解説です。
健康保険では、法人の場合は全ての事業所、個人事業主の場合は常時使用する従業員が5人以上の場合、原則として健康保険の適用事業所になります。
そして健康保険の適用事業所で働く役員や従業員、その被扶養者(3親等以内の親族等)が健康保険の被保険者になります。
ややこしいのはパートやアルバイトの取扱いです。
パートやアルバイトであっても、1週間の所定労働時間と1か月の所定労働日数が一般従業員の4分の3以上であれば、健康保険の被保険者になります。
上記の条件を満たさなくても、次の要件を全て満たす場合には被保険者になります。
- 従業員501人以上の企業に勤務
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 月額賃金が88,000円以上
- 雇用期間が1年以上の見込み
- 学生ではないこと
ここまでが健康保険の被保険者になる条件ですが、健康保険は適用事業所の従業員だけでなく、その被扶養者も対象になるんでしたね。
次は被扶養者の条件を確認していきましょう。
健康保険の被扶養者に認定されるためには、次の要件を全て満たす必要があります。
- 年収130万円未満(60歳以上や障害者は180万円未満)
- 被保険者の年収の2分の1未満(被保険者と別居している場合は、被保険者からの仕送りの金額未満であること)
健康保険の6つの給付
健康保険の給付として、次の6つを覚えておきましょう。
- 療養の給付:業務外で病気やケガをした時の医療費の給付
- 高額療養費:医療費が自己負担限度額を超えた時の給付
- 傷病手当金:業務外の病気やケガで働けなくなった時の給付
- 出産手当金:出産前後に給与が受けられない時の給付
- 出産育児一時金、家族出産一時金:本人や家族が出産した時の給付
- 埋葬料、家族埋葬料:業務外で本人や家族が死亡した時の給付
療養の給付
健康保険の被保険者が、業務外の病気やケガをしたときに、病院などで被保険者証を提示すると治療費の支払いは原則3割で済みます。残りの7割は健康保険の保険者が負担することとなり、この給付のことを「療養の給付」といいます。
対象となる治療費は、保険医療機関で受けた診察、手術、投薬、入院などにかかる費用です。
これらの治療費に対する被保険者や被扶養者の自己負担割合は原則3割です。
例外として、小学校入学前の子供と70〜74歳の人は2割の負担でOKです。
ただし、70〜74歳でも現役並み所得者は3割負担になります。
やむを得ず保険医療機関以外の病院で診療などを受けた場合は、療養の給付に代えて「療養費」が支給されます。
高額療養費
療養の給付により3割程度の自己負担とはいえ、重い病気などで医療費がかさむと家計は大変ですよね。こうした医療費の家計への過度な負担を抑えるための給付として、「高額療養費」の制度があります。
高額療養費制度とは、1か月の医療費の自己負担額が基準金額を超えた時に超過分が支給される制度です。基準金額は所得により異なり、所得が多い人ほど基準金額は高くなります。
先進医療の技術代や差額ベッド代、食費などは高額療養費の計算に含むことができません。ちなみに差額ベッド代とは、入院時に大部屋ではなく、希望して個室を利用した場合の追加料金のことです。
傷病手当金
誰しも病気やケガによって働けなくなってしまうリスクがあります。でも、長期入院などで給与がもらえなくなってしまっては大変ですよね。
そんな時に助かるのが「傷病手当金」です。
業務外の病気やケガによって働けなくなってしまい、且つ勤務先から給与が支払われない場合、1日当たり標準報酬日額の3分の2の金額が傷病手当金として支給されます。
休みの4日目から最長1年6か月間、給付を受けることができます。
業務外の病気やケガが対象であり、業務上や通勤中のケガや病気は労働者災害補償保険の対象であることは、療養の給付と同じです。
標準報酬日額とは、過去12か月の標準報酬月額の平均を30日で割った金額です。標準報酬月額とは、賞与を除いた月の平均給与のイメージです。
出産手当金
健康保険の被保険者が出産前後に会社を休み、会社から給与が支払われない場合、「出産手当金」の給付を受けることができます。
支給を受けられる期間は、出産日以前の42日間、出産日以後56日間の合計98日間です。
双子の場合や出産予定日が遅れた場合はこれよりも長い日数の給付が受けられます。
給付される金額は、1日当たり標準報酬日額の3分の2です。
この点は傷病手当金と同じですね。
出産育児一時金・家族出産育児一時金
被保険者本人または配偶者が出産したとき、1児につき42万円が支給されます。
被保険者本人が出産したときに支給されるのが出産育児一時金、被保険者の配偶者が出産したときに支給されるのが家族出産育児一時金です。
妊娠4か月以上の出産で支給され、流産や死産であっても支給されます。
基本的には病院に直接支払われます。不足分は自己負担になり、逆に費用が42万円未満であったときは差額を受け取ることができます。
42万円が支給されるのは、産科医療補償制度に加入している医療機関で出産した場合です。未加入の医療機関で出産した場合の支給額は40万4,000円になります。ちなみに産科医療補償制度とは、分娩に関連して発症した重度脳性麻痺の子どもとその家族の経済的負担を補償するための制度で、現在ほとんどの分娩機関が加入しています。
埋葬料・家族埋葬料
被保険者が業務外の理由で亡くなったとき、葬儀を行う遺族等に「埋葬料」として5万円が支給されます。
また、被保険者の被扶養者が亡くなったときは、被保険者に「家族埋葬料」として5万円が支給されます。
国民健康保険
国民健康保険の給付
国民健康保険の給付内容は、健康保険とほとんど同じです。
健康保険とは異なる点として、次のポイントを押さえておきましょう。
- 国民健康保険では、傷病手当金や出産手当金は任意給付
(つまり、加入する国民健康保険によっては給付がないケースがある) - 国民健康保険では、業務上のケガや病気でも原則として保険金が給付される