瑕疵担保責任
瑕疵担保責任とは
瑕疵とは欠点のことです。
もう少し詳しくいうと、通常期待される品質や性能が欠けていることです。
不動産取引における瑕疵には、例えば雨漏りや床下のシロアリ、前に住んでいた人が自殺した物件だった…などがあります。
こうした不動産取引における瑕疵に対して、売主が買主に追う責任のことを「瑕疵担保責任」と言います。
買主は購入した物件に瑕疵があった場合、売主に対して損害賠償請求をしたり、契約の解除をしたり、物件の修復を要求したりすることができます。
瑕疵担保責任は無過失責任
瑕疵担保責任の厳しいところは、売主は過失を知らなかったとしても責任を負うことです(このことを「無過失責任」と言います)。
売主が「自分も知らなかったんだよ!」と主張してもダメだということです。
ただし、買主が瑕疵があることをあらかじめ知っていた場合は責任を負いません。
雨漏りがする物件であることを買主が承知のうえで購入した場合まで損害賠償請求をされたら、さすがに買主もやってられませんから当たり前といえば当たり前ですね。
瑕疵担保責任を負う期間
では、買主はいつまでであれば損害賠償請求ができるのでしょうか。
民法、宅地建物取引業法、住宅品質確保促進法のそれぞれに規定がありますので、順番に見ていきましょう。
民法
民法では原則として、買主は瑕疵を知った日から1年以内であれば契約の解除が可能です。
また、解除が難しい場合は損害賠償請求ができることになっています。
加えて、民法では瑕疵担保責任の期間を短くしたり、瑕疵担保責任を免除する特約を結ぶこともOKとなっています。
原則はあるけれど、自由に特約できるというのが民法です。
宅地建物取引業法
次に宅地建物取引業法の規定です。
売主が宅地建物取引業者で買主が宅地建物取引業者以外の場合、売主が有利な立場にあることを考慮し、自由に特約を結ぶことができなくなっています。
ひとつだけ許されているのが、瑕疵担保責任に関する買主の権利行使期間を「物件の引渡日より2年以上の期間」で定める特約です。
それ以外に、買主に有利になるような特約を結ぶことはできません。
このあたりがFP2級の試験では頻出なので、しっかり覚えておきましょう。
住宅品質確保促進法
住宅品質確保促進法とは、新築住宅の構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分に発生した瑕疵について、売主や施工業者に10年間の瑕疵担保責任を義務付ける法律です。
特約により期間を短くしたり、瑕疵担保責任を免除することは認められていません。
危険負担
危険負担とは、売買契約後の引渡しを受けるまでの間に、売主にも買主にも非がなく、目的物が滅失したり毀損してしまった場合の負担のことです。
例えば、家屋の売買契約後に天災や隣の家の失火などで家屋が滅失してしまった場合に、買主は代金を支払わなければならないか?というのが危険負担です。
このような場合、民法上では買主は代金を支払わなければなりません。
つまり、売買契約後であれば、たとえ引渡し前であっても買主が危険負担をしなければならないわけです。
不動産広告
徒歩1分は80m
普段何気なく見かける不動産広告ですが、実は色々なルールがあります。
例えば「駅徒歩●●分」といった記載を見かけると思いますが、道路距離80mを徒歩1分に換算して表示する(1分未満の端数は切り上げ)という決まりがあります。
つまり「駅徒歩5分」とあれば、駅から320m〜400mの道路距離にあるわけです。
壁芯面積と内法面積
床面積の測り方として、壁芯面積(へきしんめんせき)と内法面積(うちのりめんせき)という考え方があります。
壁芯面積(広い) | 壁や柱の厚みの中心線で測られた建物の面積のこと |
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内法面積(狭い) | 壁の内側の寸法で測られた面積のこと |
このうち、不動産広告(パンフレット)で使用するのは「壁芯面積」の方です。
一方で、マンションなどの区分所有建物は登記上は「内法面積」で表示されるため、パンフレットの面積よりも、実際の登記面積は少し狭くなるので注意が必要です。
クーリングオフ
最後にクーリングオフの制度を説明します。
クーリング・オフとは、いったん契約の申し込みや契約の締結をした場合でも、契約を再考できるように、一定の期間であれば無条件で契約の申し込みを撤回したり、契約を解除したりできる制度のことです。
執拗な勧誘などを受けて、断りきれずに契約をしてしまった消費者を守るための制度です。
不動産取引では、宅地建物取引業者が自ら売主で一般の個人が買主の場合、買主はクーリング・オフに関する書面を受け取ってから8日以内であれば契約を解除することができます。
解除は必ず書面で行う必要があります。
ちなみに、あくまで宅地建物業者が自ら売主である場合に限られるので、個人間売買のケースではクーリング・オフの制度は利用できません。
同じく、宅地建物取引業者同士の取引でも利用できません。クーリング・オフは弱者である消費者を守るための制度なので、プロ同士であれば自己責任ということですね。
また、宅地建物取引業者が売主で一般の個人が買主の場合でも、次のようなケースではクーリング・オフ は利用できないので注意が必要です。
- 買主が宅地建物取引業者の事務所内で契約した場合
- すでに物件の引渡しが終了して、代金を支払った場合
❶は自ら業者の事務所まで出向いたなら購入する意思があったんですよね?ということです。裏を返せば、訪問勧誘などで契約してしまった場合はクーリング・オフすることはできます。
❷は説明不要だと思いますが、ここまできて今更解除はないよね?ということです。
不動産取引における留意事項まとめ
最後にFP2級の頻出ポイントをチェックしておきましょう。
- 瑕疵担保責任は無過失責任
- 瑕疵担保責任は、買主が瑕疵を知った時から1年以内(民法)
- 宅地建物取引業者は、引渡しから2年以内の期間に限って瑕疵担保責任を負うことを特約で定めることができる(宅地建物取引業法)
- 新築住宅の構造上主要な部分への欠陥の場合、瑕疵担保責任の期間は10年間(住宅品質確保促進法)
- 天災などの危険負担は民法上、原則として買主が負担する
- 不動産広告の徒歩1分は80m
- 区分所有建物は、登記上は内法面積、不動産広告では壁芯面積
- クーリング・オフは8日以内に書面で行わなければならない